上京して10年が経った
気がつけば上京して10年。
18歳だった頃の私は、
地元の大学に入ってそれなりに楽しく暮らしていた。
友達もそこそこいる。
バイトもサークルもちゃんとやっている。
大学生活はまぁ順調だ。
このままでも私は楽しく暮らせるだろう、そう思っていた。
そんなある日、私はふと気がついた。
このままだと普通の人生を歩んでしまう、と。
普通に大学を卒業して、
普通に無難な会社に入って、
普通に無難な人と付き合って結婚して、
そんな未来が見えたのだ。
そんな人生も幸せなのだろうと思った。
けど、それって自分にとっての幸せなのか?
そう考えた時に、「あ、違うな」と思った。
私が求めていたものは世の中に定義されているような普遍的な「幸せ」ではなくて、もっと自分がやりたいことを突き詰める人生だった。
このままなんとなくで普通に生きて良いのかな。
もっと自分がやりたいことや成し遂げたいこと、沢山あるよな。
そう思って、私は自分で密かに努力をするようになった。
誰にも言わずにサークルやバイトの時間の隙間をみて勉強した。
そこから一年後、
今から10年前の19歳の時に私は上京した。
関東にある別の大学に合格し、入学することになったのだ。
それまで通っていた大学も、バイトも辞めた。
大学の友人だけではなく、地元の友達とも離れることになった。
上京する前に地元の子から、「東京なんて怖いところだよ」と言われた。
また当時、バイト先に自分に明らかに好意を持ってくれている人がいた。
楽しい人で何度かご飯にも行っていたし、多分上京しなければ付き合えたんだろうなと思った。
けど全てを自分で決めて、未来の何も知らない地に賭けることにした。
そうして、私は長く過ごした地元を去った。
上京する日、私は飛行機の窓側の座席に1人座って外を見た。
飛行機が滑走路を走り出した。
その時、
全てが変わってしまう
そう思った。
そう思った途端に、身震いした。
変えたいと思ったのは自分だ。
変わりたいと行動したのも自分だ。
後悔することもあるだろう。
けど、変えなかった後悔の方がずっと辛いはずだ。
だから前に進むんだ。
飛行機は、空に向かって羽ばたいた。
上京してからは、全てがゼロからの始まりだった。
周りに知り合いもいないし、
大学では初めてぼっちで授業を受けるようになったし、
バイトもまた一から探さないといけなかった。
お金もなかった。
慣れないことも多かったし、辛いことも沢山あった。
けど、楽しかった。
自分が生まれ変わった気がしたから。
そうやって気がつけば10年が経った。
周りには知り合いも友達も増えたし、働いている会社も東京にある。
地元は変わらず好きだけど、きっとこれから先もしばらくは東京に住み続けるような気がしている。
もしかしたら東京に骨を埋めるかもしれない。
そうやって穏やかに時を過ごしている。
10年前の私には今の自分は想像もつかなかっただろう。
けど、
それでも、
あの上京する日の身震いだけは絶対に忘れられない。
あの時の私が、
あの時の意思が、
今の私を作っているのだ。