大人でも何度も読みたくなる、面白い絵本10選
小さい頃にどれだけ本を読んだかによって、子供の語彙力や語学習得の早さが決まる、と聞いたことがある方もいると思います。わたしの息子、ピコロくんは2歳になるまでテレビは一切見ず、本ばかりでした。そのおかげか、まだ3歳になる前ですが、驚くほどの語彙力、発音力があります。ただ、そうは分かっていても、毎日毎日3時間も4時間も読まされると、流石に愛する子どものためでもしんどい! それなら、できるだけ大人が読んでも面白い本を、という視点で今回はオススメの本を集めてみました。
1:『ミッフィーとほくさいさん』
うちの夫の趣味のおかげで、2歳児にして葛飾北斎の絵を見ると「北斎さん!」と言い出す息子。そんなに好きなら、ということで、買ったこの本。大人が読んでも「ほほー!」となること間違いなし。葛飾北斎は、絵を心から楽しんだ人であり、また、その喜びを人に教えるということでも長けていたんだと知ることができます。まさかあの時代、日本で、こんなグリッドシステムを考えながら絵を描いてたの?!と驚きました。
これから先はヨシタケシンスケさん本を3冊紹介します。彼の本は全部面白いのですが、哲学的で幼児には難しい本もあるので、2−3歳くらいでも入り込みやすいものを選びました。
2:『つまんないつまんない』
ヨシタケさん1冊目、『つまんないつまんない』は、ある日小学生くらいの子どもが「つまんないってどういうこと?」という素朴な疑問から、いろんな「つまんないこと」を考え出しすことにハマっていく話です。それが面白くて、ひとつひとつ笑えます。例えば、「世界一つまんない遊園地ってどんな遊園地?」→観覧車が低い、ジュースがぬるい、お化け屋敷がふざけている、ジェットコースターが遅い、キャラクターが疲れている...考えただけで笑えます。いろんな場面で彼が描く「つまんない人」の顔が本当につまんなそうなのも見どころです。見開きいっぱいのたくさんの「つまんなそうな人」の顔たちが圧巻です。おじいちゃんに「今までで一番つまんなかったことってなあに?」と聞く男の子。おじいちゃんが「面白そうに」つまんないことを話すので、「つまんないことって時間がたつと面白くなるのかな?」という凄い視点を入れてきたりもします。最後はお父さんが、つまんないことをいかに楽しいことに変換できるかについて男の子に解説するのです。好奇心を持ってなんでも面白いと思える力、そして、何より、「なぜ、どうして」を通して、物事の本質を見抜く力、ぜひ我が子にも培ってほしいとわたしは願います。
3:『おしっこちょっぴりもれたろう』
ここに出てくる男の子は、いつもおしっこをする前がした後に、パンツにシミがついてお母さんに叱られます。そんな彼は、自分のことを「おしっこちょっぴりもれたろう」と呼びます。もれたろうくんは、「こんなに悩んでるのは僕だけじゃないはずだ!」と思い立ち、街に出て、おしっこがもれているに違いないと思われる人に片っ端から声をかけていきます。するとどうでしょう、世の中には困っていそうな顔の人がたくさんいるではないですか。彼が「もしかしてキミ、もれたろう?」と聞くと、「違うの、上着を着たら下着の袖がクチャクチャになっちゃったの」と言う女の子や、歯の奥にほうれん草が挟まって取れない子、靴下がすぐ落ちちゃう子、などなど。彼が出会った子どもたちは、おしっこはもれてないんですが、「外から見たらわかんないけど、みんなそれぞれその人にしかわかんない困ったことがあるんだな...」と彼はそこで気付くわけです。おしっこを通して、なんて素晴らしい気づき。そして最後は、おじいちゃんの登場。なぜか最後はおじいちゃんと手を取り合ってスキップして去っていく絵で終わるんですが、その理由も爆笑です。どうぞ、読んでみてください!
4:『なつみはなんにでもなれる』
ヨシタケさんの本は、どの本もイラストが素敵! ところが、これはインタビュー記事で読んだのですが、彼はストーリーや絵は自分で描くけれども、色はなんと他の人が付けているとのこと。そういうやり方もあるんだなと驚きました。また、同じ記事に書いてあったのですが、彼は「不必要な笑顔を描かない」ことをポリシーにしているようです。この本、『なつみはなんにでもなれる』に出てくるお母さん、ぜんっぜん笑いません!
物語は、主人公なつみが寝る前に「なつみがなにかのマネをして、それをおかあさんがあてるゲーム」を思いつき、いろんなポーズをして母親に自分がなんのポーズをしているか当てさせるところから始まります。お尻を突き出してみたり、何かを被ってみたり。いくつもいろんなヘンテコなポーズを見せられて、答えは「宇宙人!」と言われたときには、お母さんもうお手上げです。全然当てられずに、「もっとお母さんのわかるやつにして!」というと、今度はお母さんの真似をし出す始末。子どもの想像力のたくましさと、お母さんのクールな反応がとてもおかしくて、いつも息子と笑いながら読んでいます。
インタビュー記事を読むとわかるのですが、ヨシタケさんはとても思慮深く、良い意味でひねくれた人、むしろひねくれて360度回って、まっすぐな人なんだと思います。ここで「綺麗事を書かない」と本人もおっしゃっていますが、それがこんなに素敵な本の原動力になっているんではないでしょうか。
こちら、長いけれど、すぐに読めちゃう、オススメのインタビューです。
インタビュー1 “考える人”ヨシタケシンスケの「大人が読んでも面白い」絵本の世界
インタビュー2 絵本作家・ヨシタケシンスケ 30代で売れなかった僕が40歳で絵本を出版するまで
次は『ノラネコぐんだん』シリーズを二つ紹介します。
『ノラネコぐんだん きしゃぽっぽ』と『ノラネコぐんだん そらをとぶ』の作者、工藤ノリコさんはこのノラネコシリーズでだいぶ有名になりましたが、随分前から漫画のような切り口で、面白い絵本を作っていらっしゃる方です。キャラクターがたらこ唇なのが特徴的で、したたかでニヒル、憎めないその絵柄やキャラクターの行動は、ヨシタケさんの絵本にも通じるものがあります。
5:『ノラネコぐんだん きしゃぽっぽ』
ノラネコぐんだんは、まさに「軍団」と名の付くに相応わしい、悪〜い7匹の猫たち。汽車を盗んで勝手に運転して、貨車に積んであったトウモロコシを焼いて、「ポポポポポポポポ、ドッカーン!」とポップコーンになって大爆発してしまうところはいつも息子が笑います。もちろん捕まって怒られるんですが、そこでもササッとお詫びをして、全員で振り返りつつ右手を上げてかっこよく去ろうとしてしまうところにまたクスッとさせられます。でも世の中そんなに甘くはありません。最後のページがポイントなのでぜひ読んでみてください。
6:『ノラネコぐんだん そらをとぶ』
同じシリーズで『ノラネコぐんだん そらをとぶ』というのもあります。こちらはほぼ同じような構成なんですが、また違う切り口です。
今度は飛行機を乗っ取ってしまうぐんだん。なんと燃料が足りなくなって、無人島に不時着してしまいます。ただ、そこは生き抜く力が人一倍(猫一倍?)あるぐんだんですから、問題なく切り抜けるどころか、むしろ満喫してしまい、「楽しいねー、無人島の暮らし」とほざくまでに至ります。息子はこのセリフを覚えてしまって、ふとしたときに「楽しいねー、無人島の暮らし」とつぶやくようになってしまいました。ここでも最後のページがポイントなので、細かいところまで見てみてくださいね。(ヒント:テーブルの上にあるものに優しさが感じられます。)
次はtupera tuperaの絵本を二つ。
『パンダ銭湯』と『ぼうしとったら』の作者tupera tuperaは、男女二人組の絵本作家。ただ、ヨシタケさんや工藤さんと同じく、絵本絵本していないところが、大人にもとても入り込みやすいのです。
7:『パンダ銭湯』
『パンダ銭湯』はパンダにもしも銭湯があったら...というとんでもない発想のストーリー。パンダの親子が銭湯に行って、お金を払って、脱衣所に行く、ここまではありそうな話かもしれませんが、なんと、パンダの親子は、パンダの上半身の黒の部分をTシャツのように脱ぎ始めるのです。そして黒いサングラスを当然のように外します。初めて読んだときは仰天します。そして、さあお風呂に入る前に体を洗うぞ、というところ。ここでも耳の黒い部分が石鹸で落とされて、最終的には真っ白けの白熊さんのように! まさかの展開に、目が釘付けです。わたしのアメリカ人の友人たちも、言葉はわからなくても絵をみればわかるので、この本を開くと大笑いします。セリフもとてもキャッチーで、何百回も読まされましたが、我が子はいまでもクスクス笑います。他にもいちいち色々細かいトリックが隠されているので、大人が読んでも最後まで楽しめますよ。
8:『ぼうしとったら』
息子にいただいた絵本ですが、同じくtupera tupera。とても短くて、1分くらいで全部読めてしまいます。見開きに帽子をかぶったいろんな人が出てきて、その帽子をめくると、中にいろんな驚きが隠されています。1歳くらいから2歳前半の小さい子向けですが、3歳近い我が子は今でも声色を変えながら、大笑いしながら読んでいます。(文字は読めないのですが、簡単なので覚えてます)
9:『Casa Brutus 絵本の名作200』
まさかの大人の雑誌、カーサブルータス。この絵本特集が秀逸でした。『ぐりとぐら』のようなマスターピースと言えるクラシックな絵本から、最新の人気の本まで、広くカバーしており、インタビューも充実しています。もちろん全部読み聞かせはしませんが、ピコロくんが1、2歳の時に読んでくれとよくせがまれて、一緒になってたくさんの絵を見ながらお話をしました。
例えば、今や絵本の殿堂入りをしてしまった『だるまさんが』シリーズ。お子さんをお持ちの方なら誰でも知ってると思います。でもその作家である、かがくいひろしさんが、50歳で絵本作家としてデビューするまでは特別支援学校の教師だったこと、そしてたった4年間の作家生活で15冊もの絵本を世に送り出し、亡くなってしまったこと。そんな話を、彼の貴重なスケッチブックと一緒に紹介しているのです。先ほど書いたtupera tupera作家夫妻のスタジオも載っていたり、見所満載です。
10:『ルージュベックのだいぼうけん』
これは仕掛け絵本の部類に入ると思いますが、フランス人作家のベジェ曲線で描かれた美しい絵は、まるでデザイン画のようで、家の壁に飾ってもいいくらい。赤と青の線で描かれた世界には、実は隠された世界があって、それは付属のルーペで見ることができます。例えば一見して普通の蒸気機関車。さて、本当に石炭で動いているんでしょうか? 細かいところにたくさんの発見があって、子どもと一緒に隅々まで驚きながら楽しめます。
こちらは英語もあります。
US Amazon↓
今回は10冊だけ紹介しましたが読んでみたくなった本はあったでしょうか。子どものためと言いつつ、実は親がたくさん勉強になっている読み聞かせの時間。数多くの美しい美術や深く考えられた言葉に触れ、わたし自身も子どもと一緒に成長しているような気がします。まだまだたくさんご紹介したい本はあるんですが、また別の機会に。
※追記:これは2018/10/31に書いた記事を、ブログのプラットフォーム移行に伴い、若干の修正を加えて転載したものです。
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