【小説】まどろみ。
ふと目を覚ますと、目の前に彼の顔があった。
もう付き合って2年が来ようとしている年上の彼。
話が下手で単調なことしか言えないコミュ障の私と付き合おうという杞憂な人。
彼を愛しいとは思うけど、私が恋愛対象になる彼の頭の中は理解できない。
まあ、それを言ったら、私は男が好きだから女を好きな気持ち全般を私は理解できないのだけど。
異性が好きな男性より同性が好きな男性との方が、男を好きというフィーリングが共有できて恋バナも盛り上がれたりするのだろうか。
そんなことを思いながら、寝ぼけ眼で彼の顔を観察する。
まつ毛長いな、羨ましい。
しばらくすると、彼の瞼がピクっとしてゆっくりと長いまつ毛の瞳が開く。
「…寝れないの?」
「んーん、少し目が空いただけ」
そう言いながら彼の背中に腕を回す。
抱きしめ返してくれた彼の体は、とても暖かい。
安心感が私をまた眠りに誘う。
彼の胸に顔を埋め、同じく眠りにつきそうな彼に声をかける。
「ねぇ
好きよ」
またそんな単調な言葉だけを口にして、再び私は眠り始める。
「ふふ、俺も好き…」
微睡の中でフワフワとその声を聞いた私は、そのまま意識を手放していった。
おわり。
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