【小説】もう少しだけ
花の枝に顔を寄せる彼女を見るとまるで世界がピンクに色づいたようだった。
コンテスト用の絵のモデルをお願いしたら快く承諾してくれた私の友人。
彼女の写真に撮ってから取り組もうと思っていたが、その美しさはカメラに収まりきらない。
その柔らかさの伝わる唇はとても魅力的で。
美しく、柔らかで。
こう言うのを世の男はエロいとか言うのだろうか。
それはあまりにも言葉が足りていないなと思う。
それくらい、本当に目を奪われた。
だが、
この唇の特別が私に向くことはない。
彼女の特別に私はなれない。
彼女の恋愛対象に私は含まれない。
彼女には既に特別な人がいる。
彼女はあの人を愛してる。
こんな魅力的な彼女を前に、私のなすすべはない。
この邪な思いを、相手に悟らせてはいけない。
気づかないで。
気づかないで。
どうか。
どうか。
だから。
おわり。
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