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大ヒット曲「Rather Be」に学ぶ。Clean Bandit流シグネチャーサウンドの作り方

こんにちは、こんばんは、Minimal Order(ミニマル・オーダー)です。日頃はAbleton LiveやXLN Audio Life、そしてMoog DFAMなどを用いて音楽を制作しています。仕上がった音源は、SpotifyやApple Musicなどに公開しています。

はじめに

今回は、Tape Notes Podcastを抄訳しながら、Clean Banditがどのようにして独自の「(楽曲Raher Beで生まれた)シグネチャーサウンド」を作り出したのかについてまとめ/解説します。

*シグネチャーサウンド = ちょっと聴いただけでも「あ!これはあの人達っぽい!」と皆が気づくような特徴を持っている音
*楽曲Rather Beはこちら
*出典元の動画はこちら↓

個人的にも「シグネチャーサウンド」は追い求めているテーマだったので興味深く視聴しました。

Clean Bandit流シグネチャーサウンドの作り方

1. 「シンプルな音」がサウンドの核

Clean Banditの「Rather Be」で特徴的なのは、そのシンプルな音使い。
彼らはシンセサイザーの(本当に、本当に)基本的なサウンドを使って、曲に独特の雰囲気を作り出しています。

特に彼らが使ったのは、Abletonという音楽制作ソフトの中にある「Operator」というシンセサイザー。

Operatorは初心者でも使いやすいツールで、プリセットの豊かさもさることながら、音を作る楽しみもあります。実は過去記事でも紹介しているMura Masaも、このOperatorを積極的に活用しています。

Clean Banditは、このシンプルなサイン波(sine wave)を使い、音に「揺らぎ」を加えて、独特の「メランコリック/哀愁漂う」な感じを作り出しています。

動画でいうと、このあたり(3:13)、の秒数。

2. 「揺れ」を加えて感情を表現

では、Clean Bandit(のプロデューサーの一人、Jack Patterson)がどうやってこの「揺らぎ」を作り出したのかを見ていきましょう。

端的に言うとここでは、LFO(Low Frequency Oscillator)というモジュレーション機能が活躍しています。LFOを使うことで、音のピッチ(高さ)や音量にゆっくりとした揺れを加えることができます。

LFOは、低周波オシレーターを指し、聴覚には直接聞こえない低い周波数で振動します。LFOをピッチ、フィルター、アンプなどに適用することで、ビブラート、トレモロ、ワウなどの変調効果を生み出します。

Moogを触るときに覚えておきたいシンセ用語まとめ #全編無料公開 #継続更新 / Minimal Order


「Rather Be」では、音が伸びていく最後の部分でこのLFOが働き、音に「悲しさ」や「切なさ」が演出されています。。

LFOの使い方は簡単で、音が鳴っている間に徐々に揺れを増やす設定にすることで、曲の最初は普通の音に聞こえるものの、音が終わる頃には揺れが感じられるというエフェクトを作れます。これが、Clean Banditのシグネチャーサウンドの鍵になっています。

別の活用シーンですが、Ableton社によるLFOの解説動画を上げておきます。


3. 複雑さよりも「純粋な音」を大事にする

加えてJack Pattersonが語っているのは、「音が複雑すぎないこと」の大切さです。クラシックの要素を取り入れることが多い彼らにとって、シンプルなシンセサウンドが楽曲のバランスを保つために重要な役割を果たしています。

近い思想として、かつてご紹介したThe 1975のマシュー・ヒーリーも、

Don't over intellectualize stuff.
物事を合理的に(知的に)しすぎないで

マシュー・ヒーリー on Tape Notes Podcast, 2022/10/18

と語っていました。私自身も感じるのは、ついコンピューターを触っていると「複雑さや、知的さ、合理性」に引っ張られてしまう時間が多くなってしまうこと。これに気をつけて、あまり多くの要素を詰め込みすぎず、純粋でストレートなサウンド作りも大切にしたい思いました。


4. シグネチャーサウンドの重要性

Clean Banditの二人は、シグネチャーサウンドを持つことのの大切さについても語っています。彼らにとって、この「シンプルでメランコリックなサイン波の音」は、音楽的アイデンティティの形成に重要な役割を担いました。

シグネチャーサウンドとは、そのアーティストを聞けばすぐに誰かわかる音。Clean Banditにとって、このシグネチャーサウンドは「Operator」のシンプルなサイン波と、それに加えられたLFOによる揺れでした。この音を聞けば、「あ、これClean Banditの曲だ!」とすぐにわかる、そんな印象的な音がシグネチャーサウンドと言えます。

曲やフレーズだけでなく、単音/波形の単位でシグネチャーを探すのって、きっと大変ですが、クリエイティブで楽しい時間ですね。


5. Nexusに搭載されたClean Banditの音

大手シンセソフト「Nexus」には、Clean Banditの名前を冠したプリセットが登場しました。これは、Clean Banditのサウンドがいかに影響力を持っているかを示すものです。


まとめ

Clean Banditが「Rather Be」で作り出したシグネチャーサウンドは、シンプルなサイン波にLFOによる揺れを加え、感情を豊かに表現することで成り立っています。

これにより、彼らの楽曲はメランコリックでありながらも、ポップで楽しいサウンドを持つ独特の雰囲気を持っています。音楽制作においては、複雑な音を詰め込みすぎず、シンプルな音作りを心がけることも大事な時間でありチャレンジだなと思いました。

私も、今回のエピソードを自分だけのシグネチャーサウンドを考えるヒントにしてみたいと思います。

それではまた!

出典・参考

Creating the Signature Clean Bandit Sound for "Rather Be" / Tape Notes Podcast

Clean Bandit - Rather Be ft. Jess Glynne


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