米ビジネス誌Fast Companyが選ぶ「2022年の音楽業界で革新的な企業10社」は、リスナーや創り手視点でも革新的か
こんにちは。Minimal Orderです。
様々なサービスを介して音楽を配信しています。
はじめに
今週、米ビジネス誌Fast Companyによって書かれた「2022年の最も革新的な音楽関連企業10社」という主旨の記事を見つけました。
音楽を配信する創り手としても、様々な音楽に日々出会おうとするリスナーとしても興味を引く内容だったので、今回は記載の10社が本当に革新的(innovative)かどうかを簡単に分析してみたいと思います。
*あくまでも、一個人の限られた視点での整理・分析です。
分析の考え方
そもそも、Fast Companyはビジネス誌なので、選出基準の上位にはビジネス色の強いものがきてしまうと思います。ビジネスモデルが良いとか。
とはいえ、革新的というからにはユーザーや創り手(クリエイター)視点でも革新的であってほしいものです。
今回は、ビジネスモデルや収益性などビジネス論理は脇に置き、各社が
・ユーザー視点で革新的か
・創りて視点で革新的か
という物差しで整理してみたいと思います。
ここでいう「革新的」とは「新しい体験価値があるか」ということです。
整理を可視化すると、このような感じ。
音楽業界の革新的な企業10選 by FAST COMPANY
[1社目] MANDOLIN
一社目はコンサートのライブストリーミングを容易にするMANDOLIN(マンドリン)というサービス。
MANDOLINは例えるならば、これまでコーチェラなどが自前で用意していたフェスのオンライン配信機能を汎用化し、中小規模のコンサート会場でも活用可能にするようなサービス。
裏をかえせば、ユーザーにとってはそこまで目新しい存在ではないと感じます。どちらかというと、この便益がイベントのつくり手に及ぼす便益が大きいそうです。
[2社目] VAMPR
VAMPR(ヴァンパー)は、クリエイターにとってのLinkedInのようなサービスで、コラボ相手を見つける手助けをしてくれます。
たとえばあなたがシンガーだったら、トラックを作るプロデューサーや、ピアノを引いてくれる人、MVを作れる映像作家、などを探せます。
また、リスナーも"MUSIC LOVER”という肩書で参加する事ができ、
クリエイターと直接つながることができます。気に入ったアーティストの曲について、Instagramやブログで紹介してみる、なんて立ち回りを担えたりします。
これはクリエイター視点でも、ユーザーは新しい価値を発見できました。
ユーザーは既に100万人を超え、600万以上のコネクションづくりにも成功しているそう。日本からでも使用可能です。
[3社目] INTERSCOPE GEFFEN A&M RECORDS
3つ目はレコード会社のINTERSCOPE GEFFEN A&M RECORDS。
この例に関しては、「制作に用いる資源の共用を円滑にした」という主旨で連ねられています。
ただ、これだけ聞くと、どうしてもビジネスモデル面のインパクトの強さでランクインしているように思います。
アーティストにもメリットはありますが、レーベルに属すような一部のアーティストにだけの便益です。リスナーや多くの創り手にはインパクトが小さいように感じました。
[4社目] MUSIIO
MUSIIO(ミュジーオ)は、B2Bのサービス。音楽プラットフォーム向けに、AIがタグ付けを助けてくれます。
顧客は法人なので、創り手やリスナーではなく、今回の企画の物差しではその価値が測れません。
しかーーーし、よく見ると創り手向けに面白い機能があるんです。
曲をアップすると、AIが適したタグを予測し教えてくれるという機能。
こちらのページの、検索バーに音声ファイルを入れるか、SoundCloudなどのリンクを入れると・・・
このように、どのタグとの合致度が高いか教えてくれます。
もちろん創り手の主観で決めて良いと思いますが、タグを考えるときの参考にできそうです。
[5社目] SPLASH
SPASHはAIが作曲をガッツリ支援してくれるサービス。ちょっとだけじゃなくて、結構ガッツリです。
チュートリアル動画もあります。
ただ、この作曲支援機能についてはちょっと既視感があって、Orbなど競合サービスが存在するといえば存在するんですよね。
むしろ、SPLASHはメタバース(Reblox)内でDJイベント可能にしたサービスの方が、新規性が高いかも知れません。
①AI作曲支援。②メタバースでのイベント支援。
この2つをトータルでとらえると創り手にもリスナーにも新しい価値を提供する力を持っているのではと感じました。
脱線しますが、AI関連の企業って、「.ai」っていうイギリス領アンギラのドメインを取るのが好きなんですね。
[6社目] HIPGNOSIS SONGS FUND
HIPGNOSIS SONGS FUND(ヒプノシスソングファンド)は、
名前の通り投資会社なので、今回の企画の趣旨では価値が計測不能です。
初めて「楽曲を投資対象として捉えた」仕組みを築いたようで、発想としては昔からありましたが、実現したとなるとかなり画期的ですね。
[7社目] SoundCloud
みなさんご存知、SoundCloudです。
ランクインした理由としては、最近のアーティストへの収益還元モデル(ストリーム数で収益を還元する)が上げられていますが、Pro(有料)ユーザーではないため、創り手として恩恵を体感したことはありません。また、スゴイと話題になったのを耳にしていません。
正直ピックアップするのは10年遅いのでは。。。とすら思います。
2022年に挙げるのであれば、独自通貨を発行しているAudiusなどがふさわしかった用に思います。
[8社目] DISTROKID
DISTROKID(ディストロキッド)はレーベル契約していないミュージシャンの音楽配信を助けてくれる、いわゆる配信代行サービスです。
既に配信代行サービスは数多あるので、これは目新しくないですね。
(tunecore、frekul、audiostockなど)
[9社目] LANDR
LANDR(ランダー)はワンストップで制作、コラボ、マスタリング、配信・販売を可能にするサービスです。
LANDRはAIマスタリングを中心に結構前からあった記憶ですが、じわじわと機能が拡張していったのですね。
様々なサービスをまたいで購入する必要がなく、「ワンストップで完結させようとしている」という意味では新しい価値だと思います。
(本当は4~5年前くらいにピックされてても良いのではと思いますが!)
[10社目] GEOJAM
最後はGEOJAM(ジオジャム)というサービス。
ファンは創り手に関われば関わるほどポイントが溜まっていくというもの。
イメージとしては「Twitchの音楽特化版、通貨は$JAMで統一、通貨でアーティストのNFTが買える」といったところかな。
アーティストの創るものや工程はあまり変わらない気がしますが、
リスナー(ファン)視点では新しい価値・行動が生まれています。
まとめ
というわけで米FAST COMPANY誌が紹介する、2022年度の「音楽業界の革新的な企業10選」をみてきました。
アーティスト・リスナーにとって新しい価値があるかどうかで企業を整理した結果、下図のようになりました。
合計10企業が紹介されていましたが、中でもVAMPRとSPLASHの2社が卓越しているという結果になりました。
出典
その他参考
*出典ではありませんが、FAST COMPANYの企画の邦訳書が出ていました
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