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夏の終わりから旅がしたい

あと数日で8月も終わると知って驚いているのは私だけじゃないはず。
まだまだ暑さはあるにせよ、月が変わると気持ちが変わる。

1番好きな季節は秋だ。暑さでパリピ脳な状態から冷静になり本来の自分に戻る気がする。正しくは夏から秋にかけての変化かもしれない。

高校時代の9月は文化祭の準備の時期だった。
吹奏楽部だった私はクラスの出し物の準備の合間を縫って練習に明け暮れていた。
吹奏楽コンクールとは違って少し弾けた気分で楽しく吹ける文化祭は私のことをとても高揚させた。観客に向かって全力でアピールをするなんていう調子に乗った行為も柄にもなくやれた。
クラスの出し物はお化け屋敷が印象深い。大量のダンボールをガムテープで貼り付けて背丈以上の迷路のようなものを作っていた。ふと気がつくとその時に当時流行っていたBUMP OF CHICKENの天体観測が放送委員会によって構内に流れていた。イントロが始まった時点でテンションが上がる。
あの時何となく気持ちがふわっとしたのは覚えているけど、今なら「エモい」ってこういうことだろうなとわかる。
今でも天体観測を聞くと段ボールとガムテープの匂いまで蘇ってくるくらい私の脳裏に刻み込まれた。
その日の準備が終わるとコンビニに寄り道しながら駅に向かった。
高校最寄りの駅を出てすぐに小田急線は多摩川にかかる橋を渡る。川沿いにあるマンションの光がキラキラしていて、遠くの橋に車のヘッドライトも見える。
橋を渡る時に見える自分の高校の校舎にもまだ沢山の電気が付いている。
そういうキラキラを見ながら帰るのが好きだった。

社会人になりバイクに乗っていた時は9月に東北ツーリングというのがあった。
集合場所のSAに向かう早朝の東京は涼しく、合流して高速を走り東北地方に入ってからはどこを走っていても少し肌寒い。
みんなで朝から晩まで走りまくっていると人生の主人公は本当に自分自身なんだと実感する時が多々ある。
田んぼ道の近くを走る時は収穫期を目前に一面黄金色に輝いている稲穂に感動した。夕陽を浴びながら宿泊地に向かう時は夜を直前に傾いていく太陽の光に感動した。一旦ホテルに荷物を置いてお風呂でさっぱりした後に再度みんなと合流して夕食を食べに街に繰り出した時は知らない土地で夜に出歩く自分にワクワクした。
人生で初めて磐梯吾妻スカイラインを走った時の衝撃は忘れられない。
こんなかっこいい道があっていいのかと。必ずまた走りにくると本気で思うくらい山の景色も道も格好良くて何度でも走りに来たいと思った。

季節の移ろいは本当にいい。
それぞれ季節を感じる匂いがあって、それを嗅ぐたびに色々思い出してちょっとだけキュンとしてしまう自分がいる。
そんな中で記憶に紐づく経験が多かったのがきっと秋なんだろう。
だから私は秋が一番好きなんだと思う。

今年の秋は多分無職のままだ。
でも心に残る旅をしたいと思っている。どこに行こうか。
今の私には高校の校舎もバイクもない。
そして一人で旅をすることになるだろう。
一人公共交通機関に乗って、心がギュッとすることを求めて彷徨いたい。


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