時間が戻ってきた
目を開けて、欲望と理性を綱渡りしているだけで
土曜日は終わる
夜更かしという行為が持つ、
無根拠な罪悪感が体を包み込み始めて
その罪悪感すらも、コーヒーの苦さ
もしくは意図的な誰かへの優しさと同じ仕組みで
心地よさへと繋がりはじめる
それは不健康さと
無自覚な中毒性も連れて
スマホの充電を見ると
「2:00で充電が切れる」と主張していた
自分がいつ、世界との相互作用から抜け落ちるかを知っている
そう考えると変なことだし、少し羨ましくもある
時間を確認すると1:58
あと二分で切れるじゃん
夜更かしは
この世の他の全ての「楽しさ」と同じように
中断が一番の天敵である
寝ることから逃げているので
表現として矛盾しているが、
夜更かしは夢だ
暗くて寒い「夜中」という寂しい空間を、
たった一人うすら明るい部屋で漂う
曖昧さと寂しさと柔らかさが混ざって
そこにしかない心地よさを生み出す
そんな「夢」から醒めてしまう感じが嫌なのだ
夜更かしにおいて
その行為の合理性を検討できてしまう
余白はあってはいけない
だから、慌ててコードをタンスからひっぱり出す
いつも以上に絡まってて手間取る
ギリギリ2分以内に充電をさせた気がする
時計を見ると1:00
ん?
・・・・
サマータイムが終わったらしい
時間が1時間戻された
0:00と1:00の間で無駄にしていた1時間が
思わぬ形で戻ってきた
これは、この時間まで起きていた自分だけに与えられた
ご褒美のような感じがした
誰かから、1時間を無駄にしたこと、
さらにもう1時間を無駄にすることを
併せて赦された、そんな感じがした
ご褒美なんかに値することは一切していないけれど
人間は常に、自分だけは何かしらのご褒美に値すると
思っていたい生き物だからしょうがない
一方通行が大原則のこの世界で
1時間だけが戻ってきた
特別なまなざしを他の24時間に向けることは
残念ながら叶わない
人間は慣れる動物だから
このへんてこな感触を誰かに伝えることも
厳密には不可能である
伝わったフリはできても
結局のところ「自分」しか生きられないから
こんな寂しさは
もっとも根源的な感情なはずで
明日の自分はきっと忘れる
そんな無意味な感情でもある
そんな期待と共に
鉢植えの植物にとっての太陽のスイッチを切る