モバイルスペース
高校時代から毎日のように日記を書いていたホームページがサービス終了を迎える。
闇の記録がインターネットの亡霊になる前に、綺麗さっぱり消えて無くなってくれるのには正直ホッとする。
それでも、心の隙間は埋めきれない。
自分の為に、自分の記録を書いていた。
時々、小説のようなものを綴ったり、夢を記録してみたりもした。
読み手は自分と、地元の友人ただ一人。
万が一、他人の目に触れることなどあってはならないので、厳重に鍵をかけてアクセス制限もかけた。
二人だけの交換日記であり、自分を偽らずに済む唯一の自己表現の場でもあった。
結局、SNSでは見栄を張る。
いつかは友人関係も変わっていく。
変わらないのは15年続けたホームページ。
そう思っていたのに、サービスが終了してしまう。
移行するにはあまりに膨大で、移行作業自体にも不安があった。
「これは絶対に外に出してはならない」という友人との共通意識は最後まで揺るがなかった。
だから、サービス終了前日に自らの手で全てのページを削除したのだ。
手のひらに収まる青春だった。
人には言えない、恥ずかしいことや悩ましいことばかりだった。
その全ての記録をこの手で消してしまった、という想いは胸を締め付ける。
けれど同時に、これでようやく長い青春が終わったのだと思う。
長い、青春に囚われて生きる時間が、終わったのだ。
それはつまり、始まりを意味している。
これから先の人生は、スマートフォンでも容量が足りないだろう。
手のひらからこぼれ落ちていくのだろう。
全部は無理でも、必死で拾い集めて生きていく。
心にポッカリと空いた隙間は埋められなくても、そこに吹く風を感じながら歩いていくよ。
これまでありがとう、モバイルスペース。