「コネクテッドカーナビ」と「コネクテッドカー」は違う
両者を混同しているところがあるのでは、と憂慮する。ここでいう「コネクテッドカーナビ」とは、今までカーナビが持っていた地図機能やエンターテイメント機能をインターネットに繋ぐことでよりリッチにする、まさに記事にあるような「カーナビのスマホ化」である。しかし、これなら「スマホを使えばいいじゃん」という話になりかねず、実際にそうされているユーザー方も多いのではないか。
一方「コネクテッドカー」の概念は、自動車の「走る・曲がる・止まる」の、より根幹に位置するものと認識している。例としては下記がある。
・自動車とクラウド側AIをコネクトすることによって、自動運転制御を行ったり、シェアカーの最適ルート選択ができるようになる
・自動車と自動車間をコネクトすることによって、自動車運転の際の車間距離や速度で協調し、事故を防止する
・自動車と道路をコネクトすることによって、交通規制や道路状況に合わせた運転をし、安全性と快適性を向上させる
・自動車とメーカーをコネクトすることによって、不具合を予測・検知し、事故防止とメンテナンスコスト削減を実現する
上記踏まえると、「コネクテッドカーナビ」と「コネクテッドカー」を区別する必要性として、下記3点が浮上する。セキュリティレベル、アップデート頻度、コネクトする範囲である。
まずセキュリティレベルだが、カーナビレベルでハッキングやバグがあっても安全性に大きく影響しないが、カーレベルだと安全性に直結する。そのため、カーナビとカーでは、ソフトウェアエラーが制御系に影響しないよう、カーナビとカーで分離された「頭脳」(CPUなど)やインターネット接続が必要になる可能性がある。
続いてアップデート頻度に関しては、自動車の使用期間が10年弱なのに対して、スマホは2年程度である。自動車は信頼性を求めるのに対し、スマホ化したカーナビは最新機能の拡充性をより重視する。これらを一体で対応するよりは、カーナビの取り外し交換をしやすくするか、AppleCarplayのようにカーナビを「ディスプレイ」として割り切るなど、柔軟性が必要になると考えられる。
最後に「コネクトする範囲」だが、「コネクテッドカーナビ」と「コネクテッドカー」では本質的に異なり、後者ではステアリングやモーターなど、制御・動力系統にもつなげコントロールする必要があるが、前者では関係せず、必要とされる技術の複雑性が根本的に違うのである。
そのため、単に「コネクテッド」というキーワードに踊らされず(特に中国はこのような傾向が強いが...)、実現すべき機能とモビリティの将来像を踏まえ、より本質的な議論・戦略が求められるのではないだろうか。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25283250S8A100C1MM8000/