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海のピ #毎週ショートショートnote

「これなら泳げなくてもできるだろ!」
漁師のおじいちゃんが用意してくれたダイビングセット。酸素ボンベを背負っていたら潜れると子ども用を特注してくれた。
僕はプールの時間では泳げないのに、スキューバダイビングしたいとおねだりしていたのだ。

お父さん・お母さんは反対していたけど、
「大丈夫だよ、おじいちゃんと1回潜ってみよう。」とのセリフを信じて、海へやってきた。

まずは浅瀬でね。
おじいちゃんとぶくぶく。

ピーピピピ
聴き心地の良い音が海の奥へ聞こえてきた。
音のする方へ行ってみたい。
僕はさらに潜ろうとした。

「ちょっと待った!」
おじいちゃんが止める。
「もしかして、“海のピ”の声を聞いたのかい?」
たぶんそうかも。と僕は頷いた。

「だとしたら、気に入ってもらえたんだな。“海のピ”が聞こえたら泳ぎが上手になると言われてるんだ。でも上手になる前に音のする方へ夢中になって泳ぐと帰って来れなくなる。だから、がんばって練習するんだよ。」

僕は嬉しくなって、夏休みのプールも参加するようになった。次の夏にはすっかり泳ぐのが得意になったけど、“海のピ”が聞こえることはなくなった。

遅れちゃいました。
うれしいんだけど、深みにハマりすぎてはいけない、イカロスの翼みたいな話にしてみました。


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