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やさしさに飢えている(三行詩)
大夕張は ダムだけが残っている 展望台に立つと 背中は切り立った崖になっていて そこに ぽっかりと残った覆道
君の 綿毛のような部分に触れたいんだ 落としてしまえばいい とがった固い心など 紅の葉は 足もとを行く清流に乗って はるかな海に沈むだろう
昨日はとても言えないと思ってた だから手紙を書いた なのに今日 あなたの穏やかな顔を見て 言えばよかった と
また 白い川に赤い雫を流す 鈍い痛みが支配するのを 足枷のように わたしは受け止める
かなしい秘密を胸にしまいこむよりも めくるめく思いを閉じておくほうが難しい わたしにとって大切な出来事も 口に出してしまうととがった石のように
8歳年下の夫とともに わたしが子どものころ過ごした団地を 見に行った
どこかで 玉ねぎを炒めるにおいがしている 西日があたる窓の下で 亀はひなたぼっこ
セーラー服を脱いで 横たわる 欲しいのはお金でも まして愛でもない
ひとつの魂が 霞の中に現れて 泥の海に流されてゆきます 姿かたちばかりが大人の 少年と少女の間で
夜空に散る星たちを ぐるり みんなで寝転んで見上げた 波の音だけが聞こえ だれも喋らないのにひとつ
緑の月からやってきて わたしは地獄を見た そこは針の山 たくさんの少女たちが 千人針を縫っている 「ご無事でねそして手柄をたててきてね」 彼女らの願いこそが 男たちの命そのものを 刺す 大王に 操られているのにも気づかぬまま
豪雪の中を 黒いブチの犬があるく 足跡とそいつの区別もつきゃしない
陽射しが 柔らかな君の髪を照らすので 思わず抱き寄せて ほおずりしたら