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仏像から見る日本人のプラモ魂
こんにちは、みねるばです。
今日は仏像の話のツイートまとめです。
ツイートまとめ:仏像から見る日本人のプラモ魂
仏像から見る日本人のプラモ魂
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
時は今から千年前の11世紀、律令制崩壊後の古代世界終末期。律令制、つまり刑法システムが終わった世界で、治安は極端に悪化。至る所に盗賊や山賊がはびこり、西日本では海賊が暴れまわり、場所によっては北斗の拳状態になっていました。
この時代、一般民衆は何の希望もない時代です。はい上がるチャンスは全くなく、病院もないので病にかかったらおしまいです。そもそも民を守らなきゃいけないはずの国司が悪徳国司だったりして、民は重税にあえぎます。貴族は民衆に興味がなく、民を救うはずの仏教も、
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
金を積んだ貴族が出世したり、より豊かになるために加持祈禱(かじきとう)という祈りの儀式をする密教が主流でした。
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もはやこの世はオワコン。そう考えた民衆に流行ったのが浄土教です。生きるのが辛すぎるので、極楽浄土へ行きたい、つまりあの世で幸せになりたいという宗教です。そして、
そんな浄土へつれて行ってくれるのが、阿弥陀如来(あみだにょらい)という仏でした。南無阿弥陀仏という念仏は、「阿弥陀如来様、信じています!頼みます!」という意味です。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
腐敗し切った仏教界でも、ごくごく一部のお坊さんは、民のために立ち上がりました。
空也上人(しょうにん)は、その筆頭です。彼は浄土教で民を救おうとしました。彼の像の口から出ている6体の仏像は、南・無・阿・弥・陀・仏を意味します。彼が唱える念仏は、唱えたそばから仏像になっていくとされました。彼のように民衆を助けるお坊さんは聖(ひじり)と呼ばれ、 pic.twitter.com/iRgbsxCycA
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とても尊敬されました。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
こうして民衆に広まる浄土教。しかし、実は貴族も浄土教を強く必要としました。なぜならこの世で幸せだった分、あの世が怖い。こんな贅沢三昧して、罰を受けるのではないか?頼む、阿弥陀如来!あの世でも幸せにしてくれ!となるわけです。例えば、
「この世をば わが世とぞ思う 望月の 欠けたることも なしと思えば」でお馴染みの藤原道長ですが、実はあの歌を詠んだすぐ後に彼は糖尿病を発症し、失明します。彼の晩年は悲惨で、半狂乱になりながら自分の指と阿弥陀如来像を糸で結び、
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「お願いします!どうか極楽浄土に連れて行ってください!」と泣きながら訴え、死んでいきます。シビアな話です。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
また、人々のパニックに拍車をかけたものがありました。それが末法思想です。仏教の世界では1052年に末法の世に突入すると言われました。最初は仏陀の教えが正しく伝わる正法の時代、
次に教えが形骸化した像法の時代、最後にもはや教えが何も届かない終わりの世界、末法の世です。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
「世界の終末は近い!」
今の我々がそう言われると、目を合わせながらゆっくりと距離を取りたくなってしまいます。
が、当時の人々にとって、これはあまりにもリアリティがあり過ぎる言葉でした。
なぜなら、前年の1051年に前九年の役という激戦が東北で始まってしまいました。人々は戦乱で、疫病で、貧困でバタバタと倒れていきます。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
10XX年、世界は末法に包まれた!
こうして日本全国、貴族から民衆まで皆が阿弥陀如来を求めました。
日本総南無阿弥陀仏社会。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
阿弥陀如来の仏像の爆発的需要が発生しました。
そして、ここから日本のテクノロジーのブレイクスルーが始まります。
それまでの仏像は、仏師が1つの木からひとつずつ丁寧に作る一木造(いちぼくづくり)が主流でした。しかし、
それではとてもじゃないですが、需要に追いつきません。そこで仏師達は、プラモデルのように仏像を手、足、頭、胴体・・・と、パーツに分けていきました。そして、手だけを彫りまくる仏師、足だけを彫りまくる仏師、頭だけを彫りまくる仏師、と分業体制を築き、
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ここから異次元の仏像量産体制に移行します。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
連日連夜、仏師達は己の担当パーツを彫りまくりました。コツがわかれば効率化が進み、生産はさらに高速化。そして、それらは日本全国に発送され、まるでプラモのように組み立てられていきました。こうした仏像の作り方を寄木造(よせぎづくり)と言います。
千年前の前近代社会で、これほどの高クオリティな仏像量産体制は、世界でも極めて稀です。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
こうして中央から地方まで、日本中に阿弥陀像や、それを納める阿弥陀堂建築が広がりました。それらは観賞用、布教用と様々な利用がされました。奥州藤原氏が築いた中尊寺金色堂も阿弥陀堂建築です。そして、
末法突入の翌年の1053年に、十円玉で有名な平等院鳳凰堂が急ピッチで完成しました。もちろん、それも阿弥陀堂建築、中にあるのは寄木造の阿弥陀仏です。もっとも、こちらは寄木造の中でも最高品質、プラモで例えると数万円クラスのパーフェクトグレードの巨大版です。
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
ちなみにこれらの話がわかると、こちらの東大で出た日本史の過去問が解きやすくなります。難しいと言われる東大日本史の中でも、最高ランクの難問の1つです。興味があったら挑戦してみてください!
— みねるば (@minerva_owl1) March 23, 2024
参考文献やおすすめ本はnoteにまとめておきますね~ pic.twitter.com/NhGKIPxpyT
みねるばおすすめの関連本
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図説日本史通覧(帝国書院)
安定の日本史の図説です。阿弥陀仏や寄木造、平等院など、あらゆる写真が網羅されています。価格も安いので、おすすめです。
ストーリーで学び直す大人の日本史講義(祥伝社)
もう一回日本史を学び直したいなと思う人は、こちらが最適です!予備校の日本史トップ講師の野島博之先生の講義本です。めちゃくちゃわかりやすく、古代から現代まで駆け抜けることができます。
仏像がわかる本(淡交社)
簡単な仏像の歴史や、有名な仏像について、わかりやすく解説しています。仏像について学び始めたい時に、とても良い本です。初心者に最適です。
カラー版 日本仏像史(美術出版社)
更に深く仏像の歴史を知りたい方は、こちらがおすすめです。前提知識がないと厳しいので、中級者・上級者向けです。
東大の日本史25カ年(教学社)
東大の日本史の問題だけ集めた過去問集です。ツイートで紹介した問題もこちらに含まれます。
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noteではバズったツイートを中心にまとめていく予定です。
引き続き、どうぞよしなに。
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