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お寺生まれ元市役所職員が、里山の古民家ではじめる小さな場づくり

家を飛び出したような気分で

市役所を辞めて今の仕事に就いたとき、まるで家を飛び出したような気分だった。

お世話になった職場、お世話になった故郷を離れることに、心の片隅では申し訳なさや心残りを感じながら、それでもその決断には揺るがないものがあった。

北海道から神奈川へ。
職場の環境はガラッと変わった。

神奈川といっても静岡との県境。すぐそこには山のある、いわゆる「いなか」で、職場は里山にある築90年超の古民家だ。

約2年前から地域交流拠点兼コワーキングスペースとして運営されているが、利用者が訪れることはそれほど多くはない。

今年の2月にこちらに来て、「この場所の価値とはなんだろう」そんな問いとずっと向き合ってきた。

見つけたのは「時間軸」

普段この古民家で働いていると、「時間が溶ける」ような感覚になることがある。

周りに家はあるものの、お店がなく、人通りもほとんどない。そのせいか、鳥の声、庭の風景、雨の音などに自然と意識が吸い込まれ、時間軸がじんわり伸びていく。

築90年を超えるこの古民家が、「ゆっくり生きればいいよ」と語りかけてきてくるようだ。

世の中はタイパにコスパ。時代の流れに逆行する価値がこの場所にはあるのかもしれない。そう思うようになった。

頭によぎった実家のお寺

そんなことを考えていると、ふと自分の実家が頭をよぎった。

自分の実家は北海道の小さなお寺で、もう10年以上、法事とは別に色々なイベントを開催しながら「地域に開く」ことをしてる。

そこもまた、世の中の時間軸とはかけ離れた場所であり、むしろそれぞれの生きるペースに寄り添い、誰もが立ち止まってもいい場所であった。

自分が育ったバックグラウンドと、自分がいま身を置いている環境。この2つがオーバーラップし、これからこの場所でどのような場づくりをしていくのか、ちょっとずつイメージが固まってきた。

はじめの一歩

この地域には知り合いもほとんどいないし、発信力もない。それでも、一緒にこの場所や挑戦を楽しんでもらえる人に出会いたい。そしてそこに生まれた輪が、この土地に馴染みジワジワと広がっていったら…。そんな妄想をしながら、はじめの一歩としてこの文章を書いています。

ということで今後、自分が里山の古民家で取り組む場づくりの話を中心に、少しずつ更新していこうと思います。

(つづく)



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