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待ち遠しい
ー今度の日曜日はお友達とみんなで山の方に梅の花見に行こうね
母親に告げられてから、当時幼稚園に通ってた私は、その日が来るのを心底待ち侘びていた。
だが、興奮し過ぎたせいか前日から熱を出してしまい結局行けなかった。大丈夫だから行きたい、行きたいと泣きせがんだが、もちろん聞き入れられなかった。
後から、梅の花綺麗だったよ!ウグイスの鳴くの聞いた!と友達から楽しげな様子を聞き、私も行きたかったのに!と悲しくて悲しくて、またぐずぐず泣いてしまった。
その時の記憶のせいか、春と言えば私には梅の花なのだ。春を告げる花。
冬がそろそろと引き上げる頃、西からの大量の砂塵と強風の後、空気に底はかともなく漂い出す芳しい香り。春の風が懐かしく甘く感じられるのはそのせいかな。
梅の花は見映えも可憐だがその存在そのものが、長い間に強張ってしまった私の心を緩めてくれるのだ。
人で賑わう整備された梅園と違い、幼い頃の近所の山の梅は他の木々に紛れ本当にひそっと咲いていた。わざわざこんな山奥まで見に来る人もまずいない。探しだすと見つからないけど、何気なく歩いてると、ふわりと香る存在感。たまに思い出したように響くうぐいすの声。
念願の梅の花見に連れて行って貰った後、私は口笛を毎日練習した。小学生になってからは、口笛でうぐいすの鳴き声にほぼ似せられるようになり、うぐいすのお喋りに混じって遊んでいた。
家の庭でもうぐいすや蛍が迷い込むような場所だったから、恵まれていたと思う。
うぐいすの鳴き声を聞かなくなって久しい。
日差しにようやくぬくもりが感じられてきた今日この頃。
三寒四温。まだまだ遠いけど、いつか子供とあの山に春を見つけに行こう。