ヒーローと一般人『ファンタスティック・ビースト』ニュート・スキャマンダーとハリー・ポッターの違いとは?
映画『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が、 2022年4月8日(金)に公開されます。
最近になってようやく、ファンタスティック・ビーストシリーズの主人公であるニュート・スキャマンダーの魅力が分かってきました。
ハリポタシリーズの主人公であるハリー・ポッターとは、似て非なるキャラクターなのです。
ファンタビを初めて鑑賞したときには、ヒーローらしく描かれていないニュート・スキャマンダーのキャラクター設定に戸惑いました。
ハリー・ポッターは、いわば運命の子。
赤ん坊の頃からヴォルデモート卿という悪の存在と戦う宿命を背負ったバリバリのザ・ヒーローです。
少年でありながら、命の危険と隣り合わせの戦いを強敵相手に挑んでいきます。
一方、ファンタビシリーズの主人公ニュートは、幻の生物の生態を研究する学者肌の人物。学者と言っても、机の上で勉強するタイプではなく、世界各国を旅しては、貴重な動物たちを集めて研究していく行動的なタイプです。インディ・ジョーンズの動物学者版といった感じ。
二人の違いをひとことで言えば、ハリー・ポッターは存在自体が特別。
ニュート・スキャマンダーは、動物学者としての知識が特別。
といったふうで、わかりやすく言えば、シャーロック・ホームズとワトソンくらいに、主人公としてのあり方が違います。
シャーロック・ホームズは、誰が見ても完全なる主人公ですが、ワトソンは、一般的には脇役なのですが、見る人が見れば特別で、捉え方によっては主役にもなる魅力的な人物です。
このようにハリーとニュートのキャラクターとしての設定は、「主人公と脇役」くらいの格差があります。ところが、二人の性格はかなり似ているのです。
ふたりともコミュニケーション能力が少なく、自分の世界にこもりがちです。
そして、持って生まれた正義感の強さに、抗えない人物でもあります。
ハリーの悲劇は、ヴォルデモート卿に攻撃され、唯一生き残った人物というレッテルを貼られ、ヒーローになる人生を強いられてしまったことです。
ハリー自身は、ヒーローになりたいなどとは思っていないのにです。
ニュートは、動物たちの世話ができる暮らしがあれば、それだけで幸せなはずですが、魔法界の大物ダンブルドアに強いられることによって、悪の組織を強大化しようとしているグリンデルバルドとの戦いに引きずりこまれてしまいます。
ふたりとも、降り掛かった問題に対して「自分には関係ない」と逃げ出すことはしない、強い正義感をもった人物なので、主人公になり得るんですよね。
面白いのは、根本的な性格は似ているのに、悪に対するスタンスが違うことです。
ハリーの物語は、敵討ちが含まれています。悪を倒すのは、世界の平和のためでもあるけれど、「両親の敵でもあるヴォルデモート卿を倒すのは自分しかいない。」と、少年が決心する過程をハリー・ポッターシリーズでは描いています。
ハリーが所属していたホグワーツの寮はグリフィンドールなので、寮の精神である勇気、大胆さ、気力、騎士道的精神に乗っ取る行動をするわけです。
ニュートは、「動物と家族がいれば幸せ。」という人間の基本的な暮らしを好むごく一般的な生活をしています。
ところが、周囲の人が悪に巻き込まれてしまったので「自分や友人たちの穏やかな生活を守るため」に戦っている側面を感じます。
戦い事態は、ダンブルドアとグリンデルバルドの関係性の問題でもあるので、ニュートには直接関係ないのですが、ダンブルドアに頼まれて力を貸している。
底抜けのお人好しでもあります。
ニュートが所属していたハッフフパフ寮の生徒の気質は、勤勉、献身、忍耐、忠義、公平性。寛容で穏やかな人物が多い寮です。
騎士道精神あふれるハリーのようなヒーローが戦う物語は、古き時代から数多くありますが、ニュートのような穏やかで普通の暮らしを好む人物が、悪と戦う物語はめずらしいのかもしれません。
原作者のJ・K・ローリングが、ハリー・ポッターのスピンオフシリーズの主人公を、ハッフルパフ出身のニュートにした意図がここにある気がします。
普段はおとなしい穏やかな人物が、命をかけて自分たちの生活を守るために戦う。
戦いの大・中・小はあると思いますが、それって実は、日々、わたしたちも経験していることではないでしょうか?
ファンタスティック・ビーストシリーズの主人公ニュート・スキャマンダーは、生まれ持っての特別性があるわけではなく、要はわたしたちの中の一人の物語でもあるんですよね。
言い方は悪いですが、一般人のヒーローの物語でもあるんです。
同じような使命をもった人物がファンタスティック・ビーストシリーズには、もうひとり登場します。
マグル(人間)なのに、魔法使いたちと行動を共にするジェイコブ(ダン・フォゲラー)です。
実は彼こそが、等身大のわたしたちで、魔法の世界に入りたいと願う魔法ワールドファンを投影したキャラクターだと思うのです。
マグル(人間)からしてみれば、魔法が使えるってことはやはり特別ですから。魔法使いというだけで、ホグワーツに通っていたというだけで、ファンにとっては羨ましい存在です。
ニュート役のエディ・レッドメインは、長身でハンサムなので、どうしたって特別な存在感がありますしね。
それでも、ニュートをヒーローとして描かずに、「ダンブルドアに巻き込まれた人物」という描き方をしているところが、ファンタスティック・ビーストシリーズの魅力だということに、ようやく気づいてきました。
スピンオフ第3弾『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』でも、ニュートとジェイコブの一般人としての活躍を楽しみにしています。