遠回りしたくなる福知山
福知山へ行ってきた。
お目当ては市民交流プラザふくちやまで行われている「共生の芸術祭」と、まぃまぃ堂で行われている「平たい箱展」。
10年くらい前によく綾部の友人のところへ遊びに行っていた。三ノ宮から高速バスに乗って福知山へ行き、そっからJRに乗って綾部というルートを使っていたから福知山へは来たことはある。だけど駅にあるミスタードーナツでバスを待つくらいで福知山がどんなところかは知らない。そんな訳でただ目的だけ果たして帰るのではなく、福知山という地を巡ってみようと10時10分三ノ宮発の往路と18時福知山発の復路のチケットを買った。
10時10分に出発して11時30分に福知山到着。
共生の芸術祭の会場は駅に近い。いきなり目的地に行かずに福知山散策しようと地元の神社を検索。歩いて行ける距離に御霊(ごりょう)神社がヒットした。
Googleマップを見ながら歩いていると、細い路地で日向ぼっこしているおじいさんが居た。そして、ふと見るとおじいさんの横には亀がいた。
「あっ!」と思わず口から出てしまった。おじいさんに「亀ですよね。飼ってるんですか?」と尋ねると「買うとるよ。コレは子どもが10歳の時にお祭りで持って帰って来て、それから飼うとる。もう40年一緒に暮らしとって、寝る時はわしのココ(右脇)に挟まって寝とるわ」と教えてくれた。私が近づくと人見知りするのか亀はおじいさんの影に隠れて行った。
「亀も人と一緒に寝るんですね。知らなかった。」「せやで。わしも亀を買うまでは知らんかったわ。夜寝る前にはな、早く寝とうてコレ(亀)が靴下脱がしに来よるんやわ。この子の1日の1番の楽しみはワシと一緒に寝る時だで催促するんよ。」と言っておじいさんは笑った。亀の写真を撮っていいか尋ねると、おじいさんは「亀治郎よかったな」と言いながら亀治郎を近くに寄せてくれた。ちなみに亀は「クワッ」と鳴くらしい。
おじいさんに御霊神社へ行くことを告げると行き方を教えてくれた。
公園横にある静かな神社。明智光秀の霊を祀っているらしく記念樹もあった。
参拝を終え、次は福知山城へ行こうとGoogleマップで経路を調べて歩く。城下町の名残を感じる街並みを歩くのは楽しい。
お城へ向かう道中に大きな川があり、土手を歩きたくなった。
土手から川の向こう岸に立派な大銀杏と紅葉が綺麗なこんもりした丘が見えた。ムクムクとそこへ行きたい気持ちが湧き上がって橋を渡る。
大銀杏にはすんなりたどり着いた。
人は居なかったけど、どうやらお寺さんのようだった。お寺さんの中にブランコがあるのを初めて見た。親しまれたお寺だったんだろうか。
次は紅葉が綺麗な丘へ。住宅地の中にあるその丘にどうすれば辿り着くのか思案しながら歩いていると神社を発見。参拝して辿り着くよう道案内をお願いした。参拝し終えると小学生くらいの女の子がジッと私を見ていた。確かに知らない人がウロウロしてたら気になるよね。そう思いながら歩いてると、何故かすぐにたどり着いた。参拝効果すごい!
「たぶんやけどこの丸い丘は昔古墳だったんじゃないかな」と思っていたら、古墳じゃなくてお城の跡だった。猪崎城というお城があったらしい。
場所は見つけたけど頂上に登る道が分かりにくい。悩んでいると小さな黄色い蝶がふわふわと道案内するように飛んで来た。「これも参拝効果かな?」と思ってついていく。蝶が案内してくれた最初のルートは途中で足を踏み外しそうな場所に出くわした。チャレンジしようか迷ったけど、ここで無理して落ちて足を悪化させてはなるまい。そう一旦引き返して悩んでると、また違うルートを示す様に蝶が飛ぶ。たまたまかも知れないし、都合よくそう見ただけかも知れないけど、蝶について行ってみたら頂上についた。
ベンチに座ってのんびりして景色を眺めてから降りて行くと小さな神社を見つけた。
この場所にたどり着いた事に感謝して手を合わせていると右手がカサコソする。「虫!」と思いながら潰さぬように軽く払いのけるとカメムシだった。亀治郎にカメムシに何か亀が寄ってくる。不思議。
衝動的に行ってみたいと思った場所に辿り着いて満足し、福知山城へ向かう。
福知山城はわかりやすい場所にあったので、すんなり到着。
明智光秀のことがいろいろ書いてあったけど興味はなく、城の中に居るという事を楽しんだ。とても整備されていて町の人から愛されている城なんだなぁと感じられる美しいお城。ふと見ると城の前に神社があった。
目的地に行く前に参拝したいとは思ったが実はここで8社目。作品展を観に来たのではなく、私は福知山へ拝みに来たのだろうか。気を取り直して、やっと目的地のひとつまぃまぃ堂へ向かう。
まぃまぃ堂は商店街の中にある。実は一度綾部の友人に連れて来てもらったことを思い出した。
さっそく「平たい箱展」へ
可愛くてユニークな作品がたくさんあったのでぜひ観てほしい! 12月2日までやっているとのこと。
たくさん歩いたので、まぃまぃ堂でタルトタタンとジンジャーティをいただいた。
気さくな店主さんでいろいろ話してくださった。福知山城下町エリアMAPや、この後に行く「共生の芸術祭」のフライヤーも手渡してくれた。たくさん歩いた足をゆっくり休めてから、やっと目的地の市民交流プラザふくちやまへ。
散々散策してスマホが充電切れになりそうになってたこともあり、「共生の芸術祭」の写真はありません。
だけど、いい展示だった。個人的に気になったのは藤本正人さんと加藤拓治さんの映像。これは作品というか行為の記録で、藤本さんがケースから外してばらばらにしたカセットを直してくれるように無言で加藤さんに渡し、受け取った加藤さんが元の形に戻して返し、藤本さんがまたばらばらにして渡すという行為が永遠に繰り返される。しかもそれを40年近く続けているらしい。
ふつうに考えると意味がなく、よくわからんことを飽きもせずに何でやってるんだろう? となるところを、見せ方ひとつで価値になるとは! と感心して観た。ずっと観てられる。
だけど自分もこういうとこあるなと思う。だって、この展示を観に来たというのに、その前に散策しまくって、謎に8箇所神社で手を合わせ、帰りのバスの発車時刻の1時間半前にやっと目的地に着いた頃にはスマホの充電ないという…。私の中では理由や想いがあるけど、人から見たらわけがわからない。いろんな想いや考えがある中で出てくる言葉や行動は伝わりにくい。
昔はそんな自分を理解されなくて悔しいとか悲しいと思ってたけど、そういう自分を面白がれるようになってきたなぁと展示を観て改めて思った。
投稿する頃には「共生の芸術祭」は終了してるけど、いい展示だった。ゆっくり時間が流れて心地よかった。そこに辿り着くまで、ゆっくりのんびり遠回りや道草ばかりしてた私は亀のようだった。道中に亀や蝶が味方になってくれて嬉しかった。スカートの裾にいっぱいひっつき虫をつけてたくさん歩いた。左足を怪我してから過去最高の2万歩も歩いてた。
そんな風にのびのび遠回りさせてくれる魅力と包容力が福知山という町にあるのだろう。福知山をちょっと知れて嬉しい。
のんびりまた行ってみたい。