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現実は小説より奇なり登山
昨日歯医者に行った。午前中の少しひんやりしたいい天気。右奥歯にできた虫歯の治療で麻酔をかけた。お昼時だけど治療後は2時間何も食べないように言われて治療を終えた。
山陽電車に揺られて車窓の景色を見ていたら、ふと「旗振山に登ろう」と思い立った。山陽電車の山陽垂水駅を降りて、JRに乗り換えて塩屋で降りる。旗振山への登山コースは旧グッゲンハイム邸裏から登るコースがお気に入り。
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山に入ると人間社会の中で普段は塞いでいる感覚がのびのびする。自分の周りにある「氣」みたいなもんが解放されてスーパーサイヤ人みたいな感覚になる。足取りも軽く、分かれ道があっても瞬時に自分の感覚で「こっちがいい」とわかる。何にも悩むことは無く、ただただ森の草や土の匂いや水を感じながら足を前に運ぶ。歩きながら自然と考えごともしていたりすると、その答えが何かわかったりする。
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そんな風に登ると山頂に差し掛かかる。山頂近くにはヤマツツジが咲いていた。
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そろそろ山頂に差し掛かる頃、桜並木が広がる。
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山道にある桜だからか、みんなのびのびしてて木の幹の下の方というか根っこからも花が咲いている。誰かに踏まれませんように!と願いながら、「お前、何でここで咲くねん!」というツッコミをしつつ、そんな桜の無邪気な可愛らしさに笑みが溢れる。
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旗振山は頂上付近に着くと、謎の昭和ワールドが広がる。
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そして山頂に着くと神戸の海や町が一望できる。
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山歩き中に70代くらいの男性ふたり連れが「いつ来てもこの山はいいんですよ」と話していたがよくわかる。ハイキングくらいの感じで登って降りて2時間半くらいで来れる気楽な山登りができて見晴らしもいい。最高だ。
と、そんなことを思っていたら、ひとりの初老男性がロープをくぐり抜けて何か植物を見ていた。何でもないような草にしか見えなかったので声をかけてみる。
「何を見てるのですか?」
男性は「フジバカマです」と答えた。「フジバカマ?」とキョトンとした顔をしてると、男性はメガネをキラっと光らせ「有名ですが知りませんか?」と尋ねたので「知りません」と答えた。
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お話しを聞くと、アサギマダラという蝶が海を渡って行く時にここに立ち寄ってフジバカマの蜜を吸っていくように育てているらしい。フジバカマは繁殖力が強すぎて、たくさん生え過ぎると弱ってダメになるから、株分などして育てて秋にアサギマダラがくるのに備えているそうだ。
「秋になる頃、去年は10月頃に100羽くらいのアサギマダラが来ました。綺麗でしたよ。この山は桜の時期は人が多いけど秋の楽しみも作りたいし、アサギマダラが南へ渡って行くのにこの景色を見せて通るのがいいじゃないですか」
男性は嬉しそうにそう話し、アサギマダラが来た時の写真を見せてくれた。そして桜には一切目もくれずにフジバカマを見ていた。
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下山コースもいろいろある。今日は須磨浦公園の敦盛桜が見えるコースで行こうと降りたつもりが間違った道を来てしまったみたいで「どこで間違えたかな?」と歩いていたら、急に尿意を催した。あかん。これはあかん。大人になって一度漏らしたことがある私は焦った。
↑漏らした時の話↑
どこかで用をたさなくては! 山道より少し奥に隠れる道が見えて「ここだ!」と思って大自然に抱かれて用をたした。何か童心に返った。助かったと思って山道に戻ろうとすると何かある。
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何これ? 何かちょっと特別な何かな氣がプンプンする。よりによって私は何故この近くで用をたしたのだ。持っていた水を石にかけ、手を合わせてその場を去ると山道にこんな立て札があった。
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尿意に焦って見えてなかった。何でそんなところで私は用をたしたんや。用をたせて私の世界平和は保たれたけれども!!
アレでよかったのかを考えながら降りて行くと、立て札にあった旧南洋植物園があった場所っぽいところに出た。
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かなり大きな敷地のようで、塩田さんの心意気を感じた。歩いていくと、たぶんそこも旧南洋植物園の敷地だったのではないか?と思われる公園に出た。何か唯ならぬ公園だった。こんなものを見つけた。
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立て札を読んで愕然とした。私がさっきオシッコした場所やん!!! そこに居たの???
何かすごく申し訳なくなって「すみませんでした」と手を合わせた。悲し気な目をしてる皇女和宮像。舞子ビラで働いていたこともある私は何だかご縁を感じた。オシッコしといて何だけど呼ばれたのかな?と思った。和宮様は寂しかったのかしら。
他にもこの公園には源平合戦で「海にも都がありましょう」と8歳で海に身を投げることになった安徳天皇を祀る宮があった。
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前にもここにたどり着いたことを思い出した。その時は安徳天皇のことを知らなかった。今は知っている。知っていると見え方や想いは変わる。
フジバカマやアサギマダラも知らなかった。たくさんの蝶が蜜を吸いにやってくる植物が居ることも、渡り鳥のように旅する蝶のことも。
ふと思い立って行き当たりばったりで山へ登って、こんなドラマが待っているとは。現実は小説より奇なり。そもそも小説なら主人公が突然に尿意を催して草むらで用をたす場面などない。だが、それがいい。現実のそんなところがいい。
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