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まだ見たことのない世界へ 作業療法士が出会ったマインドフルネス 〜学ぶから教えるフェーズへ〜

当センターでは、ドイツのthe Institute of Mindfulness Based Approaches(IMA)と連携し、2021年4月からMBSR講師養成講座を開催しています(2022年10月開講3期はこちらから)。

その1期生として2021年10月からのプログラムに参加されている家永さんにご寄稿いただきました。作業療法士として精神科のクリニックのデイケアに勤務されながら、MBSRを教えることを学び、感じていることとは。(ご本人プロフィールは文末)

6月5日(日)から日曜朝のMBSR8週間コースを開講予定です。
>>詳細こちら
以下、家永さんの寄稿です。


不安だらけで始まったモジュール1

家永
2020年10月、勢いだけでMBSR講師養成講座に申し込み、そこから1年4ヶ月、2021年4月のモジュール1から10ヶ月が経過した。その間、ここに来なければ経験出来なかった多くのことを振り返ってみた。
モジュール1に参加中、英語が飛び交い、知らない言葉が飛び交い、突然講師役の練習が始まり、極度の緊張感を味わっていた。今後ついていけるのか、とただただ、不安と焦りで一杯になった(私のフィルターがかかっていただけで、通訳の方もいるし、初めから難しいことをするわけではありません)。しかし、モジュール後のフォローアップミーティングや、瞑想のペア練習などで同期の方と話をする機会をたくさん作って下さっていた。遠くに感じていた同期の方との距離も、少し縮まったように思う。
また、ピアグループでのミーティングを重ね、モジュールで投げられたことを言葉にして、また自分の中に戻して考え自分の中で日々マインドフルであるとは?ということを浸透させていく感覚を得ていった。

講師養成の先生方は主にヨーロッパから参加されているため、クラスは英語/日本語通訳で実施しています。マインドフルネスは体験的な学びを重視するものなので、まずは受講者の皆さんには、実際に教える体験をしていただき、その後に理論的な内容を深めていく順序をとります。コースは3−6日程度のモジュールが2−3ヶ月おきにあり、そのモジュールの間には4人一組のピアグループで学びを深めていただきます。頭で学ぶだけでなく、それを体に落とし込んでいくために、1年半〜2年という期間をつかって有機的に学んでいきます。


学ぶことがこんなに楽しいとは

家永
モジュール3。1週間にわたる長丁場。身体の疲れは感じていた。しかし、MBSR8週間プログラムが、巧妙に考えて組み立てられていることが分かってきて、感動の連続となった。
モジュール3で学んだ座る瞑想では少しずつ瞑想の時間を伸ばしてきたのは、45分の初めの30分は、「無選択の気づき」に行き着くための練習だと教わったとき、鳥肌がたつような感動を覚えた。8週間というプログラム全体も、一つの瞑想自体も「こうやって練習をしていくと、ここに行き着く」という意図をもって提供されているとしり、その前までの興味もわいてきた。私は、ヨガ哲学を学んできたが、一つのレッスンの中にも三昧に行き着く段階があり、一つのポーズにも三昧に行き着く段階があると習い、すごく感動したことがあるが、それとつながった。楽しい・・・身体の疲れと反比例するように気持ちは元気になっていった。
今まで、仕事関連で多くのことを学ぼうとしてきた。しかし、背景には「いい仕事をするために学ばないといけない」という義務的な感覚もあったように思うし、自分の中に浸透する前に別のことを学ばないといけないスピードについていけずに自分の中に浸透してこない中途半端な感覚もあって「学ぶことが楽しい」に至っていなかったように思う。
「楽しい」と感じると、今まで学んできたもの、今まで経験したこととのつながりも感じて、楽しさが広がった。

モジュール3は、1週間の長丁場で、8週間コースの核となる3〜5週目に該当するところを学ぶモジュールでした。MBSRのメインの瞑想実践の一つである座る瞑想について、その構造や、開かれた意識の中に様々な感覚を感じていく「無選択の気付き(選択しない気付き、Choiceless Awareness)」の位置付けなどを学びます。

教えるためにMBSRの構造を学んでみると、マインドフルネスやMBSRの意図していることがより深くわかるようになってきたという体験でした。

新たな負荷

家永
いよいよ、MBSR8週間プログラムを展開していく準備が始まっている。現実をみると、「自分が提供するものを受けてくれる方がいるのだろうか」と不安しかない。しかし、同期に教えてもらいつつ、同期の動きを見よう見まねをしつつ、講師養成講座に入っていなかったら、私には一生縁がなかったかもしれないことにも発信するために、動き、心の準備をしている。
同期の一人が言っていた。「今、MBSR8週間プログラムの中で4週目・5週目で急に負荷があがるのと似ているね」と。私は、その言葉で勇気をもらった。「MBSR8週間プログラム」を提供するとき、参加者がきちんと練習をしていくと、負荷があがっても、進んでいける力をつけていると信じて、提供するはず。それならば、講師養成講座というプログラムも、それまでを一つ一つ進んでいたなら、負荷があがっても、越えられるはずと信じてもらって提供されているはず。一つ、一つは進んできたはず。そのような道を作ってくれているので。多少スピードは違っても、一緒に同じ方向に進んできた同期がいるので。
超えた先は、自分を高めたまだ見たことがない世界が待っていると思うと、不安よりもワクワクした気持ちが勝っている。

いま、ちょうど、8週間コースを提供するための準備を行っています。

MBSRは、カリキュラムにそったプログラムであり、カリキュラム自体のもつ意味と同時に、講師が体現するものがとても重要なプログラムです。すなわち、講師が、これまで人間(職業人としての側面も含め)としてどのような体験をし、どのような態度で生きてきたか、それがクラスの中でどのように現れてくるのか、そのことがとても意味を持つプログラムでもあります。そのため、基本カリキュラムに即している点ではどのMBSRも同じである一方、講師やそのときに集まる受講者の方々により、その時にだけあるMBSRのクラスが開講されることになります。

講師自身が、さまざまな不安さも持ちながら、そのことに気づき、それだからこそ生じるダイナミックなエネルギーをもってクラスを行っていく、これが、いまこのステージにある講師のもつ大きな力となります。今回の講師養成プログラムでIMAのプログラム・マネージャーを務めるIngrid氏は、このトレーニング直後の講師について、「ビギナーズマインドを体現し、ときに経験のある講師以上に素晴らしいクラスを提供することがある」と言っています。

MBSRをつくったJon Kabat-Zinn博士は、「波は止めることができない。しかし、それを乗りこなすことが出来るようにはなる」と言っています。私たちの生活、人生で、コントローすることのできない様々なことが起きる中で、その不安定さ、不確実さを受け入れながら、波に乗るような態度を養っていく、このことを講師自身が受講者のみなさんと一緒に探索していく、これがMBSRのダイナミズムであり、醍醐味だと言えるでしょう。

家永千夏 プロフィール詳細

作業療法士。精神科の病院で慢性期の統合失調症の方を中心とした作業療法に従事。その後認知症関連の病棟やデイケアに従事。
精神科クリニックの気分障害圏・発達障害圏のデイケアに勤務しています。
そこで、マインドフルネス認知療法、認知療法、ACTなどの心理療法に出会いました。そして、自分も体験したいとマインドフルネスを本格的に学びだし、それが、いつしか自分と向き合うツールとなっていきました。
唯識論を学びの入り口として、マインドフルネスのベースとなる考えに触れていき、かつ身体感覚を高める面白さと大切さを実感していきました。自分が学びを継続していく中で、痛みとの付き合い方、感情との向き合い方など硬く握りしめていたものが手放した体験を伝えていきたいと思うようになりました。
身体感覚を大切にしたいとヨーガ講師の資格をとり、少しずつですがお伝えをする機会をもっています。自分の体験とそれを裏打ちする知識や言葉が合わさったときの楽しさをご一緒出来る仲間を増やしていきたいと思い学びを続けています。

家永さんのMBSRコースは以下にて実施されます。無料のオリエンテーションも行っていますので、ご興味あればご参加ください。
(以下をクリックしていただくとコースの詳細へとびます)

また、この5−6月期は、以下のMBSRコースも開講しています。(日程は開講日、名前のあとはMBSR講師資格以外の関連する分野)
①5月17日(火曜10:00-12:00) 宮本:MBCT, MBCL, MBPM講師
②5月18日(水曜19:45-22:15) 小保方:精神科医
③5月23日(月曜13:00-15:30) 井上:MBCT, MBCL, MBPM講師
④6月3日(金曜10:00-12:30) 粟野:企業、コミュニティ
⑤6月3日(金曜19:45-22:15) 叶:臨床心理士、スクールカウンセラー
⑥6月5日(日曜8:00-10:30) 家永:作業療法士(精神科)
⑦6月5日(日曜19:45-22:15) 江崎:公認心理師、産業カウンセラー

*MBCT:マインドフルネス認知療法
*MBCL:マインドフルネスに基づくコンパッションのトレーニング
*MBPM:痛みのためのマインドフルネス

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International Mindfulness Center Japan
最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!