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マインドフルネス瞑想のおすすめ本|『シャンバラ - 勇者の道』
マインドフルネス瞑想の良書紹介、今回はこちら
『シャンバラ−勇者の道』, チョギャム・トゥルンパ(著)
です。実は、ここで紹介するのは もったいない… と思えるほど良い本だと思います。
本の内容
チベットの幻の理想郷シャンバラ。その王国の勇者たるにふさわしい資質はどう育まれたのか。今に伝わる精神修行の道程をわかりやすく解説。無我の悟りともかかわってくる4つの性質とは?
「MARC」データベースより
どのような人におすすめか?
小島美佳:さて、先に私の方からお話しすると、なんだかんだ言ってこの本はレベルが高いなぁと感じました。人間的な成長を求めて努力してみたり、瞑想にも出会って、より自分自身を高めたいと思っている人にとっては、聖書みたいな位置づけになり得る本かなと思います。
一つ一つがとっても深く語られているので、最初にサーっと読んでピンと来なかったところが、もうちょっと経験を積んだ後に読み返してみると辻褄が合うところがあるのかなと言う感じです。
松村憲:まさに今美佳さんが言ったようなバイブル的な本になり得るなと、僕はそういう感じに思っている本の1つですね。とても素晴らしい本だなと思っていて大好きです。
でも、多分もう絶版でなかなか手に入らないかもしれませんが…本当に名著だと思います。
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あと、いろんな瞑想に興味があるとか、精神的な成長に興味があるとか、そういう枠組みでは考えていないけれど、「世の中に対して、自分にできる事はなんだろう?」って考えて一生懸命生きている人にとっては、指針として刺さることがあるんじゃないかなと思います。
読み物としてもパワフルなので、読んでおくと後から響くようなこともあると思うし、本当に響く人にとっては魂に響く本だな、と。
著者 チョギャム・トゥルンパ氏について
松村憲:後はこの著者自身がすごいユニークな人で好きなんですけれど、その話とかも今しちゃって大丈夫ですか?(笑)
小島美佳:どうぞどうぞー
松村憲:チョギャム・トゥルンパは、ダライ・ラマみたいな感じで、活仏っていうチベット仏教の中では転生して生まれてきた偉いお坊さんの魂だと言われています。若い頃に見出されて出家して、「あなたは転生した偉い人なんですよ」と言われて高等教育を受ける。イギリスの大学に入って、イギリスで西洋の文脈で色々な哲学や宗教学を勉強したりって言う、まぁもう仏教の勉強は若くからさせられているんだけれども、チベットでは超エリートですよね。
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Source : Amazon
なんだけれど彼は、「仏教の枠組みで仏教の本質を伝えてもダメだ」と若くして悟って、それを実際にアクションにした人なのです。精神的な解放とか ハートについて語っているけれど、
それを「ブッダはこう言いました」とか、「仏教ではこう言います」というレベルで話していない。エッセンスは全部伝えているけれども、それはあなたにも通じることなんだと、私たちのところまで 降りて来て話してきてくれてる感じ。
またスピリチュアルな事柄にしても、遠くの世界にある話じゃないんだよ、今ここにあるんだよ、日常のあなたの生活の中にあるんだよ、と語りかけているところが、本当に秀逸というか。他の人が書いた本とは一線を画している部分があるかなと思いますね。
深い内容ゆえに、読み手の解釈は様々かも?
小島美佳:私自身は、伝えられている言葉と自分の経験を重ねて読んだところがすごくあって、結構「あーそうそうそう」みたいに思っていました。
特に痛みについての部分。ある程度の経験をしてからじゃないと、このニュアンスってわからないだろうなぁ…とか。一定程度の熟成があった後の世界観みたいなところを、出来る限り分かり易く伝えてくれていますね。
これはキリスト教や聖書とかにも通じることなのかもしれないけど、ある程度の熟成があってからじゃないと分からないような内容が多分に含まれている印象がすごくあります。
松村憲:そうなんでしょうね。
小島美佳:例えば、初めて瞑想に興味を持ったみたいな人にこの本を勧めてみても、「良いことをするといいことがあるのね」みたいな、やや薄っぺらい解釈をするような人もいる気がする。
何か大きな苦労や学びが成熟した後の人に刺さって、やっていることが間違っていなかったみたいな、答え合わせをする本、という風にも思いました。
松村さんは、どうですか?
松村憲:読む人によっては、そうなのかもしれないですね。薄っぺらく感じる人には読み切れないかも。でも、そういう人でも興味があるなら読んだらいいと思います。人生全般について、深く扱っているので 刺さる人には刺さるだろうなと思いますし。
小島美佳:そうですね。そういう意味では、癒しになる本ですね。
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勇者として生きるための瞑想
松村憲:後は「本当にありのままの自分を肯定する」みたいな話が、単純なようですごく難しいじゃないですか。
自分を肯定するって、どういうことなんだろう?と瞑想していても思うんだけれども、著者が言っている自分自身の「本当の深い善良さ」っていうのは存在する。(今この世に生まれている時点で誰にでもあるのだけど)我々はいろんな文脈、歴史、生きてくる過程で それが見えなくなりますね。でも、善良さに開かれていくことは可能だと教えてくれる。
この本は瞑想の本でもなくて、瞑想については少ししか書かれていなんだけれども、自己肯定の域に到達するために「絶対に座る瞑想が必要なんだ」と書かれていたのは、改めてやっぱりそうなんだよなみたいな、自分にとっても再確認できる部分があります。
小島美佳:そうですね。
松村憲:頭と身体をシンクロさせる、結局頭と体はなかなかシンクロしないけれども、シンクロするためにもやっぱり瞑想が必要なんだなと。
なんていうのかな、ほんとに革新的なところからそうしたことについて書いてくれているって言う感じがします。
小島美佳:瞑想の本質的な意味みたいなものを、改めて確認するって言う深い意味合いをもう一度見いだすことができるっていうのは、確実にある気がします。
松村憲:本当にありますね。
だから、自分がありのまま肯定されて生まれてきたって言う前提に立てれば、苦しみだとか課題だとか社会の中にたくさんあるので、そのためにも勇者は目覚めを共有していくのが、当然の喜びであり義務なんだって言う、結構厳しめに書いてあるところもあります。
世界の状況について何ができるんだろう?みたいに真剣に考えている人たちには響くんじゃないかなと思います。
世の中を、ありのままに見ていくと理不尽なこととかいろんな課題や痛みが見えてくるわけじゃないですか。この本は、『シャンバラ−勇者の道』って言うタイトルなんだけれども、勇者っていうのも ただ単に力が強いのが勇者なのではなくて、「勇者とは、ほんとに本当は優しいんだ」っていう話があって、優しさっていうのはハートが開かれているから痛いんだって言う話が何度も繰り返されます。
だから哀しみとか痛みを、今もしあなたが感じていたとしても、それは避けるものじゃないんだっていうか、まぁ「それこそが勇者のハートの痛みなんだ」と。
そういうプロセスにある時だったり、瞑想してだんだん自分に向き合って 痛くなったり辛くなったりという時に、そこを越えていく支えになるんじゃないかな。
小島美佳:そうですねー。
やっぱり、人間的な成長と瞑想の深い意義みたいなところを掘り下げて理解したい方には、ぜひ読んで頂きたいです。
瞑想プロセスにおける、恐れや悲しみについて
松村憲: 瞑想しているときの経験やプロセスにおける ”恐れ” とか ”悲しみ” について、美佳さんはどう思いますか?
小島美佳:この本を読みながら私が思ったのは、恐れや悲しみのプロセスは絶対に誰にでもやってくるもので、ノスタルジー的な要素があるものだと感じます。しっかり感じ取ることは大切ですね。
ただ、そこに浸り過ぎている人に対しては、「もしもし?」みたいに言いたくなることがあって(苦笑)。「居たいなら、そこに居てもいいけれども、ずっと居たところで永遠のループが続くだけなので、今の状況さえもマインドフルに見られる所にまで到達できたらいいね」と感じますね。
松村憲:なるほどー、そうですよね。
『悲しみに浸る自己憐憫』と『悲しみを知っているけれども、前を向いて歩いている人』の違いみたいな感じかなぁ。
小島美佳:悲しみが必要ないかって言うと決してそうではなくて、すごく大事な感情なんだけれども、何かそこにどっぷりと浸りすぎるわけでもなく「あーなんかちょっとこれは痛いなぁ」程度に 大事にできる…。
悲しみありきではなく単純に悲しみを大事にできる、穏やかに哀しみを味わえるようになる次元が欲しいなぁとは思いますね。
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松村憲:そうですね。
だからその辺のところがきっと瞑想プロセスとしてもすごい大事だろうと思うし、結構そこの部分が僕がこの本が好きな理由でもあって、「そうなんだ」って再認識するんですよね。
で、マインドフルネスそのものなのかもしれないけれども、“恐怖” とか “恐れ” って、例えばセラピーとかコーチングをしていても、あるいは自分のことを振り返っていても、やっぱり人間のエゴって結局恐れの塊で出来ていると思っていて、けれども自覚されてないことっていっぱいある。
「俺怖くない」って言っていても、でも実は本当は怖いわけじゃないですか。
急に自分の死を身近に感じると怖くなったりもするし…
この本に書いてある部分で好きなのは、チベットの勇者の道で言う「勇者」というのをシンボリックに書いてあるところで。要は『瞑想していく時に到達すべきモデル』について述べられていると思うんです。
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勇者が感じている “恐れのなさ” と言うのは、まず ”恐れ” を経験しなければいけないと書いてある。
「臆病さの本質は、そこに ”恐れ” があることを認めないことにある」って書いてあって、本当にその通りなんだろうなと思います。
「怖い」と感じている自分を知ること、それは実はとても強いことで、何かが「怖い」と感じられると、自分の中の弱さが開かれていく。
そこにはきっと ”悲しみ” とかも感じるだろうし、でもその悲しみの心に反応するのではなくて、しっかりとその涙に洗い流されたときに、優しさが現れてくるみたいな。そんなプロセスを何回も繰り返すと思うんですよ。
身近なところで考えてみると、佇まいなどから「あー、この人は素敵な人だなぁ」とか「優しくて、懐が深いなぁ」と感じる人いますよね。そういう人は、今話したみたいに悲しみや痛みを何度もくぐり抜けてきた人だったりすると思います。
人間的な感情に蓋をするマッチョな人たち
小島美佳:最近、私自身が組織の中に入って、マッチョな世界観を垣間見る体験が沢山あるので、『恐れを抱くのは弱い証拠』とか、『臆病さ=恐れがあることを認められない』といったことは凄く感じるんです。
組織の中を観察していると、例えば「実行する」ことによって自分の中にある恐れをかき消してきた成功者って結構な数いるのかなーと感じます。
実際、そういうマッチョな成長を遂げてきた人たちは強いし、修羅界のようなところで戦い続けてきて、ある程度の成功を手にしてきている。
だからこそ、あんまり立ち止まって自分の中にある臆病さとか、本当は恐れている部分に目を向けない癖をうまくつけてきたんだろうな、そういう集団なんだろうな、と感じることが多いのですよね。
そのすごい力強さの裏にある、なんとも言えない脆さみたいなものを垣間見る機会もすごくあって、その状態を見ていると私自身が痛みを感じ始めるというか(苦笑)。
私の中で、それはどうやってアプローチしたらいいのかな?といった問題解決思考に寄っちゃうこともあるし、「おおおー!」と思いながら観察していたりもします。
集団の思考としても存在している気がします、「これ(恐れなど)は見ないようにしよう」みたいな。
松村憲:今の美佳さんの話を聞いていると、本当にその通りだなと思います。
個人というよりも集団的とおっしゃられたように、マッチョとかいわゆる今の資本主義的な部分で世界をリードしているビジネスとか、そこに携わる人っていうのは、どうしても恐れの前で立ち止まるのではなくて、さっき言ったみたいに実行でかき消すとか、修羅の世界に留まってしまうと思います。
でもやっぱり人の部分もあるから、そこで無視したり、抑圧したり、見ないようにしているものがあって、それは “恐れ” だったりその他の感情だったりする。
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先ほどの勇者の話で言うと、「自分の中にある怖れ」を認めて開かれていくと、強さの次なるステージがあるのですが、集合的な観念から抜け出す怖さもあるでしょうね。
小島美佳:そうですね。
私は自分に当てはめて考えてしまったんですけれども、私自身がコンサルの業界でゴリゴリやっていた頃は、まさにその修羅界に自分の身を浸していたと思うんです。
修羅界は、弱いか強いかで人を判断するところがあるので、どうしても『弱さを認められる強さ』みたいなところまで行けないというか…。
いまの瞑想ブームを眺めていると、(一般的にはパフォーマンスを向上させるとかストレスを軽減させるといった目的もあるけど)こういった修羅の世界にいる戦闘員たちの心を開き、痛みも感じられる勇者の方向に成長できる道筋が準備され始めてきたんだろうなぁと思って。
そういう意味では、表向きのストレス軽減や集中力向上は方便ですよね。
先ほどの話にあった痛みに浸りきっちゃってヤッホーな人たちも、一歩前に進むエネルギーをマッチョな人達から貰うと良いのかもしれないですね。
両方(修羅界とノスタルジー)のスタンスのバランスをとって統合していくみたいなものなのが1番理想的なのかなーと思いました。
松村憲:すごい。
小島美佳:すごい!繋がりましたね!(笑)
修羅界から解脱して阿修羅(勇者)になる
松村憲:さきほどの話で出てきたマッチョな修羅界の人たちは、やっぱり立ち止まらなさ過ぎる、バランスとしては立ち止まることも時には必要と感じます。
美佳さんがそういう人たちに関わって自分が痛みを感じ始めるっていうのは、彼らが切り捨てているものが強過ぎるから、だと思いますね。
でもそれって “痛み” が当たり前になってしまった不感症に近いので、実は解離している。
誰かが痛みを感じてお返ししてあげると、彼らも忘れた感情を取り戻しやすくなったりもします。
グループでの対話も企業で取り入れられるようになってきましたが、誰かが切り離した感情を誰かが拾って感じてあげることで、その人も周囲も癒されるセラピューティックなプロセスがそこにはあると思います。
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それから、ビジネスに瞑想の視点が入ってきたことはとても良い流れだと感じています。修羅がダメのではなくて、修羅がもっと目を開いて行った時に「そこに痛みもあった、怖さもあるね」といったことを引き受けられる本当に優しい阿修羅みたいな境地に、まさにチベットの勇者になると思います。
それって多くの人の希望にもなりますよね、きっと。
逆に「ビジネスとかマッチョでゴリゴリしたのは嫌です!」と言って、瞑想の平穏、静けさのみに浸っている人たちには、そこから1歩踏み出すために修羅のエネルギーがむしろ必要と思うことも多いです。
平和志向の人たちでマッチョの人たちを『異常に敵対視』している場合は、恐らく自分の中のエネルギーを投影していると思います。
感情を感じるのを恐れるのとは逆に、自分の中のパワーを感じることに怖れがあるのだと思います。
小島美佳:そうですね。
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松村憲:ちゃんと「悲しみが私にもあるんだ」とか、「この世界は私にとって心地よくない場所なんだ、辛いんだ、痛いんだ」としっかりと受け取ったときに、他者に投影するのではなくて、自分のパワーを使って「じゃあ何しよう?」って言う世界が待っていると思います。
テーマはそれぞれにありますよね、光のテーマと言うか。
まさに両方をしていくと良いなぁとか、本当はそういう大きい流れがあるような気がしますよね。
小島美佳:本当にそれぞれが歩み寄るというか、まず互いのエネルギーを取り込むっていうのは、本当に大切なことなんだろうな、という風には思いました。
両方とも手に入れることをやらないと、結果的に1つレベルアップするって言うことにはならないのかなと…そういうことですよね。フムフム。
松村憲:そこに行くためには、何かどこかのタイミングで絶対、瞑想なり瞑想的なものが必要なんだろうなぁと著者も書いていたけど、その思いは話しながら確信になりました。
小島美佳:そうですね。
瞑想の本当の意味が分かるというか、入口は「ストレスフリーになりましょう」とか「集中力を高めましょう」とか「癒し」とかでも全然良いのですけど、最終的には大げさに言うと『魂の成長のため』みたいな。
なんかそういう感じなんだろうなっていうのは改めてわかりました。
松村憲:『自分を拡大する』とかね。
そういうところにまで行こうと思うと、本当にそれまでの発達段階的なロジカルな視点だけでは超えられないところがあるんだなぁと感じます。
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