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矛盾を愛せるようになるまでの実験の繰り返し【あいだの生き方ラジオ~収録後記~】
2025年の1月〜6月にかけての半年間、「あいだの生き方ラジオ」のパーソナリティを務めることになった。
「あいだの生き方ラジオ」では、様々なゲストと共にあいだの生き方について考えを深めていくラジオ。
「社会にあいだの選択肢を創り、一人ひとりの心にゆとりと安心を届ける」をミッションに掲げて活動する任意団体あわひが運営している。
以前、友人がパーソナリティを務めており、ゲストに呼んでもらったことをきっかけにお声がけをもらった。
突如やってきた人生を再び立ち止まる時期に、タイミングよく舞い込んできた「あいだの生き方」について聞くことができる時間。
不安の最中にいる私の背中をさすってくれているようで、いい作用が働いている気がする。
せっかくなのでラジオの感想の記録をしていこうと思う。
「あいだの生き方ラジオ」#101 ゲストきえさん
私にとって大切な「初めて」の瞬間を預けることができる人
今回ゲストにお呼びしたのは、以前同じアルバイト先で働いていた先輩でもあるきえさん。
今回新しいことを始めるにあたり、安心して一緒に「初めて」の瞬間を預けられる人は誰だろう?と考えたときに、悩みに悩んでいたところあるときふっと思い浮かんだのはきえさんだった。
ラジオの中でも詳しくお話ししているのだが、生きるためになんとか始めたアルバイトだったので、入社したての頃はおそらくまだメンタル不調は完治しておらず、人と関わることに怯えていた時期。
そんな中で入社初日に研修をしてくれたのがきえさんであり、一つひとつの業務について丁寧に説明する姿と私のペースに寄り添ってくれるコミュニケーションに衝撃を受けた。
私の心が回復していくきっかけをくれた一番初めの方がきえさんだったように思う。
人生の中でも大事な時間になりそうな予感がしている「あいだの生き方ラジオ」。一番初めのゲストにぴったりだ!と意気揚々とお誘いし、快く引き受けてくれた。
無理をしないためには訓練が必要
きえさんをお呼びしたもう一つの理由は、無理をしてしまうという特性を持ちながら働き方を模索している(してきた)という共通点があったから。
以前、きえさんに働く上で大切にしていることを聞いた際に「自分が無理をしないことで、やっと周りの人にも無理をさせないことができる」とお話しされていたことが印象に残っていた。
当時の私は、ついこの場が丸く収まることを優先して自分を犠牲にしがちだったので、自分のためだけでなく、周りの人のためにも無理することがよくないことなのだと知り、慌てた覚えがある。
今回のラジオの中で、無理をしてしまう気持ちがわかるきえさんは一体どうやって「無理しない」ようになっていったのか?が少しわかった気がしている。
「自分の感情をそのまま受け止める訓練をしてきた」という表現をしていたきえさん。
訓練という言葉を使うあたり、そう簡単にすぐできるものではないのだろう。
私も不調が出ちゃったという経験があって、自分の状態に無自覚に過ごしてきたなと思っていて。
なんかモヤモヤしているけど、何にモヤモヤしているかわからないとか、今いい状態じゃないけど、どういう状態になったら自分はいいのかなとか全然わからないまま過ごしていた
自分の状態に無自覚なまま過ごしてきたことを自覚して、まずは自分自身の気持ち・感情をじっくりと観察。どんな状態なのかを噛み砕くために自ら問いかけ、心地いい状態にするために実験をする。
さまざまな試行錯誤の上、ようやく少しずつ今の状態を見過ごさずに冷静に観察するクセが身についてきたのだということがわかった。
勝手にきえさんのことを自分自身の気持ちに素直な選択をできる人なのだと思っていたが、これまでの積み重ねの結果なのだということがわかり、今すぐに自分を大切にする選択ができなくても自分を責める必要はないと思うことができた。
自分に寄り添う声がけや問いかけに変えていきたい
きえさんは自分の状態を理解するために、自分自身にたくさんの問いかけをしてきたのだと思う。
そしてその声かけや問いかけは決して厳しいものではなく、きえさんが他の人に話しかけるのと同じくらい優しくわかりやすく寄り添うようなコミュニケーションをしていることに気がついた。
ねぎちゃんの話で言うと、また自分の状態を見極められなかったみたいな、無理をしてしまったところで悔やんでいるかもしれないけど、もしかしたらそれは自分に一回でも挑戦させてあげたかったんじゃないかなと思っていて。
それができたのは、もっとね、誇りにというか、そう思えないかもしれないけど、そこは堂々としていていいのかなってちょっと思いました。
「がんばりすぎちゃう」ところもあるけれど、「ちょっとがんばりたい」「挑戦してみたい」という思いもあるのも事実。自分に挑戦させてあげることもとても大事なこと。
ずっと自分の間違った選択を後悔していた私は、きえさんのこの言葉に救われた。ラジオを聴いてくれた方がいたら、きっと共感してくれるのではないだろうか。
癖付いていたので自分では気づかなかったが、私は物心ついた頃からずっと自分に対して厳しい言葉をかけてきた。自分で自分を苦しめても意味がない。
これからはできなかったことを責めるのではなくて、少しずつきえさんのように見方を変え、できることを褒めて傷ついた自分を労る声かけをしていきたい。
自分に寄り添う問いかけができるようになれば、自らよき状況に変化させることができるようになる気がしている。
心が安心するきえさんらしい言葉選び
「今どんな人ですか?」という問いに対するきえさんの回答は「矛盾を愛せるようになり、再び人生の中で実験をしていきたいと密かに目論んでいる状態の人」というもの。
きえさんらしい言葉選びが全面に表現されている自己紹介だと思う。
自分が大切にしていることの中に、矛盾っていっぱい存在すると思って。(中略)自分のことに集中したいっていう時もあるけど、それだけだとちょっとつまんなくなってしまうというか、また人に会いたくなってしまう自分もいて、でもそれがしばらくすると、ちょっと疲れたみたいなちょっと1人になりたいみたいな時期が来たりするから、(中略)ぐらぐら揺れてたり常にするなって自分では思っているので、そういうのって側から見ているとわからないから、結局自分を整えるとか自分の状態をよくしてあげるのって(中略)最終的に自分にしか自分をケアしてあげられない部分もあるのかもとか今は思っているかな。
ラジオの冒頭で聞いたときには、矛盾を愛すってどういうことだろう?と思っていたが、お話を聞くにつれて私も自分の中の矛盾を愛してあげられたらもっと気持ちが楽になるのかもしれないと思うようになっていた。(それが自分を愛すことにつながるのかもと思ったり…まだわからないけど)
ここ最近の私も、人が好きなのにずっと人といると疲れてしまう。人が集まる場をつくりたいのに参加するのは苦手。など、両極端な自分のわかりづらさにうんざりしてしまったり一貫性がないのかなと自信を失ってしまったり。
きえさんのおかげでどっちも持っていていいんだと思うことができて、気が楽になった。自分で自分をがんじがらめにしていただけだった。
自分自身を探究しながら、生きていく
ラジオの振り返りとしてきえさんから出てきた言葉は、いろんな人にも当てはまるのではないかと感じる表現だった。
自分というものの探究は尽きることがないなと思っていて、今はそれが面白いなと思えていて、割と前向きな心持ちの状態なのかなと思っているんだけど…。
いつかまたぐらっと崩れる時ももちろん来るかもしれないけど、その時はまた今日の収録を聞いたら、そこでもしかしたら「こんなこと自分考えていたんだ」とか「こんなことをねぎちゃんに言ってもらっていたんだ」っていうことに勇気づけられるんじゃないかなっていう、そんな遠くの未来をちょっぴり想像してみたりして、不思議な楽しい時間でした。
この時間の中で、すごい過去の自分にまた会いに行ったりとかしている感覚もあって…。
今の自分を支えてくれている過去の自分に会いに行ったり、これからの自分の未来を想像しながら今この瞬間をがんばってみたり。そうやって自分自身を探究している感覚を持って日々過ごせたら、なんだか楽しそうだと思う。
ある意味、いくつになっても悩みってあるんだろうなと思うけど、でもちょっとずつ自分のことをだんだんとわかっていく。こういうことで悩みやすいなとかこうだったらこうしたらいいという対処というかリカバリー。元に戻るための行動に切り替えられるようになるかもしれない。経験値としてできていく
今の私は二度目の人生立ち止まり期。なかなかな思うように人生が立ち行かないことにヤキモキするし、そもそも自分のやりたいことってなんだっけ?と考えることに疲れてしまった自分がいる。
きっと周りのみんなはとうの昔にできるようになっていたであろう、自分の心の声に従いながら生きること。私はここ最近やっとできるようになったばかり。置いてけぼりになったように感じて、世間の物差しで自分を測っては自己嫌悪。
そんな負の感情に支配されかけていた私は、きえさんのお話を聞いて考え直そうと思えた。
きえさんでさえ時間をかけて身につけてきた自分の状態を観察するということ。そんなにすぐできるようになるものではないのだろう。
自分がまたメンタル不調になるのではないかと怯えて選択を後回しにするのではなく、今の自分の素直な気持ちに従いながら、しっかりと自分の状態も見過ごさない。そんな意識の積み重ねが、自分を大切にする私をつくりあげていく。
一歩先を歩くきえさんがいてくれたおかげで、私は少し安心してこれからの道のりを歩んでいける気がする。
今の不安定な私にとって、このラジオの時間はとても意味がある、そう再確認させてもらえる初めてのラジオ収録となった。