死の匂いを消し去りたい
よくわからない状態のまま病院を出ることになった。
病院を出ると、眩しすぎる太陽の光がグレーのタータンチェックのパジャマを照らす。もう太陽が高くなってきているのに、パジャマをきた中年女性が泣きながら駐車場を歩く。
義理の弟が車で迎えにきてくれていた。甥と姪もいる。子供達はひとまず妹の家に避難することが決まった。
誘導されるがままに車に乗り込む。
家に帰るとすぐに先ほどの警察官がきた。
よく覚えていないが、最近かかった病院の診察券などだすように言われた。彼の使い古したお財布をそのまま差し出す。
警察官がドカンとダイニングテーブルの椅子に座る。
30分ほどだろうか。現場検証的には疑うべき事象がなかったのか、そのまま帰っていった。
監察医が巡回してくるのが次の日の午前だから、午前中に近くの警察署に行くように言われた。
家の中は両親、義理の両親がいる。静まり返って一緒にいるのが辛い。
どこまでも口の中、身体中を覆う死の味、匂いを消したくて、一人になりたくてシャワーを浴びた。