Tシャツと短パン

花が飾られ、会場がセットされると、その日はもう帰っても良いとのことだった。不思議なウイルスの時代で、家族が斎場に泊まるのは禁止となっていた。

家に帰ると、主人をなくしたリビングはガランと虚しかった。

妹と姪っ子が泊まってくれた。

棺桶に入れる写真を集めなければいけなかった。事務作業のようにただひたすら写真をかき集めた。妹が何も言わずに手伝ってくれた。

他に棺桶に入れるもの、、、、

そうだ、Tシャツと短パン。彼はいつだって、仕事中もTシャツと短パンで過ごしていた。スーツを着なくていい職業につきたいと言う不純な動機で選んだというテレビの仕事。冬もギリギリまで短パンを履いていた彼が三途の川をあんな白い着物で渡るようには思えない。

彼の書斎を見回した。彼が仕事で使った台本がみっちりと書斎の本棚に陳列されている。私は彼が一番輝いていた頃の台本に手を伸ばし、パラパラとページをめくった。鉛筆で書かれたグニャグニャの彼の字がみっちりと台本中に散らばっていた。彼は死んでしまったのに、字は生きているようだった。


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