洗い流せない。
シャワーの蛇口をひねる。
とにかく熱いお湯を浴びて洗い流したい。口に目一杯お湯を入れて吐き出す。体にお湯をかけても何も感じない。背中に熱さを感じたい。痛みを感じたい。普段の温度じゃ何も感じない。
お湯を45度に設定する。
ようやく、少し背中に刺すような熱さがある。
お風呂の椅子に座りながら、何をするでもなくお湯を浴びる。
これからの人生あと何度シャワーに入ったら死を洗い流せるのだろう。
ぼーっとしながらシャワーを浴び続けた。いつもと何も変わらないお風呂場。ここは十数時間前にみんなで一緒に入った場所だ。四人で小さな風呂釜にひしめくように入った。それが最後の入浴になると思いもよらなかった彼を想う。
なんで死んだの?
なんでおいてくの?
一緒にいたくなかったの?
幸せじゃなかったの?
こんなに何もかもすっ飛ばしてなんでいっちゃうの?
いつ帰ってくるの?
答えの出ない疑問だけが頭の中ひしめく。