舞台裏

夫の死に関連する様々な手続きをしに、夫が勤める会社に、義父と一緒に行くことになった。

絶対に遅刻しない義父は、30分で着くところを1時間半前に出ようという。いつもギリギリの私とはまるで違うが、何も言わずに従った。

1時間半前に出たものの、不思議なウイルスの時代で車がほとんど走っておらず20分くらいで到着してしまった。

時間を持て余すことになり、夫の会社のロビーで二人で少し離れて座る。

華々しい業界の裏にいる顔色の悪い人たちがグレーの建物に吸い込まれるように入っていくのを眺めていた。舞台裏は、いつだって無機質で殺伐としている。

しばらく沈黙が続いた後、義父が口を開いた。

「 奈美ちゃん、Mは亡くなる数日前に、家の裏の坪庭を整理していたよね。雑草取ったり、土を掘ったりしてなんかやってたよね。」

そういえばそうだった。不思議なウイルスの時代で一気にできた時間を、家族全員で家の片付けや家周りの整理に使おうと、子供たちと一緒に遊びながら小さなプロジェクトにしていた。私は息子と子供の勉強机の購入や設置をプランニングしたり、キッチンの整理をしたりしていた。夫はその日、家の裏の放置された一坪ほどのスペースを綺麗にすると言って、娘を誘ってスコップで土を掘ったりして整理していた。キッチンにいる私に、ごろごろと大きな石が出てきたよー!と娘が興奮しながら伝えにきてくれていた。写真を撮って、じいじばあばにも送っていた。

そんなことを思い出しながら、

「はい、そうでしたね。」と答えた。

「その土に何か変なものが混じっていたんじゃないかと思うんだよね。それが原因なんじゃないかな。」

「だったらJも死んでますよね。」

と妙に冷静に答えてしまった後に、後悔した。私だって、知りたい。原因を。でも、原因がわかったところで帰ってこない。色々考えても何も変わらない。

義父は黙ってしまった。

そのまま沈黙が続き、ようやく約束の時間になった。




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