泣いていられない。
そこからは連日、様々な関係者がお参りに来てくれた。
私はその度に、同じ話を繰り返した。朝ソファで発見したこと、CPRをしたこと、救急車を呼んだこと、病院で死亡が確認されたこと。
自分が話しているのか、カセットプレーヤーが再生されているのかわからない感覚になっていった。
彼の死を、消費しているようだった。
来客の対応に加えて、様々な現実問題が津波のように押し寄せてきた。お墓の問題、位牌づくり、四十九日の準備、銀行の手続き、証券会社の手続き、クレジットカードの手続き、保険の手続き、年金の手続き、公共料金の支払い、退職の手続き、区役所での手続きなど数えきれないほどの手続きが必要だった。
真っ暗な巣穴に潜ってただ泣いていたいだけなのに、津波は巣穴をも水浸しにして私を強制的に引っ張り出した。
泣いていられないんだ。。。
私は手帳に全てのTo Do リストを書き出した。
手帳一ページが小さな黒い字で埋め尽くされた。
私は途方に暮れ、巣穴に戻って、全てを丸投げしたかった。ただ、誰かにやってもらいたくても、本人でないと出来ないことばかりで、ブーメランのように返ってくるだけだった。
To Do リストにあるタスクを塗り潰すことだけを目標に、重たい操り人形のような身体をを引きずるように動かした。