拗らせ合唱人が選ぶ!マイ・ベスト・ミュージック2024
もうすぐ2024年が終わろうとしています。
今年もたくさんの音楽と触れ合うことができました。
……とか、書けたら良かったんですけどね。
気づいたんですよ、私。
こいつ、合唱ばっか聴いてんな!って。
通勤中は音取り用の音源ばかり聴いてるし、本番イメージ用に合唱曲聴いてるし……。
ポップスってあまり馴染みがない。
ということで、この年の瀬にあたらしい音楽たちと触れ合ってきました。
それを偏愛的に語ろうと思います。
偏愛です、偏愛。性癖丸出しです。
自慢じゃないけど、声に関しての性癖はとても拗れている。
やれ、テレビで年末特番の音楽番組を観て
「音楽番組に出すぎて、疲れてない?喉大丈夫?」
だの……。
「わー、発声崩れてる。お疲れやん。」
だの……。
とりあえず、聴いただけで声や喉の状態、筋肉の動き、空間の使い方まで察知する。
そして、
「!!!今の聴いた!?今の語尾の母音処理、めちゃくちゃエロい!!!」
「あっっ。今の子音の入れ方最高すぎん!?!?」
はい。
これが私の性癖です。
発音フェチです。どちゃくそマイナーです。
ごめんなさい。
合唱を続け、専門知識もある程度身につけた結果、声フェチが拗れました。
許せ♡
さて、そんな拗らせ合唱人が選ぶマイ・ベスト・ミュージック2024はこちら。
10位 ガラクタの思い出/奥華子
2024年12月11日配信
配信限定シングル「ガラクタの思い出」より
社内に流れるラジオから零れるピアノの音に耳を惹かれた。その後に紡がれる柔らかく透き通るその声こそが奥華子さんの魅力。彼女の音楽は人の心をあたためる。
この曲は、2024年12月~2025年1月のNHKラジオ深夜便の「深夜便のうた」に選ばれている。
もうね、あったかいんですよ。心、ぽっかぽかになるんです。じんわーり、言葉が心に広がっていくんです。癒されます。
人が人を想うこと。想い合うこと。そして、それが素敵なことだと改めて感じます。
柔らかくて素朴で素直な彼女の声。
息の流れに抗わず、言葉を紡ぐところに魅力を感じます。こんなに、素直に歌えるのって一種の才能だと思うのですよね。
それでいて、言葉を大切にしている。
シンプルな技術こそ、難しい。
彼女の音楽は、今日も誰かの心を響かせている。
9位 Bling-Bang-Bang-Born/Creepy Nuts
2024年1月7日配信
配信限定シングル「Bling-Bang-Bang-Born」より
今年は、この曲を聴かずにいる方が難しいんじゃないだろうか。
テレビアニメ「マッシュル-MASHLE-神覚者候補選抜試験編」オープニングテーマのこの曲は、今年の流行語大賞にノミネートされるくらい人気である。
最初にこの曲を聴いた時は、どこまでが重ねて録音したかわからないが、えげつないもん歌ってんなぁ、だった。
このスピードで日本語を日本語らしく歌うことの難しさよ。
拍感を感じさせながらも、単語の語頭をはっきりと発音し、歌詞を伝える。
発音が必要な文字と不必要な文字をきちんと区別して歌うことができないと難しい。
しかも、使用される声種が多い。
“鏡よ鏡答えちゃって Who's the best? I'm the best! Oh yeah”のフレーズに特に表れる。
前半の日本語のフレーズは、軽く息を混ぜて柔らかく仕上げる。その後の英語のフレーズで力強い声を張り、己の自信の強さを感じさせる。
さらに、R-指定さんは日本人が苦手とする“L”と“R”の発音の違いをきちんと区別している。若干、巻舌気味ではあるけれど、“R”の発音すごいな~と聴き惚れてしまった。
聴くと自分に自信がつくような。そのままの自分自身でいい、と肯定してくれる。
力強いメロディと裏腹に柔らかい曲だなぁ、と思うのです。
8位 飛花落花/Cocco
2024年1月10日配信
配信限定シングル「飛花落花」より
Coccoさんの曲はいつも心をえぐいくらいに突き刺してくる。いつだって、彼女は本音で舞台に立ち、心で叫んでいるように感じるからだ。
彼女ほど、歌という存在に向き合い、自分の気持ちと向き合い、立ち続けるアーティストは見たことがない。
そんな彼女が歌ったこの曲は、力強い“生”へのメッセージだと感じる。
生きている中で、移ろい、繰り返し、打ちのめされることもある。苦しい。苦しいんだそれは。
同じことをくり返し、悔やみ、自責する。そんな日々に苛まれることもあるんだと思う。
それでも、立ち上がり、生きようと前に1歩を踏み出さずにはいられない。
そんな生き様みたいなものを感じる。
彼女は、本当にフレージングが繊細で……。それは息を呑むほどだ。子音は過剰にいれない。その代わり、ロングトーンに血が通っている。息が流れている。しっかりと伸ばしきり、歌い上げることで曲の生命力をより一層強めている。ひとつひとつの文字に魂を感じる。
彼女の魅力からは、魂からは、目が離せない。
7位 ナハトムジーク/Mrs. GREEN APPLE
2024年1月7日配信
配信限定シングル「ナハトムジーク」より
さすがの高音からスタート!雰囲気はまさしく“夜の音楽”。静かな夜に叫ぶ愛の歌です。
声の使い分けがとっても好きなのですが、この曲で最も聴き惚れるのはこの部分!
“乱した呼吸を整えて ほら”のつくり方が最高すぎて!!!“乱した”のあとにブレス。“呼”のあとにブレス。そして、そのまま“吸を整えて ほら”まで一息。浅いブレス。敢えて、呼吸音を聴かせる。まさしく、“乱した呼吸”!!!!
短時間でブレスをするっていうことは、体内にある息を全部捨てて、新しい息を吸わないといけない。これ、結構難しいんですよ。急ぐが故に、浅いブレスになりすぎて、発声が歪んだりするので。
それを難なくやってみせる大森さんが凄すぎる……。
あと、彼の曲って何回転調したらいいんですかね???毎回、その音域は男声音域じゃないんだよなーと思いながら聴いてます。ナチュラルにファルセットだせるの凄いよなーってなってます。
やっぱり、ブレスコントロールが上手だなぁとしみじみします。すごい。
尚、レコーディングの様子が公式YouTubeアカウントに投稿されています。
曲にかける想いが伝わってくるので、こちらも観ていただけるとより音楽が楽しめるかもしれません!
6位 現下の喝采/高橋優
2024年9月14日配信
配信限定シングル「現下の喝采」より
ここでもう1つだけ、私の性癖をお伝えしましょう。私、変拍子が大好きなんですよね。
4分の5拍子とか4分の7拍子とか。あと、3拍子が大好きなので、4分の3拍子と8分の6拍子が癖に突き刺さります。8分の9拍子とか8分の12拍子とかね、もうテンションMAXです!ほんとに。
そして、この曲は8分の6拍子に該当します。いいですよね!この踊れそうなノリの良い拍子。ちなみに、日本人は3拍子を演奏することは苦手とされています。でも、大好きなんだよなぁ……。
このままでは、ただ性癖だけ書いて終わってしまうので、曲の話を。
この曲は、「Oha!4 NEWS LIVE」のテーマ曲です。ものすごく価値があることをやっているかもしれないのに、当たり前に流れる日常。でも、本当はいい日々を歩いているんだっていうことをもう一度思い出してほしい。そういう気持ちがこの曲に込められています。
彼は、“歌う”よりは“語る”だ。言葉数は多いけれど、拍頭と語頭を捉えながら言葉を並べている。どの文字を強調したら、言葉を歌詞にして、歌詞を歌にして伝えられるかがわかっているのだと思う。そして、そこがわかっているからこそ、音楽的な流れを遮ることなくスラスラと耳に入ってくる歌になっているのだ。
彼の歌は今日も誰かの背中を押す。
5位 夜の隨/七海ひろき
2024年7月3日配信
配信限定シングル「夜の隨」より
社内に流れるラジオで出会ったこの曲はテレビアニメ「戦国妖狐 千魔混沌編」エンディングテーマだ。尚、私はこのアニメは未履修である。
七海ひろきさんは、宝塚歌劇団宙組、星組3番手として活躍されていた。
今は、舞台をメインにドラマや声優業もされているアーティストだ。
私が彼女を知ったのは、今から2年前。舞台刀剣乱舞にて細川ガラシャ役を演じると聞いた時。
宝塚ファンの友人と刀剣乱舞ファンの友人は歓喜していた。歓喜を通り越して発狂だった。
私としても、あの「散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ」と詠み、夫のみを愛し続けた細川ガラシャを演じることに関心をもったのだった。
さて、アニメ未履修の私が曲解釈などおこがましいにもほどがあるけれど、この曲を一言で表すと「心の葛藤」と「アニメヒロイン“月湖”への想い」である。
ここの月は、月湖のことだろう。
彼女への想いは憧れなのか……それとも……と歌い始め、あなた(月湖)のためなら自分は変われる!と強い意志を感じる。
その強い意志は、七海さんの歌い方にも表れる。
“君だけが知る 僕との約束の日々へ”というフレーズは1番、ラスサビともに出てくるが、ここではラスサビの方に注目しよう。
“約束”のY子音への息の勢い。“S”子音の鋭さ。
そこに、七海さんの、アニメ主人公千夜の“約束”への思いが結集している。
心の葛藤とヒロインへの想い。
この2つの先が気になる人は、是非アニメを履修して欲しい。
私も履修しよう……。
4位 楽園の地図/backnumber
2024年9月11日発売
22ndシングル「新しい恋人達に」より
爽やかなラブソングは幸せの味。
backnumber 清水さんが綴る歌詞には、キュンキュンしっぱなしです!
この曲は、恋人たちの一瞬を切り取った甘酸っぱいラブソング。
今、自分たちがどのフェーズにいるのかなんて関係ない。君の笑顔が多い方へ行けば、僕も一緒に笑顔になれる。さいっこうのハッピーソングです!
清水さんも歌いグセが結構あって。その中で、語尾にくるe母音がかなり特徴的なんですよね!“君は飛び出して”と“独特なメロディーで”と“逆に雷鳴っちゃってるけどね”のすべてのe母音は緻密に歌い分けられている。
“君は飛び出して”のフレーズは、音を下降させつつ、柔らかく歌い上げている。
その後の“独特なメロディーで”は、短く真っ直ぐのばしつつ、ビブラートを若干効かせてさわやかに。
“逆にカミナリ鳴っちゃってるけどね”は、長く真っ直ぐ。語りかけるような呆れているような。そんな感情を読み取ることができます。
母音の歌い分けは、音楽性を高めるにあたって、とても大事な構成要素なのです。たくさんの歌い分けができる清水さんには、頭が上がりません。
素敵なラブソングの裏に、技術あり。隅々まで、堪能して頂けると嬉しいです!
3位 僕らはいきものだから/緑黄色社会
2024年9月20日配信
配信限定シングル「僕らはいきものだから」より
今年の合唱人はみな、この曲に注目していたでしょう。
この曲は、第91回NHK全国学校音楽コンクール 中学校の部の課題曲として製作されたものだ。
歌詞がとてもいいのに加えて、緑黄色社会のボーカル 長屋晴子さんの歌い方が合わさって、心に染み渡る。
“このままがいい”と変わることへの恐怖心や戸惑いを指し示すフレーズ。
弱音からはじまり、同じ言葉を繰り返すタイミングで声を空間に広げていく。
そこに、恐怖、戸惑いにプラスして心の叫びが表れているのだと思う。
その後の落ちサビで“降り注ぐ哀しみがある”の“あ”。ここがポイント。はっきりめにa母音を発音することで、悲しみの存在をはっきりさせる。そして、つぎのフレーズの“でもね”に繋いでいくのだ。希望のフレーズへ。
あ~~、ずるいな、と思う。本当に。だって、そんなの、希望を感じるに決まっているじゃないか!!!
中学生に限らず、いろんな人に聴いて欲しい曲です。そっと、背中を押されたい貴方へこの曲を捧げます。
2位 Ultra Snazzy Bluesu/鈴木雅之
2024年3月27日発売
アルバム「Snazzy」より
私は、このグラサン男性に恋をしている。
1975年シャネルズとしてデビュー。後に、ラッツ&スターとして数々の名曲を歌い上げてきました。
さらに、テレビアニメ「かぐや様は告らせたい」シリーズのテーマソングを担当し、“アニソン界の永遠の大型新人”と呼ばれるように。
そんな彼が歌い上げるこの曲は、色気たっぷりのブルース。思わずニヤリ、とさせられます。
母音の扱いが上手。序盤にo母音から始まるフレーズがあります。“俺らしさ”と“教えられた”の部分。ここの歌いわけが凄まじい。
“俺らしさ”の方では、声の方向を歌い手側に向け、自分のことを指し示すように歌いあげています。“教えられた”の部分は、がなりを入れて「どうして教えられたのか?」という教えられたことに対する感情を指し示すようです。
その技術力の高さに唸らさせらます。
そして、タイトル回収の“Ultra Snazzy Bluesu”のフレーズ!!もう、ね。
最大級にかっこいい!!彼の魅力が詰まっています。
さらにさらに、作詞は鈴木雅之さんとGReeeeN(現GRe4N BOYZ)のHIDEさん。
ギターをB’zの松本孝弘さんが担当する豪華さ!
良い音楽家が揃うとより良いものが出来上がるのだなぁ……としみじみ思いました。
シャレオツなブルース!最高!!
1位 Breath/望海風斗
2024年3月20日配信
配信限定シングル「Breath」より
私が表現者として最も愛し、尊敬し、憧れる人。
それが、“望海風斗”という女性だ。
宝塚歌劇団花組3番手、そして雪組トップスターとして君臨した素晴らしい男役。
退団後は、舞台をメインにコンサートやラジオ番組などでも活躍している。
所作、佇まいから気品溢れる彼女のこの曲に私のマイ・ベスト・ミュージック2024の1位を捧げたいと思います。
この曲は、アンジェラ・アキさんが作詞作曲をされています。
望海さんの第2の故郷・宝塚で起こった様々なこと(=パワハラ問題等)への想いをアンジェラ・アキさんに手紙で伝え、曲が出来上がりました。
優しい音色のピアノと弦からはじまる前奏は、風のようにそよぎ、あたたかみを感じる。
そして、歌い出し。
“U”のハッキリとした発音、その後の“S”の子音……どちらも仄暗い中で日が昇るのを想像させます。
そして、ロングトーンで声が伸びる伸びる!
“窓越し”の単語そのままに声が窓から外へと伸びるような錯覚に陥ります。……はぁ、最高。
あの、「薄暗い窓越しで」という出だしの歌詞7文字に対してこの熱量で語ってしまうくらい、彼女は凄いんです。本当に。
そして、歌詞も心にグッと刺さります。
生きていることが奇跡。
生きていなければ、何も出来ない。
生きて、自分を愛したらいい。
……言われても、なかなかできるもんじゃないですよね。
自分の心に寄り添ってあげること。
自分の感情を認めてあげること。
自分のやりたいことをやること。
自分自身を丁寧に扱うことが、自分を愛することに繋がっていくのかもしれません。
私も、まだまだ修行中の身です。
ふと、自分を見失ってしまった時に。
自分がどうしたいのかわからなくなってしまった時に。
聴き返したいな、と思わせてくれる素敵な曲でした。
こうやって見返してみると、メッセージ性の高いシンプルな曲が好きなようです。自分の好みの傾向がわかるのって面白いですよね!
また、今回はがっつり性癖を語って、感性を語ってみました。私が感性を言語化するのは、自分の血肉とし、表現に落とし込むためにしているのかもしれないと思いました。
感じとったものをそのまま表現することもできますが、再現性をもたせるには自分の身体に染み渡らせる必要性があります。そのために言語化をし、技術を認識をしてインプットしているのかも……と感じました。私の場合、ですが。
さてさて、この楽しい企画はUさんのこちらの企画ですよー。
まだ間に合います!クリスマスに向けて、みんなで振り返りましょ!
来年はどんな素晴らしい楽曲に出会えるのかな。
今から待ち遠しく思うばかりです。