見出し画像

髪型は自分を貫き通す証

今日は赤色にしようかな。

3ヶ月に1回の頻度で美容院に行く。
自分のメンテナンス、というと少し大袈裟だけどそんな気分。

決まった美容院で、決まったお姉さんにいつもお願いしていた。
この街にはじめて来た時からの付き合いなので、もう4年。
長いもんだ。

ご挨拶をして、今日のオーダー。
「ツーブロックにしたいんです。刈り上げをして。」


刈り上げ。
女性で刈り上げるのは少し珍しいのかもしれない。
女性らしいとは言えないのかもしれない。
そもそも、女性らしさって何?

よくわからないけれど、守られるだけの存在になるの好きじゃない。
“女の子だって暴れたい!”は初代プリキュアのコンセプト。
暴れたいわけじゃないけど、自分の足で立ちたかった。
可愛くてかっこよく生きていたい。


「後ろはこれくらいの長さで。じゃないとはねちゃって……。」
実際にお姉さんに髪を触ってもらいながら、髪型を決めていく。

「髪色は赤にしたいんです。」
お姉さんはカラー見本を携え、説明してくれる。
こっちは、ガッツリ赤で……。

ガッツリ赤は困るな、と思った。
来週には会社のパーティが迫っているし。
お偉い人の目に赤髪を晒すのは、いくらユルユル弊社でもまずい。

「こっちの赤だと暗めでいいかもしれないです。
ワインレッドみたいな。」
「じゃあ、それで。」

すんなりと決まったオーダーに安堵しながら、カットの準備に入った。


「会えてよかったです。私、来月から休むので。」

休む?と訊き返すと、どうやら産休に入るらしい。
とても、めでたい。

この4年の間に彼女は結婚し、妊娠した。
人の人生を垣間見ているようで、ちょっと面白い。

会話もそこそこに、カットされていく。
沈黙にハサミの音だけが響く。
この時間がとても心地よかった。

周りの会話やちょっとお洒落なジャズが流れているが、あまり気にならない。
お姉さんと自分の2人だけの世界だった。


やがて、カラーに移る。
落ちた髪の毛をお姉さんが箒でまとめる。
その髪の毛の量に、毎回驚きつつ寂しさを感じた。

カラー剤を塗る工程はひんやりとして、少しだけ苦手だ。
早く、終わらないかなぁ。
大人しく塗られていると、少し眠気を感じた。
このまま眠ってしまいそうだった。

ウトウトした身にお姉さんの洗髪は追い打ちだった。
心地よい。
シャンプーとトリートメントをしてもらう。
なんだか、青りんごみたいな爽やかな香りがした。

ドライヤーしてもらって、セットもしてもらって。
鏡の中にいたのは、スッキリとベリーショートになった私だった。

似合いますね!というお姉さんの声に安堵する。
お姉さんは嘘をつかない。


ちょっとだけ赤髪のベリーショート。
女性らしいとは離れてしまったのかもしれない。
けれど、“自分を貫き通す”という私の小さな志を表していた。

太陽の光に赤色を輝かせながら、次の予定に向かった。





いいなと思ったら応援しよう!