見出し画像

まろやかな白い季節

玄関の扉を開けて外に出ると、
秋の風がさらりと肌を撫でていった。

夏の空も、緑も、飛んで行く白球も、
青く、碧く、色濃く。
今年も、もぎたての果実のような瑞々しい絵の具を
記憶に落としていった。

秋の風を感じると、
木の葉は退色を始め、
空は高さを増して薄い雲を広げていく。

太陽が乾いた地面に淡い陽だまりをつくると、
世界は一転して、まろやかな白色をまとい出す。

本格的な秋を迎える前の、ほんのわずかな時間。
「ほぉ」と吐いた、ため息で染まったような季節。

歩いていると、柔らかな繭糸に触れている心地がして、
夏の間に強烈なエネルギーを浴び続けた身体から力が抜けるような、
疲れを労わる必要があると気づかせてくれるような、
そんな優しさを感じた。

静かなため息は、何かを嘆いているわけでもなく。
ましてや、落ち込んでいるわけでもなく。

ただ次の新しい空気を吸い込むために吐き出された、白い息吹。

ほてった大地を冷ますように、風はさらりと流れていく。

白色を帯びた景色を、バス停からぼんやりと眺めながら、
私は次の季節がやって来るを待っている。





暫くご無沙汰しておりました。
ご心配くださった皆さま、温かいお言葉をありがとうございます☺️
おかげさまで、家族は無事に回復しました。
今は夏に働き過ぎたPCが不調を訴えていますが、何とか労わって回復を願おうと思います…(笑)

暫く書くこと離れていたので、リハビリをしながら。
また、ゆるりとよろしくお願いします🍀

 みなとせ はる


※ヘッダーは、kaede.n5557さんの作品をお借りしました。


いいなと思ったら応援しよう!

みなとせ はる
いつも応援ありがとうございます🌸 いただいたサポートは、今後の活動に役立てていきます。 現在の目標は、「小説を冊子にしてネット上で小説を読む機会の少ない方々に知ってもらう機会を作る!」ということです。 ☆アイコンイラストは、秋月林檎さんの作品です。