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『ひまわり』(for 『マスク文庫』)

銀座のカフェで、久しぶりの君とのデート。
水玉のワンピースを着て、クリームソーダを頼む君。
「今日も暑いね」なんて言いながら首元を扇ぐけれど、ポニーテールの後れ毛は首筋に張りついたまま。

君がアイスクリームをスプーンで掬おうとすると、緑色のジュースがシュワシュワと賑やかに踊りだす。
好きな歌を口ずさむ君みたいに、軽やかだ。
バニラアイスを頬張ると、目を閉じて、冷たい甘さが口の中で溶けていく幸せを、じっくりと味わっている。

ふと、君がこちらを見た。
「なに読んでるの?」
「夏目漱石の『こころ』」
「ふーん。さっきから、ページが進んでないよ」
「そんなことないよ」
「誕生日プレゼント、今あげてもいい?」
「プレゼントなんて、いいのに」

「はい」
君が僕にくれたのは、三本のひまわりの花束。
「これからも、私の『ひまわり』でいてね」
太陽のように笑う君。
──しまった。愛の告白を、先越されてしまった。

(完)

※掌編小説『ひまわり』は、EATALK MASK様の『マスク文庫』のために描き下ろした小説です。

 ヘッダーの美しいイラストは、EATALKMASK様が制作された作品で、完成した『マスク文庫』の装丁は、心ときめくほど可愛くて素敵です✨
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ヘッダーのイラスト及び『マスク文庫』は、EATALK MASK様のオリジナル作品です。
この記事で使用したヘッダーのイラストは、EATALK MASK様の許可を得て使用しております。


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