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あらすじ 文明を失った世界への旅立ち。 誰かの気配をひたすらに探す記録。 瓦礫と樹木だけの世界。 鳥も昆虫も動物もいないこの場所で、人間は私一人。 ともかく暮らしをしていれば、まだ見ぬ誰かにどこかで出会すんだろう。 いつかの記憶と、今ここの記録と。 これをあなたが読んでいるのならば、いつか私とどこかで出会ってほしい。 ……ほら、また音楽が聞こえる。 あなたもどこかでこれを聞いている? いつともどこともわからない世界。 誰かを探しながら、文明の頃を懐古する。 ゆる
土砂降りである。土砂降りではあるが、そこは見慣れた教室であった。どしゃどしゃと雨が降る中、A氏の周りには人だかりができている。学友たちがA氏を取り囲んで何を話しているかと思えば、先ほど上演された演劇についてである。 学友たちにも教師にも評判の舞台は、先の出し物の最後に上演されたもので、それはA氏の一人で作り上げた作品であった。演出も監督も主演もすべてA氏であるというそれは、当座の話題をひとところに攫っている。 皆は口々にそれを褒め称える。どこどこの演出がよろしいであるだ