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みちのく潮風トレイルは僕の人生にスパイスを加えた
僕はゲストハウスという宿を個人で営んでいる。
はじめは観光で来る人がほとんどだったけど、コロナ禍になってから面白い旅人が来るようになった。
それは、みちのく潮風トレイルという長距離歩き旅をしている人たちだ。
みちのく潮風トレイルとは、青森県八戸から福島県相馬までの4県29市町村にまたがる約1000kmのロングトレイル。
東日本大震災をきっかけに環境省が進めた取り組みで、NPO法人みちのくトレイルクラブが管理運営を行う。
震災後、持続可能な地域づくりを目指すと共に豊かな自然と地域の暮らしを未来に引き継ぐため「グリーン復興プロジェクト」を策定し、取り組みを進めてきました。その取り組みのひとつが、「みちのく潮風トレイル」です。
トレイルを歩く人たちのことをハイカーと呼び、約1000kmの道のりを1〜2ヶ月かけて一気に歩くことをスルーハイクと呼んだり、部分的に歩くことをセクションハイクと呼んだりもする。
(みちのく潮風トレイルに限らずだが)
みちのく潮風トレイルのハイカーが初めて僕のゲストハウスみなと丸を訪れたのは、2021年5月のこと。
Googleマップで見つけてくれたのだろうか、「みちのく潮風トレイルという1000kmの道を歩いています」と当日電話予約が入った。
…は?1000km?歩いて?
それまでトレイルの存在をよく知らなかった僕は、意味がわからなかった。
しかしそこから何人か立て続けに同じようなことをしている人が宿を訪れ、興味関心を持った僕は全線の統括本部を名取に構えるみちのくトレイルクラブを訪ねた。
そこからは、ありがたいことにハイカーからの認知も高まりたくさんのスルーハイカーやセクションハイカーが泊まってくれている。
特にハイカーというのは一人でこの道を歩いてくる人がほとんどで、一人旅をこよなく愛するみなと丸としては最高のゲストの一人だ。
僕はその約1000kmにもおよぶ道のりにおいて、自然や地域を楽しみながら、そしてじっくり自分と向き合いながら、時に地域の人とのふれあいも楽しみながら一歩一歩進んでいるザ・旅人たちに強烈に惹かれてしまったのだ。
おかげで、長距離を歩くのなんて苦痛でしかなかった僕が、早く目的地に付きたくて仕方のない僕が、今では彼らと同じ道のりをセクションハイクという形で歩き始めてしまっている。
まだ石巻以南の約100〜200km?(それもすべて日帰りで)ほどしか歩き終えていないが、歩くことが楽しくなってしまった。
車や電車ならあっという間に行けてしまう距離を、自分の足で歩くというのはなかなか気持ちがいい。
しかも、歩くスピードでしか見えない世界がそこかしこに広がっているのだ。
雄大な自然はもちろんのこと、鳥が羽ばたく瞬間がすごく美しいとか、普段食べているお米がこんなところでも作られているんだとか、ご近所さん同士で井戸端会議してて微笑ましいとか、挙げればキリがないくらい。
そして何より、同じ道のりを歩いたという共通項だけで話題が広がり、あの景色は素晴らしかったとか、あの山道はキツかったとか、あの長い舗装路歩きは退屈だったとか、違う時間軸で経験したことを今まさに共有できることがなんとも楽しいじゃないか。
いや、なんか感動を表現しきれていない気がするが、なんか色んな人と人生の一部を共有できるものが見つかるということが素晴らしいことなんじゃないかと思うのだ。
僕はなかなかスルーハイクとまではいかないが、これからも少しずつハイカーたちと共有できる道を増やしていきたい。
ということで、今日もその一部である福島県新地町エリアを歩いてきた。
鹿狼山という400mくらいの山を登ったら、想像してたよりハードで驚いた。
スルーハイカーはこれを登ったあとテントで寝泊まりして、また早朝から歩き始めるのだ。
なんて人たちだ。
この歳になってみちのく潮風トレイルを歩くという楽しみを知ってしまった。
日本には他にもロングトレイルがあって、アメリカをはじめ世界にはさらに歴史の深いロングトレイルがある。
うーん、興味は尽きない。
というわけで、明日も心穏やかな1日を。