共に、歩く
歩くことが大好きな祖母が、歩けなくなった。
年のせいか、小さな段差ですぐにつまずくようになり、大転倒して骨折したこともある。
だれよりもアクティブだった彼女は、自分の足で行きたいところに行けなくなってしまった。
そんな4月。
祖母も含め、家族みんなで京都旅行をすることになった。
京都に憧れていた彼女は、この旅をとても楽しみにしていた。
祖母が乗った車いすを押しながら、お寺を巡る。
初めての土地に、彼女は少女のようにはしゃぐ。
そんな祖母が言った。
「満開の桜が見たい」
ほとんどの桜が散ってしまっているなか、偶然見つけた仁和寺。
雨で足場も悪いなか、祖母に桜を見せるために必死で車いすを押す。
やっとたどり着いた場所は、御室桜が満開に咲き誇っていた。
嬉しそうに手をたたく祖母を見て、私は思った。
私も、かつての彼女のように、いろんなところに行って、いろんなものを見よう。
そして全部、彼女に話してあげよう。