竹は酒　どぶろく改め

むかしなあ　湊でもさつき始まっと　何でかんでどぶろく作ったもんだ
　苗取様(なえとりさま)は　雨が降っても槍が降っても飯前から苗代(なあしろ※)さ入って苗取りしんなんねえ　苗代(なあしろ※)は深ぐって体も冷えっから　何でかんで朝飯前から酒飲まねえどしょうがねがったと
　そんじえ五月にはどぶろく作ってただ
　んだげんじょあの頃はどぶろくつくってなんねべした
　んじゃから村さ酒造官(しゅぞうかん)入ったつうどな　一番早く気付いた人が太鼓ぶっだど　ドンドコ　 ドンドコ　ドンドコ　 ドンドコとな　
　そうすっとみんな村の人が酒造官(しゅぞうかん)が来たぞつうわけで　どぶろく隠したんだと　
　酒造官(しゅぞうかん)がある家さ行ったど　

「ばあさん酒つくったが」　

「うん作ってあっから」
「はあそんじぇは俺たちのどこ案内しっせ　どこにあんだ」

「はい、はい、はい、はい、」なんて外さ出たど　
　酒造官(しゅぞうかん)は「はて小屋さでも作っておくのかな」と思ったが、ばあさま小屋でねえ　外の道路さ出たど
　「どこさ」って聞けば「こっっちさ」なんてばあ様行くから、酒造官(しゅぞうかん)は「このばあ様　おら達んどこ酒のあっとこさ連れて行ったら、後で嫁と息子に怒られんべ」なんて思いながらくっついていったど
　そしたらずーっと行った畑の先の竹林さ連れて行って「ここだ」って言うんだど
　「どこにあんだよ」
　「これ全部そうよ」
　「ばあさんこれ竹だべした」
　「うん竹だ」
　「竹でねえ酒だから」

　「あー酒かよ　酒かよ　おれ勘違えして　ほんとにどうも悪うございやした」って騒いでいるそのうち　嫁と息子どぶろくかくしたんだと
　んじゃから「年寄り　年寄り」ってばかにすんなよ　

年寄りは機転きかせんだからって　よくいわっちだの