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山を歩いたり、石を掘ったりしています

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最近の記事

オンボロバイクでパミールへ③【修理編】

タジキスタン北部の古物市で中古のバイクを買って旅した日の話です。 購入編はこちら 旅編はこちら 翌日、事態は急変した 山間の日干し煉瓦の家並みが美しい村の近くで、彼が突然バイクを止めた 「タイヤがパンクしたみたい」 私達は修理道具すら持っていないし、そもそも直し方も知らない 偶然にも数メートル先に車の修理工房があり、もしかしてこのおじさんが釘置いた?とさえ疑ったが、彼にはどうすることもできなかった 仕方なくタクシーを拾ってDushanbeに向かうことにした タク

    • オンボロバイクでパミールへ②【旅編】

      タジキスタン北部の古物市で中古のバイクを買って旅した日の話です。購入編はこちら 翌朝、宿のオーナーに見送られ、私達のバイク旅が開始した Kujand郊外に出ると、景色は一変し、青草の広がる農地に出た ここ一帯は肥沃なフェルガナ盆地に位置し、中央アジアの食生活を支えている ロバと馬と車がたまに通るだけののどかな道を走っていると、シャシリクの香ばしい香りがどこからか漂ってきた 「お腹すいたね…もしかして、レストランかな?」 小さな看板を見つけたので脇道に入り、匂いの元

      • オンボロバイクでパミールへ①【購入編】

        その日、国境を越えてタジキスタン北部の街Khujandにやってきた 乾いた草原を抜け、ヒッチハイクとバスを乗り継ぐと、噴水と銅像、ライトアップと国旗だらけのきらびやかな街が広がっていた 想像していた荒涼な大地とはかけ離れていた それもそのはず、2500年前にアレキサンダー大王によって設立されたKhujandは、シルクロードの交易所として栄え、その立地条件から交易、産業、農業の重要な中心地へと発展してきたのだ キルギスから目的地パミール高原に入るには、Oshから南下する

        • キルギスの山を2600km歩いてみようとしました【準備編】

          「次の夏は、キルギスを横断してみようか」 その話が持ち上がったのは2020年の12月 バルカン半島のVia dinaricaというトレイルを1500km歩く計画を立てたものの、雨が多くコロナも相まって、わずか20%しか歩けなかった2ヶ月後のことだった 【準備編】 さて、私は餅食べたさに年明け早々緊急帰国し、私達は キルギス:日本 で約3ヶ月遠距離にあった 齷齪働く私を他所に、彼は着々と準備を進めていた 「全部で2600kmになりそうだよ」 そう報告があったのは1月後

        • オンボロバイクでパミールへ③【修理編】

        • オンボロバイクでパミールへ②【旅編】

        • オンボロバイクでパミールへ①【購入編】

        • キルギスの山を2600km歩いてみようとしました【準備編】

          キルギスの国境許可について

          さて、日本語の情報で一切国境許可(Border permit)に触れる記事がないので、旅行者や登山者がうっかり逮捕勾留されてしまわないように記事にまとめてみようと思います 国境許可(Border permit)とは、ある特定の地域を通る際に必要となる許可証を指します キルギスは隣国との関係もいまだ不安定な状態である上、ウズベキスタンの飛び地であるシャヒマルダン(Shakhimardan)やソフ(Sokh)、タジキスタンの飛び地であるヴォルフ(Vorukh)などもあります

          キルギスの国境許可について

          その山で何を食べよう

          初めて山での食事に感銘を受けたのは、西表島で沢登りをしたとき 20代前半でひとりで民宿を訪れたわたしは、宿の常連のおじさんたちに可愛がられた 「明日沢登りに行くけど、一緒に行く?」 自分の両親よりも年上のおじさん達に着いていくと、彼らはずんずん森をかき分け、大きな岩を登っていく 「毎年来てるから、自分で道を開拓してるんだよ。ここはガイドツアーでは来ない場所だよ」 と言いながら、山菜を摘んでいた 山頂に着くと、お湯を沸かし、バッグを漁り始めた 「これ、昨晩打ったん

          その山で何を食べよう

          トルコのロングトレイル"Lycian way"について

          Lycian wayは、トルコ南部のFethiyeからAntalyaまで、リキア人の史跡やローマ街道を繋ぐ540kmのトレイルです。 トルコ初のロングトレイルであり、トルコの古い道路の一部を特定して保護するために作られました。 起伏の激しい海岸沿いから、棘々した植物の生い茂る赤土の大地、標高1700mの松林まで、様々な表情を楽しむことができます。 時には町で、時には古くから続く村で、時にはいまだ続く放牧の地で、それぞれの文化を学んでみてはいかがでしょうか。 私達はこの

          トルコのロングトレイル"Lycian way"について

          灰色の旅【Lycian way13】

          目覚めると、テントの外にロバがいた。 正しくは、テントから3m離れたところに。 嬉しくなって、すぐにテントから出た。 今日の予定は、テントも荷物も置いたまま、Kabakまで水を汲みに行くこと。 あわよくば、食料を確保したい。次の町までもだいぶ距離がある。 朝食を摂って、4km先の町に向かうことにした。 「ヌテラも来る?」 一応訊いてみると、一定距離を保ちつつ、ついてきた。 登り坂では助走をつけて登る。 そのため、勢いよく登りきったあと、私たちに追い付いてしま

          灰色の旅【Lycian way13】

          命名、ヌテラ【Lycian way12】

          よく乾いた朝だった。 テントを片付け、かまどを崩し、灰を撒き、痕跡を残さずその場を去る。 途中通りかかったファイヤーリングの中から、煤だらけの缶を拾う。 ここでキャンプするのはハイカーだろう。同じ立場の人がこうして自然を汚す姿を見るのはとても辛い。 また歩き難い道を下り続ける。 標高200mまで一気に下ると、あとはビーチまで平坦な道を歩くだけ…と思いきや、海沿いの道は岩場が多く、起伏も激しいため、たった2kmでもへとへとだった。 目指していたのはParadise

          命名、ヌテラ【Lycian way12】

          根を張る【Lycian way11】

          目覚めると、犬がいない。 書き忘れたが、昨日いちにち、一匹の犬が私達のあとを追っていたのだ。 彼はたしか、リゾートホテルの赤いTシャツのおじさんの犬だったはずなのだが、いつの間にか私達の後を着けることを決めたらしい。 しかし、さすがに昨夜の雨には耐えられなかったのだろう。 家にでも帰ったのかな。 そもそも、家はあるのかな。 トルコの犬の素性は本当に分からない。 Kabakからは、2通りの道がある。  海のコースと、山のコース。 地図上にはビューポイントがマー

          根を張る【Lycian way11】

          パンが欲しい【Lycian way10】

          目覚めると、晴れていた。 コテージからの眺めは、想像以上に美しかった。 レモンバームを摘んで、オーナーにお礼を告げた。 海へ下り、岩場でサンドイッチを作った。 ありがたい事に、オーナーはパンまで分けてくれたのだ。 具沢山なので、各々好きなサンドイッチを作った。 私は、白いサンドイッチを作った。 マッシュポテトとカリフラワーとローズマリーとオリーブオイルと塩。 友人は、緑色のサンドイッチを。 マッシュポテトとカリフラワーとグリーンペッパー、バジル、ジョージアの

          パンが欲しい【Lycian way10】

          カリフラワーとマッシュポテト【Lycian way9】

          朝、バルコニーのソファで目覚めた。 雨の夜は、やっぱり眠りが深い。 目の前には、Butterfly Valley。 昨日は雨で霞んで見えなかったが、深い渓谷の底であおい海が凪いでいる。 灰色の空に光が差していた。 部屋に戻ると、バックパックから靴まで、ほとんど乾いていた。 友人が、拾ったレモンでホットレモネードを作ってくれた。 砂糖を入れても入れても、甘さが足りない。 バルコニーで朝食をとっていると、目の前の渓谷にふたえの虹がかかった。 歩き始めると、足元は

          カリフラワーとマッシュポテト【Lycian way9】

          雷と渓谷【Lycian way8】

          朝一でキッチンへ向かう。 オープンスペースのキッチンは、天井が高くよく風が抜ける。 朝露に濡れたブーゲンビリアが、朝陽に照らされ白く映っていた。 誰にも食べられずに熟れすぎたオレンジが、足元に転がっている。 昨夜なにも食べなかったから、腹ぺこだ。 Kasで買った栗を煎る。 ジョージア南部の山では天然栗をたくさん拾って食べたが、その栗があまりに小さすぎて(1cmぐらい)栗を生まれて初めて食す友人を失望させていた。 トルコの栗は日本の栗と同じでふっくらしていて、名誉

          雷と渓谷【Lycian way8】

          バクラバと雨【Lycian way7】

          すごい尿意で目覚めた。 外は小雨。 トイレに行かないとと思いつつ、億劫で外に出られない。 天気予報やルートを確認したりしながら、尿意を我慢する。 限界に達した頃、用を足しにテントを出た。 雨は降ったり止んだりしながらも、遠ざかる気配はない。 向こう一週間は、雨予報。 Patara beachは全長20kmにも及ぶ。 最低でも2,3日は村を通らないルートになりそうだった。 つまり、びしょ濡れになっても、宿に泊まれず、濡れたテントの中で、濡れたまま過ごさなければ

          バクラバと雨【Lycian way7】

          野生のオリーブでオリーブオイルを作る【Lycian way6】

          ウィスキーと別れ、KasからバスでPatara beachを目指す Patara beachはウミガメの産卵地として有名な、美しい白い砂浜だ 乗り換えが必要だと思い乗り込んだバスだが、Patara beach付近まで行くという事で、直接目的地を目指す 英語を話す、とても気さくな運転手だった 「手前に遺跡があるから、通常だと入場料がかかる。でも、僕の家まで行けば入場料払わずにPatara beachまで歩けるよ」 と、彼の家の前まで乗せていってもらうことにした •

          野生のオリーブでオリーブオイルを作る【Lycian way6】

          ウィスキーとふたたび【Lycian way5】

          その朝、ウィスキーに再会する夢で目覚めた。 バスの時刻を確かめようと、丘の下の中心街へ向かう。 道路を渡ると、前方から黄土色の物体がこちらに向かって歩いてくる。 ウィスキーだ。 昨日、何度も似た犬を見間違った。 でも、あれは、確実にウィスキーだ。 彼は、私たちを見つけて、こちらに向かってきてくれたのだ。 ウィスキー、昨日はごめんね。 込み上げる思いを抑え、撫で回した。 そして私たちはふたたび、共に歩きはじめた。 私たちは、ウィスキーにあげる最後の食事につい

          ウィスキーとふたたび【Lycian way5】