売上の上げ方 〜売上を上げられる店長の情報戦〜

一部上場アパレル小売企業で店舗営業という立場で、沢山のお店の売上改善・指導をしてきた経験から、お店の売上の上げ方をつらつら書いていきます。
所属してたブランドは約140店舗あり、一番と多い時で30店舗の売上管理をしてました。

今回は店舗も情報戦であるということについて書きます。ベースはこれができる店長がすごい!というふうに書いてますが、店長じゃ無くてもできることなので、誰でも実践して欲しい内容です!

○店舗も情報戦

店舗で働いていると、どうしても自店舗が良いのか悪いのかを前年比や予算比など、自店舗での基準でしか見れなくなります。もちろん、その基準で見ることも大切な要素の一つですが、視野が狭い状態です。

売上が取れない店舗ほど、全ては自分のお店が悪いので、なにが悪いのかを自店舗の中だけで探します。そうなると、比較基準がないため分析(分けて比べる)ができません。だから、すべて定性的に、『このマネキンが可愛くない』、『接客レベルが悪い』などに行きついて、それもどう悪いのか、変えたらどうなるのか仮説も立てられないまま博打運営が続きます。根拠がないため再現性もなく、仮説もなく、分析ができてないままの打ち手なので成功確率が低い上に検証もできません。それにもかかわらず、たまにやったことが博打で当たってしまうので、このやり方でいいような気もしてしまうという状態になります。

自分が140店舗近くを持つブランドに所属していて、8〜9割のお店がこのレベルの運営だったと思います。その中で自分が店舗の売上を上げる店舗営業という立場で店長に口すっぱく言っていたのが、

・情報を制すること

・情報からギャップを見つけること

・そのギャップからさらに良くする仮説を見つけること

情報を制するとは、分析をするために、自店舗以外の情報を集めることです。上述した通り、店舗はすべて自店舗内での比較に目が行きがちです。
店舗が取るべき自店舗以外の情報として挙げられるものを紹介します。

・同ブランド他店舗

ここまではできる店長も結構いる要素なんですが、単純にブランド全体の売れ筋は何なのか?を探ることです。基本的にはランキングなどが可視化されていると思うので、それをしっかり見て、自分の店舗とのギャップを見るべきです。

ここでできる店長とできない店長の差が出るのですが、この分析をする時になぜ、全店売れてるものがうちで売れないのか?のギャップの仮説を立てられる店長は優秀な店長です。その仮説検証を繰り返すと、同じような商品が来年入ってきた時に最適解を出せます。

また、さらに優秀な店長は、自ら情報を取りに行きます。例えば全店で一番売れてる品番を一番売っている店舗が可視化されているのであれば、地域関係無く、電話して売り方のヒアリングまでします。または、それをしっかり把握した上で、本社として情報を知っているであろう営業に『なんであのお店があんなに売ってるのか?』と聞いてきます。

逆に売上を上げれない店長は、全店で一番売れてる品番が自店で売れてなくても、『うちのターゲットと違う、うちのお客さまにはうけない』で終わらせます。全店で一番売れている商品とはつまり、『場所問わず一定の人に高い確率で気に入ってもらえる商品』なんです。それを理解していません。

・館内店舗

アパレルは館に何店舗も競合になり得る店舗があります。どこで何が売れてるのか?直接店長などの仲良くなって情報収集できる店長はめちゃくちゃ強いです。売上が取れる店長は売れてる店舗の情報から、自店舗に今すぐ落とし込める内容を思考して実施できます。もちろん他ブランドと商品は一緒ではありませんが、結局取り合ってるのってその館に来てるお客様でしかないんです。だから他のお店が売れてるものに近いものがあれば、訴求をテストしてみるべきだし、一つそういう要素を知ってるか知らないかで、手数がぜんぜん変わります。

もし、他店舗に直接聞きに行くのができないという場合は、マネキンは何着せてるか?お客様は何を見てるのか?レジで何買ってるのか?とかの観察だけでもいいと思います。

個人的には混雑時のZARAのフィッティングの行列がおすすめです。フィッティングに入るということは購買意思が強い商品なので、売れやすい商品群の可能性が高いです。ZARAである理由は人が多いので行列になりやすいのと、服のバラエティが多彩だからです。

・館の営業

館の営業とのコミュニケーションがうまい店長も、売上をめちゃくちゃあげる店長の要素です。館の営業さんって、館のことは基本的になんでも知ってるんですよね。どこが売れてるとかも把握してるので、店舗に直接聞けない人は、ここを押さえてもいいかもしれません。

特に館の営業と関わる上で重要なのが、来館者特性や人数に関してです。これらは館の人でしか基本測れません。来館者数は前週比何人だったのか?館全体の衣料品前年比は何%なのか?など、館自体のコンデイションは誰よりも知ってます。事前情報として館のコンディションは知っておいた方がいいので、館営業とは仲良くした方がいいです。

館コンディションを聞く理由は、売上が取れない大きい要因がそこにあるかもしれないからです。自分達のお店しか見れない店長だと、売上が悪かった時に自分のお店が悪い!で終わってしまうんですが、実は嵐で館の入館数自体が昨日より30%になってる可能性だってあるんです。だからこそ、内的要因だけでジャッジするのは危険なんです!

・自店舗営業

まさに自分が行っていたポジションです。店舗営業(ブランドによってはスーパーバイザーなどともいう)が与えてくれる情報は、そのブランド他店舗の好事例などのブランド内成功要因です。基本店舗営業は、複数店舗を持っているため、さまざまな店舗とコミュニケーションを取っていますし、本社にて営業同士で情報シェアを行ったりするケースも多いです。なので、店舗営業は売上を上げている店舗のノウハウを知っている人間なんです。そんな人に話を聞いたり、相談しないのもったいないです!

このようにさまざまな角度から情報を得て、その上で仮説を立てなければなりません。

その中で、大切なのが前述したギャップを見つけることです。

例えば、自ブランド内の他店でめちゃくちゃ売れてる品番があって、週間で平均とったら1店舗あたり8点売れてるのに、自店は週間販売点数4点だった場合、何かその間に要因がありそうですよね。こういう数字のギャップを見つけるんです。

他にも、売上先週比が自店舗で90%で、館内競合他店Aが120%で、館衣料品先週比が100%だったら、館内平均も下回ってるし、Aに関しては、それをさらに超えてくる要素がありそうですよね。このギャップをまず知るために情報収集が大切なんです。さらにそれだけ知っても思考しない店長もいます。そのギャップが何で出たのかを自分なりに思考して、仮説を作らないと改善なんてできないんです。これができるかできないかで、1流と2流の差があると思ってます。

ちなみにこのギャップから仮説を立てる能力は、自店が悪い時だけで無く、良い時にも生かされます。売上を取る店長は、自店で全店売れてない品番がめちゃくちゃ売れてる場合、その要素分析をします。品番単位でいえば、要素として

その品番を使ったマネキンのコーディネート

ラック、テーブルにかけている/置いている位置

その品番付近につけている販促物

接客ワード

その品番をスタッフが着用しているかどうか

などさまざまありますが、この中からこれが良かったから売れただろうという仮説を立てます。

これができると、その品番がたまたま売れたで終わらず、売れる品番を作る再現性の高い法則の仮説を立てられるんですよね。だから、良いギャップから立てられる仮説は勝ちパターンになり得るんです。これを何度も積み重ねている店長は頭に勝ちパターンのストックができてます。だから売上を取る店舗戦略が組めるんです。

持ってる情報量が多いほど、自店のギャップを見つけやすく、仮説の量・精度が高まって、売上に直結します。これはアパレル問わずどの小売でも言えることだと思いますので、
情報収集→ギャップ発見→仮説立て→検証
を実践して欲しいと思います。


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