ティール組織とは③
階層のない組織を作る。組織メンバーが自主的に目標を作り、誰に指示を受けることなく、実行し、達成し、自己実現を果たしていく。肩書きがなく、自分とは何者であるか?何者になりたいのか?自ら考え、我が道を進む必要がある。
前回のセルフマネジメントでは、組織内に上下関係がなく、自ら考え、決定するプロセスについて書いた。ティールでは上下関係がないだけではなく、役職もない。正確には、組織から与えられる役職とその在籍期間を強制されることがないということだ。階層のある組織では、組織から、立場と職務を与えられ、その職務が自分に合うのか合わないのかを考えることもなく、受け入れざるを得ない。組織において有能な人材には交渉の余地もあるだろうが、下部階層は従う以外に選択肢はないのが現実かもしれない。
これはこれで、居酒屋で組織の不平不満を面白おかしく話し、ストレスを発散するという文化も花開かせたのかもしれない。
ただ、ティールでは、何をすべきかを、そして役割も自ら決定しなければならない。これは、非常に過酷なことと言える。最終的には全ての責任が自分に課せられる重圧と孤独感を乗り越えながら仕事をする必要がある。
ティール組織を提唱した著書、Reinventing Organizations 「ティール組織」フレデリック・ラルー著、鈴木立哉訳では、この重圧と孤独感を克服できる方法についても全体性(ホールネス)内で述べている。
◯職場環境作り
温かい雰囲気の職場環境作り。ティールではなにより人間関係が重視される。誰もが、気軽に話せる環境作るは重要である。階層がある組織では、上位階層は考えをまとめたり、インスピレーションを発揮しやすいよう、リラックスできる環境を自ら作ることができる個室を与えられるが、下部階層は指示を受け実行するだけであるため、いわゆる大部屋であり、殺伐としている環境であることが多い。
ティールでは、誰しもが、階層のある組織の上位階層と同じ役割を果たすので、職場環境は重要であり、平等な環境でなければならない。また、気軽に話しやす環境だけではなく、重要な決断を下す際や自分を見つめ直す際に、じっくりと考えをまとめる為の、静かな部屋も用意すべきとある。
◯価値観の共有とコミュニティー作り
階層がない為、命令という指示系統がない。共同で説明したり、サポートを求めたりする際は、その都度説明責任が発生する。また、人間性について不安があると、どうしても信頼関係を構築するまでは、チームワークがしっくりこないこともあり、仕事のスピードが遅くなってしまう。
そこで、普段からチームメンバーそれぞれの価値観を共有する為の様々は取り組みがなされている。実行業務とは別に、価値観を共有する為の討論会やコーチング会、自分を曝け出すことを目的のストーリー発表会というそれぞれの価値観、個性、仕事やそれ以外の人生への考え方を事前に共有することで、チームとして組織性を高めている。ティール組織は、セルフマネジメントの考えが先行し、孤独に業務を遂行していくイメージあるかもしれないが、むしろチームとしての組織性を向上することに重点を置いていると言える。
◯教育体制作り
ティール組織では、個別知識の取得は、組織としてサポートしない。自ら不足する知識を補うため、自ら計画を立て学習していく。しかし、先に述べた価値観の共有に関しては、共同の教育が必要との認識である。
例えば、ミーティングはエゴを抑え、全員の意見を傾聴するというルールについて、人間関係構築について、企業文化について、組織に溶け込むことについての研修が必要とされている。
規律やルールを徹底させるのではなく、内面から他者を尊重し、お互いがいい仕事をできるようサポートし合うことができる組織慣習を作る、そしてその慣習が緩やかな全体像作り上げることで、全体性(ホールネス)が出来あがっていく。これがティール組織の骨格作りかもしれない。
この組織としての全体性(ホールネス)がある為に、メンバーがセルフマネジメントを孤独に行うことなく、また、突出しておかしな行動を取ることを防止し、チームとしてのサポートを受けながら、様々や役割を遂行していくことを可能としている。