今週のSaaSニュース! Vol.92(3/20週)
今週の資金調達ハイライト
◆Slackを超える成長!法人クレカ・支出管理SaaS Ramp $750M
Rampは、Brexと双璧をなす法人クレカ・支出管理SaaSのリーダー企業。驚くべきは、その成長率。ARR成長率 734%、NRR 200%越え。従業員1人当たりのARRは、$363K(≒約4,400万円)。ARR $1-100Mまでに到達する期間は、Slackを超える2年強(詳細はこちらのブログを参照)。本シリーズDはFounders Fundがリード。調達金額$750Mの内、エクイティが$200M+デッドが$550M。バリュエーションは$8.1B。(Rampとは?)
◆サードパーティーAPIの探索・統合SaaS RapidAPI $150M調達
RapidAPIは、数千もあるサードバーティAPIを見つけ、統合するのみならず、自社のAPIの利用状況を管理するマーケットプレイス+SaaS。同社の調査によると、デジタルを活用した企業の95%は少なくとも1つ以上のAPIを利用しており、APIエコノミーの拡大と共に今後も成長が期待される。RapidAPIはフリミアムからの有料課金モデルで、有料ユーザー数は2万5千人を超える。現在本シリーズDはSoftbank Vision Fund2がリード。バリュエーションは$1B越え。(RapidAPIとは?)
◆ ECサイト販売・在庫管理を一括管理するSaaS CommerceIQ $115M調達
現在、小売のEC売上の85%はAmazonやWalmart.com、Instacartのような大手ECサイト上で行われている。CommerceIQは、これらの大手ECサイトでの販売から在庫管理、分析などを一括して行える統合ソリューションを提供するスタートアップ。消費財メーカーや家電メーカーなど、2,220ものブランドに利用されている。CommerceIQの導入により、売上成長率は平均18%向上する。本シリーズDはSoftbank Vision Fund2がリード。バリュエーションは$1B越え。(CommerceIQとは?)
◆データワークフロー自動化SaaS Astronomer $213M調達:Astronomerはデータチーム向けオープンソース Airflowを活用したSaaS。2年間でチームは250人超と10倍に拡大。シリーズCでInsight Partnersがリード。本調達と合わせて、DataOps SaaS Datakinを買収。
◆グローバルチーム向け法人クレカ・支出管理SaaS Jeeves $180M調達:Jeevesはグローバルにチームを抱えるスタートアップ向けに、マルチ通貨に対応するSaaS。売上は9倍、顧客数は2倍に拡大。本シリーズCはTencentがリード。バリュエーションは$2.1B。
◆ノーコード ビジュアル開発SaaS Webflow $120M調達:Webflowはプロ向けサイト構築・CMS。顧客数 20万社、ARR $100M越え。本シリーズCはYC Continuityがリード。バリュエーションは$4B。
◆法人クレカ・財務会計自動化SaaS Finally $95M調達:2018年創業のFinallyは、SMB向け法人クレカと財務会計のバックオフィス業務を自動化するSaaS。1,000社以上に導入。本シリーズAはPeakSpanがリード。
◆データチームのコラボレーションSaaS Hex $52M調達:HexはSQL、Pythonを使うデータチームが協働しながら分析を進めるSaaS。本シリーズBは、既存株主のAndreessen Horowitzがリード。
◆リモートワーク支援MDM SaaS Firstbase $50M調達:Firstbaseは、SMB企業がリモートでのMDM(デバイスオンボード・管理)するSaaS。昨年4月から売上16倍、顧客数は7倍に成長。本シリーズBは、Kleiner Perkinsがリード。
◆AIベース・カスタマーサービスSaaS Glia $45M調達:Gliaは金融業特化CRMからカスタマーサービスの顧客対応の効率化を支援するSaaS。本シリーズDはInsight Partnersがリード。バリュエーションは$1B越え。
今週のM&A・IPO
◆大手PE Thoma BravoがAnaplanを$10.7Bで買収
マーケットトレンド
◆なぜ大手SaaS企業はリッチメディアを立ち上げるのか?
コンテンツマーケティングは、SaaS企業の主要な需要創出の方法です。2022 Demand Generation Benchmarkによると、予算を増やす優先順位が最も高い手法に位置付けられています。近年大手SaaS企業ではさらに進化して、リッチメディア化が進んでいます。Salesforceは、昨年秋にビジネス版Netflix ”Salesforce+"を立ち上げました。Shopifyは2019年に”Shopify Studios"を立上げ、起業家のTVドキュメンタリーシリーズ ”I QUIT"を、ディスカバリーチャンネルで放映しています。
なぜ大手SaaS企業は次々とメディア事業を立ち上げるのでしょうか?
最大の理由は、自社の顧客になっていない層に対して、広告と感じさせずに自社のメッセージを届けることで、顧客層を広げることにあります。また、既存顧客に対しても、普段はNetflixやNational Geographicなど視聴しており、そこでの顧客エンゲージメント強化も狙えます。しかし目的を達成するには、即効性のある効果は望めず、長期目線での投資が必要となると指摘しています。
営業&マーケティング
◆アーリーステージのセールス組織作りのポイント
SaaS企業で20年以上経営経験をされた現VCのAndy Stinnes氏によるTechCrunchへの寄稿記事。SaaSスタートアップの起業家は、SaaS企業で3年以上営業予算を達成したことがあるトップパフォーマーを初期のセールス候補として好む傾向がありますが、必ずしも正しくありません。全てが未熟なアーリーステージでは、地頭がよく、自立型で好奇心の強いコンサルティングスキルの高い人材が成功することが多いです。
また、初めに採用する人数や採用ペースにも注意が必要です。
最初はセールス2人を同時期に採用することがベストです。1人だと孤独に陥りやすい一方、2人だと健全な競争が発生し、学びの効果も高くなります。また、2人の営業成果を比較することで、売れない理由がプロダクト/市場の問題なのか?セールスチームの問題なのか?を識別しやすくなります。また採用ペースも早すぎることもよく見受けられる間違いです。SMB向けのような早いサイクル・低ACVの場合は、1年目に採用を追加しても良いでしょう。一方でエンプラ向けのような長いサイクル・高ACVの場合は、最初の2名でしばらく回して、予算の達成状況やリード推移などの数値を確認してから追加する方が好ましいとのことです。
カスタマーサクセス
◆Gainsight CEO Nick Mehtaに聞くカスタマーサクセスのいま
McKinsey&Co.によるカスタマーサクセス界の重鎮 Nick Mehta氏へのインタビュー記事。近年では、カスタマーサクセスの重要KPIであるNRR(NDR)は、上場SaaS企業のマルチプルに大きく影響しています。この記事では、優れたカスタマーサクセスの定義やCS採用を成功させるヒント、最近のカスタマーサクセスのトレンドについて解説しています。本記事のポイントは、Hiroko Razaviさんが日本語のtweet(こちら)で解説されているのでご参照ください。
プロダクト開発
◆PMの採用インタビューのハウツー
数々のPM関連の記事を書いているLenny Rachitsky氏による記事。PMの採用インタビューのプロセスから、PMに求められる基本スキルとその有無をチェックする上で効果的な質問を紹介しています。PM経験者への採用インタビュー前提ですが、未経験者向けにも少し手を加えて使える部分も多いと思います。PM採用プロセス設計の参考にしてみてはいかがでしょうか。
PMの基本スキルと効果的な質問例
1. コラボレーション力:"過去エンジニアと意見が合わなかった時、どのように解決しましたか?"
2. 業務遂行力:"過去ご自身が関わった3-9ヶ月間に渡るプロジェクトについて、はじめから最後まで説明してください。"
3. 戦略思考:”昨年ご自身が関わったプロダクトを1つ選んで、その戦略について説明してください。”
4. カスタマーインサイトの抽出力:"過去ユーザーリサーチを行った結果が、プロダクトに大きな影響を与えた経験について教えてください。"
5. インパクトを産む力:"過去リリースしたプロダクトで、最も重要ないしはインパクトがあったものは何ですか?その理由とあなたの貢献についても教えてください。"
6. プロダクトセンス:"弊社のプロダクトにある機能Xを改善するとしたら、あなたならどうしますか?"
※その他記事はこちら。
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