今週のSaaSニュース! Vol.50(5/23週)
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注目!資金調達ニュース
■ UX解析・改善SaaS Contentsquare $500M調達@$2.8B
フランス・パリ発のContentsquareは、ウェブ・スマホ・アプリ上での顧客の行動を分析して、UX改善を支援するSaaSを提供するスタートアップ。直近4年間連続で、売上2倍を達成しており、Fortune 500企業など750社で導入されている。RakutenやWalmartなど、ECサイト改善の用途が成長を牽引している。今回のシリーズEは、$2.8Bのバリュエーションで、Softbank Vision Fund2、KKRなどから総額$500Mを調達した。
■ 小売/ECオムニチャネル決済SaaS Pine Labs $285M調達@$3B
1998年にインドで創業したPine Labsは、小売業向けに決済端末のハードウェアから、店舗とオンライン両方の決済・請求・運転資金管理を行うSaaSを提供するスタートアップ。東南アジアを中心に、14万社のマーチャントに導入されている。創業20年超と歴史の長いスタートアップながら、過去3年は、2020年$1B、2020年$2B、今回ラウンドの$3Bとバリュエーションを毎年上げている。近年では、2019年にギフトカード大手Qwikcilverの買収やBuy Now Pay Laterの提供などで業績を伸ばしている。今回ラウンドは、Baron Capital Groupや既存投資家のTemasekなどから$285Mを1stクローズの調達をした。
■ 飲食/SMB向け決済+all-in-one SaaS SpotOn $125M調達@約$2B
SpotOnは、飲食店/SMBの小売店向けにPOSから、決済、予約管理やHP政策、マーケティングなど、いわゆる"One-stop shop"でハードウェアとSaaSを提供するスタートアップ。現在3万店舗に導入されており、60%が小売、残り40%が飲食という構成になっている。2020年2月のコロナ禍を契機に、400もの機能刷新を実施し、直近1年で売上は3倍に拡大した。創業4年ながら、米国、メキシコ、ポーランドの3ヵ国に1,250名もの従業員を擁する。本シリーズDは、Andreessen Horowitzがリードし、DST Global、Dragoneer Investment Groupなどから総額$125Mを調達した。
■ ダイバーシティ採用管理SaaS Canvas $20M調達
Canvas(旧 Jumpstart)は、「公正な採用プロセスで平等な世界を創る」をミッションに掲げた、ダイバーシティ採用プラットフォームを提供するスタートアップ。昨年のBlack Lives Matter運動を契機に、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、企業の重要なCSR課題に浮上した。Canvas上では、87%の候補者は人種などの人口動態情報を開示しており、企業でのダイバーシティ採用の状況や、優先的に採用すべき人材層を知ることができる。Google、Airbnb、Lyft、Pinterestなどの大手テクノロジー企業を中心に導入が進んでおり、2020年の年間売上は3倍に増加した。本ラウンドは、Sequoia CapitalとStripeの初期メンバーでエンジェル投資家のLacy Groom氏の共同リードで、$20Mを調達した。
■ EC向け不正検知SaaS Forter $300M調達@$3B: Forterは、高精度の不正検知をECに特化したSaaSを提供している。今回のシリーズFは、半年前の前回シリーズEのバリュエーション$1.3Bの2倍以上の$3Bで、Tiger Global、Bessemer Venture Partners、Sequoia Capitalなどから$300Mを調達した。
■ グローバルSCM最適化SaaS FarEye $100M調達: インド発のFarEyeは、国際物流から、ラストワンマイルまでのサプライチェーン全体の監視、最適化を行うSaaSを提供している。WalmartやUPS、Domino'sなどのECやデリバリー系の大手事業者150社にSaaSを提供している。今回のシリーズEは、TCVとDragoneer Investment Groupを筆頭に、$100Mを調達した。
■ バイオファーマ品質管理SaaS Qualio $50M調達: Qualioは、バイオファーマ企業向けに、現状紙ベース、ないしはサイロ化したデータにより、非効率を産んでいるバイオファーマの品質管理をクラウド上で行うSaaSを提供しているスタートアップ。2020年は+258%のARR成長率を達成し、ARR $10Mに到達。今年度末までに+300%の成長を目指している。本シリーズBでは、Tiger Globalなどから$50Mを調達した。
■ エンタープライズ向け次世代Zoom Rewatch $20M調達: Rewatchは、"Zoom疲れ"しにくいビデオ通話に加え、企業向けにビデオ通話にSystem of Recordの考え方を導入し、動画のインデックス化、文字起こし、データ保管を行うSaaSを提供している。本シリーズAは、Andreessen Horowitzリードで$20Mを調達した。
市場トレンド
■ 個人情報保護 vs. データ活用: 現代の企業のチャレンジ
欧州のGDPRや米・カリフォルニア州のCCPAから波及し、世界中で個人情報保護の強化の流れが強くなっている。一方で、顧客により良いサービスを提供するためのデジタル化において、データの活用が企業により求められるようになった。最近のFortune 500企業の経営者へのアンケート結果では、「社内のデータ活用ニーズと顧客からのデータプライバシーニーズの間に、コンフリクトが発生している」と回答した経営者はおよそ60%に上った。本記事は、現代の企業がこの両立をするための3つの指針を提言している。
個人情報保護とデータ活用を両立するために企業がすべきこと
1) 個人データ・データガバナンスを支援する「ツール導入」
2) 情シスや法務などの「関連部門連携」と「責任所在の明確化」
3) 法規制に則った「プライバシー保護戦略」の立案
ストラテジー
■ 真のProduct-Led-Growth(PLG)の判別方法
Product-Led-Growth(PLG)がバズワードになり、伝統的なセールス主導のSaaS企業でもPLGを取り入れる動きが加速している。SaaS企業として、本当の意味でPLGへの投資が適切にできているかを把握する上で、「R&D費用:S&M費用(営業/マーケ)」比率が1つのベンチマークになるという、Openview Venture Partnersの記事。一部、Zoom、DocuSignと言った例外企業はあるものの、PLG企業ではR&D:S&M比率 0.87、non-PLG企業では同 0.58がベンチマークになるとのことです。R&D:S&M比率上位企業のデータは以下の通りです。PLG型の成長を目指すSaaSスタートアップの方は、投資配分を考える上で参考になるかと思います。
マネジメント
欧米のスタートアップでは、PEファームが投資をして、プロ経営者をCEOに招聘、ないしは現職のCEOと協業して事業成長を支援するケースがある。本記事は、PE機能も有するBattery Venturesが考える、事業を加速化させられるCEOの6つの特徴をまとめた記事。PEファームから出資を受けるかは別として、グロースフェーズを牽引できるCEOの要件として、参考になるポイントもあると思います。
グロースフェーズの優れたCEOの特徴
1) パターン認識力に優れた戦略マインドがある
2) 事業での成長をドライブしてきた実績がある
3) パフォーマンスの高いチームが作れる
4) 組織を円滑に動かす仕組みを作った経験がある
5) カルチャーのニュアンスを理解し、組織間のサイロを壊す能力がある
6) 変革志向のマインドセットを持っている
ファイナンス
多くのSaaSスタートアップへの投資・支援をしてきたEmergence Capitalによる、VCからの資金調達を成功させるためのTips集。日米の違いはあれど、VC側の見るポイントや、効果的なアプローチは共通する部分も多いと思うので、参考にしてみてはいかがでしょうか。参考になりそうなパートを一部、以下の通り要約します。
〇 Zoomでの対VCピッチ攻略法
・「起業ストーリー」でアイスブレーク
・入念に準備された「ピッチデック」を準備
・「プロダクトデモ」の実施
〇 シリーズA/BでVCが注視する指標
・直近12カ月の売上成長率(2-3倍)
・NPSスコア
・売上継続率(NRR)
・顧客側でのプロダクトROI
・ユニットエコノミクス(LTV/CAC, CAC Payback)
〇 VCが投資を断るよくある理由
・市場が小さすぎる/成長率が低い
・Why Now?が弱い
・経営陣のリファレンス結果が悪い
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