今週のSaaSニュース! Vol.64(8/29週)
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今週の資金調達ハイライト
採用バックグラウンドチェックSaaS Checkr $250M調達
日本でも普及し始めている、人材採用における候補者のバックグラウンドチェック。2014年創業のCheckrは、このバックグラウンドチェックをAIを活用し、自動化・効率化するSaaSを提供するスタートアップ。企業の採用活動がオンラインにシフトする中で急成長。UberやAirbnbなどのテック企業を中心に、年間3,000万人のバックグラウンドチェックを実施。売上は$200Mを超え、黒字化を達成している。今回、$4.6Bのバリュエーションで、Durable Capital、Accel、Bondなどの著名投資家から$250Mを調達した。(Checkr資金調達インタビュー動画)
学校向け"Student Success" SaaS Panorama $60M調達
Panorama Educationは、K-12(幼稚園~高校)の学校向けに、生徒・保護者・教員へのサーベイツールと、生徒の学業での成功 -Student Success-を実現するために、実行可能なインサイトを抽出するSaaSを提供している。現在までに、全米の25%超にあたる、1,300万人の生徒、2万3千校、1,500以上の学区で利用されている。コロナ禍の学校運営のオンライン化の中で、鬱や不安など、生徒は精神的なストレスを抱えるようになっており、それを学校側がいち早く察知するニーズが高まり、直近18ヶ月で2倍近い成長を遂げた。今回のシリーズCでは、General Atlanticなどから$60Mを調達した。(Panorama Educationサービス紹介動画)
AIベースの会計業務の自動化SaaS Vic.ai $50M調達
Vic.aiは、独自のAI/ML技術により、請求書処理やカード決済の消し込みを人に代わって自動化するSaaSを提供している。顧客にはスウェーデン最大の不動産管理会社HSBや大手会計ファームのKPMGやPwCでも利用されている。現在までに、5億3,500万枚以上の請求書処理を、95%の精度で実施してきた。今回シリーズBで、ICONIQ Growthなどから$50Mを調達した。
VectorベースのグラフィックデザインSaaS Vectornator $20M調達
Vectornatorは、AppleやMicrosoft、ディズニーが利用しているVectorベースのグラフィックデザインツールを提供するスタートアップ。創業者のVladimir Danila氏は、10歳からグラフィックデザインツールを使い始め、その使いにくさから独自でツールを開発。17歳の時にVectornatorを起業した(現在21歳)。今回、EQT Venturesなどから$20Mの資金調達を行い、今後モバイル版プロダクトの開発や、米国・アジア・欧州でのグローバル展開を加速させる。21歳でのグローバルSaaSへの挑戦は、勇気を与えてくれる話だと思います。(Vectornatorプロダクト動画)
データ分析デカコーン Databricks $1.6B調達:ビッグデータの統合分析SaaSデカコーン Databricksが$38Bのバリュエーションで、米モルガン・スタンレーのファンド Counterpoint Globalなどから$1.6Bを調達。ARR $600M越え。
グローバル決済・支出管理 Jeeves $57M調達:Y-Combinator出身のJeevesは、グローバルにチームを抱えるスタートアップ向けに各国通貨での決済・支出管理ができるSaaSを展開。シリーズAからたった2ヶ月後の今回のシリーズBでは、$500Mのバリュエーションで、$57Mを調達した。
給与計算・決済API SaaS Zeal $13M調達:Zealは、ソフトウェア開発者向けにペイロール(給与計算や支払い)機能をAPI経由で提供するスタートアップ。今回のシリーズAでは、Spark Capitalなどから$13Mを調達した。
今週の主なIPO/M&A
・レストランSaaSユニコーン Toast IPOに向けたS-1申請
・インド発グローバルCRM SaaS Freshworks IPOに向けたS-1申請
・ユーザー行動解析SaaS Amplitude IPOに向けたS-1申請
・売上成長支援SaaS DriftをVista Equity Partnersが買収
・ヘッドレスCMS FrontityをWordpress運営Automatticが買収
・データセキュリティSaaS RevCultをOwnbackupが買収
マーケットトレンド
「大退職時代」での新しいWork From Homeのかたち
コロナを契機にWFHが長く定着する中で、労働者の労働への意識に変化が起こり、企業勤めを辞める大退職時代 -The Great Resignation-のトレンドが起こり始めている。この記事では、企業勤めを辞めた人々が新たな収入源を得るために、自家用車や自宅のプールやキッチンなど、保有している資産を細分化して、生活の糧を得るマーケットプレイス(下図)の可能性について解説している。長期トレンドかは不明ですが、コロナを契機に"労働"への考え方が大きく変化したことは間違いないので、面白いトレンドだと思います。
ストラテジー
全ての企業にとって、中長期での持続的な成長/競合に対するディフェンス力を築く上で、Moatは欠かせない。テクノロジー企業の伝統的なMoatとしては、ネットワーク効果、規模の経済、高スイッチングコスト、ブランドなどが知られている。しかし、ソフトウェアの長い歴史の中で、これらのMoatが必ずしも万能ではない。CRMの世界を例にみてみよう。スイッチングコストの高い、オンプレミスで成長してきたOracleは、消費者のモバイル・オンラインシフトにより、これにいち早く対応したSaaSプレイヤーであるセールスフォースに覇権を奪われた。
では、SaaSでMoatは築けないのか?
こちらは少し古いGreylockの記事ですが、SaaSプロダクトのMoatの類型として言われる3大Moat、System of Record(例. Salesforce)、System of Engagement(例. Slack)、そしてAI/ML技術の進展に伴い新たに出現してきた、System of Intelligence(例. Gong) の解説をしています。記事では、System of Intelligence(と他2つとの組合せ)が、より強力なMoatであることを強調しています。B2Bソフトウェア業界が長い方には非常に馴染みのある考え方ですが、これらの言葉初めて聞いた方には一読をお勧めします。
カスタマーサクセス
賢く成長するスタートアップのための必須ツール「コホート分析」
近年、日本でも「コホート分析」を活用するスタートアップが増えてきました。コホート分析は、時間経過に伴う顧客行動の変化を知り、マーケティングや営業、CSの施策の効果を把握する上でパワフルな分析手法です。この記事では、顧客エンゲージメント、顧客リテンション、ARPUなど代表的なKPIで、コホート分析のデータの解釈の仕方を解説した記事です。
コホート分析に馴染みのない方のために、少しだけ例を紹介しましょう。
下の図は、顧客エンゲージメントのコホート分析例です。表を見ると、11月(Nov-20)は、マーケ施策のお陰で、通常の月より多く顧客獲得できていることがわかります(500)。しかし、時系列のエンゲージメントの変化を見ると、通常の月に獲得した顧客(40-50%)に比べ、初月から30%と低く、月を追うごとにエンゲージメントが低くなってる(30%→24%)ことがわかります。このことから、マーケ施策で”間違った顧客"を獲得してしまった可能性が示唆されます。顧客が急増したことで、CSが手が回らなかった可能性もありますが、導入月以降も低いことを考えると、その可能性は低いことが予想されます。
コホート分析は、深い顧客インサイトを得るためには非常に一般的な手法ですので、やられたことが無い方は試してみることをお勧めします。また、Chart Mogulが出している、SaaS向けコホート分析ガイド(2ページ)も基礎を理解する上ではオススメなので、ご参考まで。
プロダクト
プロダクトマネージャー(PdM)に要求されるスキルと時間の使い方
PdMは、テクノロジー企業の持続的な成長を担う、枢要なポジションです。GAFAMをはじめとする、多くの米国のテクノロジー企業では、PdMは、トップの頭脳と人格者が集まる"花形ポジション"として、非常に人気があります。こちらのMcKinseyの記事は、PdMに必須となる5つの能力(ビジネスへの洞察力、マーケット状況の把握能力、対人のソフトスキル、テクニカルスキル、顧客体験のデザイン力)やPdMの平均的な時間の使い方を分析、解説しています。
また、PdMは求められる能力・知識が非常に広範囲なため、記事では、企業内でPdMの能力開発をするための育成プログラムの重要性と、そのプログラム設計をする上で重要な4つのポイントにも触れています。
マネジメント
スタートアップ起業家は、先陣を切って市場を興し、優れた組織を迅速に作り上げることが求められるため、リーダーシップは欠かすことができない重要なスキルです。この記事では、リーダーが優れたリーダーになるために行うべき、基本的な10個の習慣(行動指針)ややり方のフレームワークを解説した記事です。基本動作的な内容ではありますが、起業家や経営陣の方々は、ご自身のチェックリストがてら、ご一読されることをお勧めします。
優れたリーダーになるための10大習慣
1. 説得力のあるビジョンを創る
2. ビジョン、優先順位、目的をクリアに、繰り返し伝える
3. 適切な人材採用/チーム作りを行う
4. 結果を測り、結果にコミットする
5. 全プロセスを文書化する
6. 効率的な会議を運営する
7. 危機感を醸成する
8. 権限移譲する
9. 健全なカルチャーを醸成する
10. 課題を解決する
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