今週のSaaSニュース! Vol.69(10/3週)
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今週の資金調達ハイライト
◆急成長するワークスペースSaaS Notion $275M調達
Notionは、言わずと知れたノートを主体としたコラボレーション型のワークスペースを提供するスタートアップ。Product-Led Growth(PLG)の代表格としても知られ、コロナ銘柄としても注目されている。現在までに2,000万人以上のユーザーを抱え、驚くべきことにその80%が本拠地の米国外で、過去2年で20倍の急成長を遂げている。今回の資金調達では、ヘッジファンドのCoatueとSequoia Capitalの共同リードで、バリュエーションは1兆円越えの$10Bに到達。(Notion動画)
◆カーディーラーの未来を創造するSaaS Tekion $250M調達
テスラ元CIOが創業したTekionは、カーディーラー向けに販売から、会計、修理まで全てをオンライン化するソリューションをall-in-oneで提供する注目スタートアップ。半導体チップの供給問題で自動車の供給自体は下がっている一方、需要は依然高い市場環境。GMやBMW、ルノー-日産三菱なども顧客に抱えている。今回のシリーズDでは、前回の$1Bから大幅アップの$3.5Bのバリュエーションで、Alkeon CapitalとDurable Capitalが共同でリードした。(Tekion動画)
◆グローバルEC展開加速・支援SaaS Pattern $225M調達
Patternは、B2C消費財企業向けにAmazonやWalmart、eBayなどを介して、グローバルでのEC販売を加速化させるSaaS+サービスを提供するスタートアップ。Panasonicなども顧客。BNPLのような決済ソリューションも提供。狙うは$6T(約600兆円)のグローバルEC市場。2022年内には売上$1Bに到達する見込み。今回の資金調達では、Knox Laneがリード投資家で、バリュエーションは$2Bに到達。(Pattern動画)
◆APIゲートウェイ/サービスメッシュ統合SaaS Solo.io 135M調達
Solo.ioは、クラウド・ネイティブなKubernetes市場が拡大する中で、ニーズが高まるAPIゲートウェイとサービスメッシュ(アプリ間のデータ共有の制御)を一括管理できるSaaS。ARRはこの1年で3倍に拡大。今回のシリーズCは、Altimeter Capitalがリードし、バリュエーションは前回の10倍弱の$1Bを超え、ユニコーンの仲間入りを果たした。(Solo.io動画)
◆クラウドインフラセキュリティSaaS Orca Security $550M調達:2019年創業のOrca Securityは、クラウド企業向けに一気通貫でインフラのセキュリティ管理をできるSaaS。本シリーズCでは、バリュエーションは$1.8B。Temasekがリード投資家。
◆クラウドモニタリングSaaS Chronosphere $200M調達:Chronosphereは、年々ホットになっているData Observability(可観測性)分野で、注目されるSaaSスタートアップ。Uberのエンジニア2人が創業。本シリーズCは、General Atlanticリードで、バリュエーションは$1B越え。
◆決済オペレーションSaaS Modern Treasury $85M調達:Modern Treasuryは、企業が対応する多様な決済手段の運用を一括管理するSaaS。本シリーズCは、Altimeter Capitalがリードし、バリュエーションは$2B越え。
◆会話型モバイルEC構築SaaS Wizard $50M調達:Wizardは、次世代モバイルECの有力分野とみられる、テキストベースの会話型コマースを構築支援するSaaS。本シリーズAは、元Walmart 米国EC事業責任者 Marc Lore氏やNEAなどから$50Mを調達した。
◆エンタープライズ向け財務プランニングSaaS Vareto $24M調達:Varetoは、企業のファイナンスプランニング(FP&A)分野の新興SaaSスタートアップ。本シリーズAでは、GVやMenlo Venturesの他、Salesforce 前CFO Mark Hawkinsらなど有力テック企業のC-class経験者から資金調達を実行した。
今週の主なIPO/M&A
◆米マイクロソフトがOKR SaaS Ally.ioを買収
◆統合型ID管理SaaS One IdentityがIDアクセス管理SaaS OneLoginを買収
マーケットトレンド
企業ITを取り巻く環境は、クラウドを筆頭にこの数十年で激変してきた。端末もPCからモバイル、現在進行するエッジ(自動車など)へとシフトし、並行してAI/MLなどの台頭が顕著に起こっている。こちらのPodcastは、クラウドと企業のこれまでの変化と未来について、Marc Andreessenらa16zメンバーと本トピックについて語った新書『Play Nice But Win』の著者である、Dell社創業者兼CEO Michael Dellの対談。今後の企業ITを取り巻くマクロトレンドの全体像をとらえる上で、学びの多い内容です。
ストラテジー
◆サブスク課金→利用量課金シフトへのNew Relicの挑戦
米SaaS上場企業のNew Relicが現在行っている利用量課金シフトへの大胆な変革の裏側を描いた記事。New Relicは、エンジニア向けにクラウドデータの観測ツールを提供するSaaS企業。2008年に創業し、たった6年で上場。上場後4年間で、時価総額も4倍まで拡大させた。しかし2019年通期の業績低迷により、2020年の決算発表後、1日で株価は29%下落。New Relic経営陣は、大胆な改革(以下)を決行。改革の概要と、それに伴うインパクトと痛みをざっくり理解できます。要約はこちらのTweetstormをご参照ください。
2020年7月に発表したNew Relicの改革4本柱
1)APMからObservabilityにポジショニング変更
2)シングルプラットフォームへの移行
3)無料プランの追加
4)サブスク→利用量課金への移行
営業&マーケティング
パートナーを活用した間接販売戦略は、ヒト・モノ・カネの制約の大きいスタートアップが非連続な成長を目指す際に検討される、代表的な戦略の1つ。こちらの米Battery Venturesの記事は、パートナー販売戦略を考える上で、ステージ別にフィットするパートナー(下図)、パートナープログラム作りの基本ステップや成功させるために重要な6つのポイントを整理している。パートナー販売戦略を検討/実施されているSaaS企業の方には、非常に役に立つと思います。
マネジメント
「起業家のメンタルヘルス問題」は欧米ではよく語られることが多いが、日本では、全体的にメンタルヘルスは軽視されがちだ。私個人のこれまでの経験でも、起業家の方々のバーンアウトやその兆候を肌に感じたことは1度や2度ではない。また、メンタルが強めの成功した企業経営者や、メンタルヘルスへの感度が低い/根性論一辺倒のVCから、プレッシャーを与えられてる場面もしばしばみる。起業家/スタートアップ経営者の方は、以下に示すような、ご自身のメンタルヘルスを維持するための「戦略的な環境」作りをすべきだし、信頼できる人(できれば株主)とも話し合うべきだと思います。
起業家のバーンアウト防止の戦略10
1. 当事者意識のあるVPを1-3人は採用する
2. 事業の20-40%をカバーできるCOOを採用する
3. 出張時、ビジネスクラス/良質なホテルを利用する
4. 年間で2週間の休暇を取る
5. 本物のメンターを雇用する(有償で)
6. 計画+20%で余分に資金調達する
7. 創業1年後は仕事を家に持って帰らない
8. バーンレートを下げる
9. (時として)成長を加速させる
10. ハッピーカスタマーにフォーカスする
ファイナンス
スタートアップの資金調達ピッチ資料を有料公開しているBusiness Insiderによる記事。資金調達に成功するピッチ資料に共通してみられるポイントをまとめています。内容のまとめと私個人の見解は、こちらのTweetstormをご参照ください。資金調達の資料作りの参考にしてみてはいかがでしょうか。
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