今週のSaaSニュース! Vol.55(6/27週)
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注目!資金調達ニュース
■ 従業員向けe-ラーニングSaaS Articulate $1.5B調達@$3.25B
2002年創業のArticulateは、エンタープライズ/SMB向けに、従業員向けのe-ラーニングを作成・習熟度の管理をするLMS(Learning Management System)を提供するスタートアップ。プロダクトは、誰でも簡単にコンテンツを作成し、外部のLMSと連携できる「articulate 360」と独自のLMSである「Rise」の2つを提供し、「articulate 360」は米ソフトウェア評価サイトTrustRadiusの選ぶ「最も愛されているソフトウェア」の第7位にランクイン。現在までに、Fortune 100の全ての企業を含む、世界161ヵ国10万6千社で利用されている。創業以来、一度も外部資金に頼らないbootstrapping企業だが、コロナ後に急成長しているe-ラーニング市場での加速を狙い、今回シリーズAで、 General Atlantic、Blackstone Growth、ICONIQ Growthの3社から合計で$1.5Bの超大型調達を実施した。
Articulate storyline 360とは?(動画)
■ 社内ITサポート自動化SaaS Moveworks $200M調達@$2.1B
現代の企業では、社内のITシステムのダウンタイムは事業の損失につながるため、社内のITサポートの迅速な対応は重要なイシューです。しかし、一般にITサポートチームはマニュアル対応のため、平均処理時間3日と時間がかかっているのが実態です。Moveworksは、自然言語処理と会話型AIボットを用いて、この企業内のITサポートを、SlackやTeamsのようなチャットツール上で自動対応するSaaSを提供しています。今年の3月には、ITサポート以外のHRや財務、ファシリティ関連のサポートも提供するEmployee Service Platformをリリース。リモートワークの一般化に伴い、Moveworksは、直近2-3か月でアクティブユーザー数は700%増加。Bessemer Venture Partnersが出資するElectric社は間接的な競合。今回シリーズCで、Tiger Global、Lightspeed Venture Partners、Kleiner Perkinsなどから$200Mを調達した。
■ EC事業者向けSoftware-enabled 3PL $200M調達@$1B+
2020年はEC産業が飛躍的な成長を遂げ、EC事業者の数も大きく増えました。EC事業者にとって、顧客体験を向上し、事業の成長に大きく影響を与えるのが物流です。ShipBobは、誰でも簡単にアマゾンのような優れたフルフィルメントを提供する、いわば「Tech-enabled 3PL」事業者です。純粋なSaaSスタートアップでは無く、在庫管理や受注管理、財務分析を行うクラウドソフトウェアに加え、在庫や配送手配のような物流サービスも併せて、従量課金型で提供するスタートアップです。5千以上のEC事業者が、現在までにShipBobを利用している。今回のシリーズEでは、Bain Capital Venturesや既存投資家のSoftBankなどから$200Mを調達した。
■ ラグジュアリーブランド・クリエーター支援SaaS Pietra $15M調達
米国ではクリエーターエコノミーが隆盛を極めている中、Uber出身者が創業したPietraは、コスメやアクセサリーなどのクリエーターがブランド設立とEC運営のバックエンドを支援するSaaSを提供している。ユーザーは、使った機能に使った分だけ支払う従量課金型モデルで、簡単に拡張することができる。今回のシリーズAでは、Founders Fundや既存投資家のAndreessen Horowitzなどから$15Mを資金調達した。
■ 銀行向けデジタルバンキング構築SaaS Blend IPO(S-1)申請 : 銀行向けにモダンでデジタル化されたコンシューマ・ファイナンスを提供するバックエンドを提供するSaaSスタートアップ Blendが、IPOに向けたS-1をSECに提出。特にモーゲージ分野に強く、2020年は米国全体の1/3にあたる$1.4TがBlend上で処理された。2020年の年間売上は、前年比+90%の$96Mに達する。上位顧客18行殻の売上が全体の53%を占め、先日上場したMarqetaやAffirmのようなFintech企業同様に、顧客あたりのACVが高いことが特徴。今年1月には、$3.3Bのバリュエーションで、pre-IPO前のラウンドを実施した。
■ 臨床試験管理SaaS 4G Clinical $200M調達: 4G Clinicalは、コロナのワクチン開発でも注目を浴びた、臨床試験の加速化を支援するSaaSスタートアップ。現在までに230社以上の製薬メーカーで利用されており、得意のRTSM分野では市場シェアの17%を有している。今回Glodmans Sachsがリードで、$200Mの資金調達を行った。
■ Shopifyモバイルコマース最適化SaaS Tapcart $50M調達: Tapcartは、Shopifyユーザーが、モバイルコマースに最適化した、UI/UXの変更やコンテンツ追加をドラッグ&ドロップで簡単にできるSaaSを提供するスタートアップ。Shopifyの成長と共に、昨年1年で売上は3倍成長。今回シリーズBで、Left Lane CapitalやShopifyなどから$50Mを調達した。
■ ノーコード型 社内プロセス自動化SaaS Tonkean $50M調達: Tonkeanは、企業の部門間で分断されている、社内システムとプロセスを、非エンジニアでも使えるノーコードで連携させ、自動化を促進するSaaSを提供している。今回シリーズBで、Accel、Lightspeed VPから$50Mを調達した。
マーケットトレンド
現代のビジネスの成功は、データから価値あるインサイトを抽出し、優れたユーザー体験を提供できるかと密接に結びついています。最近では、企業のデータ活用の障壁が下がるにつれて、柔軟なデータインフラとオペレーション最適化が、この競争に勝ち続けるための要件になっていると、企業に強く認識されるようになりました。こちらのBessemer Venture Partnersの記事は、データのエコシステムの進化と最近のトレンド、今後、データインフラ領域でスタートアップが成功するための要件をまとめています。
ストラテジー
■ Mark Roberge流 Product-Led-Growth(PLG)プレイブック
クラウド・SaaSが普及するにつれて、Product-Led-Growth(PLG)は、近年のSaaSスタートアップの成長戦略を考える上で、重要なオプションの1つになりました。PLGでの成長モデルを実現する上では、どのようなKPI設計を行い、部門間の連携を実施するかがキモになります。こちらの記事は、元HubSpot CRO/米ハーバード大学講師のSaaSの成長戦略の大家 Mark Reforge氏による、SaaSスタートアップのためのPLGプレイブックです。North Star Metricsの設計法や、PLGの社内運用するための要点、顧客へのテストをする会議体やフォームのような細かい点まで解説してくれています。
SaaS黎明期の日本市場では、SaaSスタートアップの成長において、エンタープライズ攻略は欠かせません。しかしながら、多くのSaaSスタートアップでSMBやMidと同じ営業戦略を転用し、苦戦することが多くあります。こちらのSaaStrの記事は、エンタープライズ営業戦略で注意すべき重要な点を解説してくれています。
エンタープライズ営業戦略の重要なポイント
1) 商談を進める上で、全てのステークホルダーを巻き込む
2) 顧客の重視している懸念には全て応える
3) 良い既存顧客には、頻度高く、直接訪問する
4) フルタイムのRFP専任担当者を採用する
5) フルタイムのチーフ・セキュリティ・オフィサーを採用する
6) 既存顧客向けマーケやコーポレートマーケティングに早めに投資する
7) 顧客を中心においたカルチャー作りをする
プロダクト開発
テック企業の根本的かつ長期的な競争優位性を産むには、円滑なプロダクトマネジメントは欠かせません。PdM向けのプロダクト開発支援SaaSを提供しているProductboardの記事は、プロダクトマネジメントを阻害する社内の5つのアニマルとその対処法、適切なプロダクトマネジメントの進め方について解説してくれています。
円滑なプロダクトマネジメントを邪魔する5匹のアニマル
・オオカミ(WoLF): 新機能に気を取られ、技術負債やセキュリティを怠る
・サイ(RHiNO): 顧客の個別要望にばかり対応する
・カバ(HiPPO): 経営陣が全てのプロダクトの意思決定をする
・シマウマ(ZEbRA): 感覚に頼り、ファクトに基づかない
・カモメ(Seagull): たまに介入して、チームを荒らす管理職がいる
マネジメント
SaaStr CEO Jason Lemkin氏が考える、スタートアップの採用面談で候補者が聞くべき質問集。
1) 過去の主要ポジションでの採用の失敗は? 何が学びだったのか?
2) 過去のトップ1, 2で成功した採用者の例は?
3) ●年後にこの業界はどうなってると思うか?
4) 社内でキャリアアップした方は誰か? どうやったのか?
5) 四半期の目標が未達だった時、何をしたか?
6) あなたの過去の上司で、ベスト/ワーストは誰か?
7) 競争はどれくらい激しいか? 競合のどこを評価してるのか?
8) 会社として、多様な考え方や見方をどう取り入れてるのか?
9) なぜ、この事業/CEO職をやっているのか?
ファイナンス
■ 米Fintech×SaaS企業の勝つポイントと市場での評価
近年、ShopifyやBill.comに代表されるような、決済や融資などのFintechを組み合わせたFintech×SaaS企業が、市場で高い評価を集めるようになってきました。こちらの米Battery Venturesのレポートは、FintechとSaaSの市場での評価の違いや"勝つ"ために押さえるポイントを整理しています。
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