今週のSaaSニュース! Vol.88(2/20週)
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今週の資金調達ハイライト
◆データエンジニア界で話題のデータ分析SaaS Dbt Labs $222M調達
米・フィラデルフィア発のDbt Labsは、データ連携におけるELTの内の"T"(データストア内でのデータ変改)を支援SaaS。dbtとはdata build toolの略。元々は創業者Tristan Handyが、自身のソフトウェアコンサル会社内の業務効率化のための社内ツールとして開発。現在では9,000社(下図)がこのオープンソースを利用し、1,800社が有料ユーザー。本シリーズDはAltimeter Capitalリード。既存投資家のa16zの他、Snowflake、Databricks、Salesforce Venturesなどのクラウドトリオも参加。バリュエーションは当初$6.2Bを想定していたが、昨今のマーケット状況を加味して$4.2Bで着地。(Dbt Labs動画)
◆上場株の個人投資家売買・IR支援SaaS PrimaryBid $190M調達
英・ロンドン発のPrimaryBidは、一般の個人投資家が上場前後の企業の株を手数料ゼロで購入できるアプリと、企業側がその売買データに基づくインサイトに基づくロイヤリティマネジメントを支援するSaaSを提供するスタートアップ。ロンドン証券取引所(LSE)も株主。過去18カ月で150社のIPO時の売買を支援。本シリーズCはSoftbank Vision Fund 2がリード。今回の調達でSPACや社債の売買にプロダクトを拡大。バリュエーションは非公開。(PrimaryBid動画)
◆B2B向けヘッドレスEC構築SaaS fabric $140M調達
米シアトル発のfabricは、ヘッドレスEC(API経由で柔軟にECサイトの機能拡充できる)SaaSの急成長スタートアップ。創業5年。B2C EC向けではShopifyのようなSaaSがあるが、B2Bのように柔軟なスケールが求められるECには最適ではない。2021年売上は、B2B ECを中心に4.5倍に成長。本シリーズCはSoftbank Vision Fund 2がリード。バリュエーションは$1.5B。(fabric動画)
◆MDR SaaS界のリーダー企業 eSentire $325M調達:MDR(Managed Detection and Response)とは、サイバー攻撃の侵入を防ぐのではなく、ネットワークに既に侵入した脅威に対応するサイバーセキュリティ分野の一種。本ラウンドはGeorgianがリード。バリュエーションは$1B超。
◆EC購入体験を向上させるSaaS Bloomreach $175M調達:Bloomreachは、EC事業者向けにリアルタイムで拡張性のあるパーソナライズ化を支援するSaaS。ARR $117M(YoY +63%)。本ラウンドは、Goldman Sachs Asset Managementがリード。バリュエーションは$2.2B。
◆公共セクター向け防犯支援SaaS Flock Safety $150M調達:Flock Safetyは、米国の地方自治体向けに防犯カメラの画像解析をリアルタイムで行い、犯罪撲滅を支援するSaaS。本シリーズEはTiger Globalがリード。
◆Webアプリ開発高速化支援SaaS Hasura $100M調達:インド発のHasuraは、GraphQLベースのAPIにより、フロントエンド開発者がデータにすぐアクセスすることを支援するSaaS。本シリーズCはGreenoaksがリード。バリュエーションは$1Bでユニコーンの仲間入り。
◆体験型マーケティング効果の可視化SaaS AnyRoad $47M調達:AnyRoadは、ブランド企業向けに店舗での体験型マーケティング(例.Lululemon店舗でのヨガ教室)の効果を可視化するSaaS。共同創業者兼CEO Jonathan Yaffe氏は、前職で東京のインターナショナルスクールの校長。本シリーズBはBlackRockがリード。シリーズAのリード投資家a16zなども参加。
◆モビリティのノーコード・リアルタイム分析SaaS Arcion $13M調達:Arcionは、エンタープライズ企業向けに、自動運転車のようなモビリティで生まれる膨大なデータをリアルタイム分析を支援するSaaS。本シリーズAは、Bessemer Venture Partnersがリード。
今週のIPO/M&A
◆米CloudflareがメールセキュリティSaaS Area 1 Securityを買収
◆英Darktraceがリアルタイムセキュリティ分析SaaS Cybersprintを買収
◆米VendrがSaaS管理ツールを提供するBlissfullyを買収
◆英データコンサルProteusがAI活用型プロマネSaaS Sharktowerを買収
マーケットトレンド
◆テクノロジー業界はロシアのウクライナ侵攻にどう対応するのか?
一昨日2/24にロシアがウクライナへの侵攻を開始。痛ましいニュースが今も流れいます。この侵攻は、ウクライナ政府を標的としたサイバー攻撃から開始し、現在に至っています。ウクライナにはスタートアップや大手テック企業の研究開発拠点が多数存在し、テクノロジー業界にも今回の事件は大きな影響を与えています。これらの企業はウクライナにいる社員の避難や安全確保に、いまも腐心しています。また、この記事では、ウクライナに拠点のあるテクノロジー企業のサービスやその顧客への影響や対応についてもレポートしています。この痛ましい事件が1日も早く収束することを祈ります。
ストラテジー
◆なぜSaaSのアップマーケット戦略が大切なのか?
SMB向けでスタートしたSaaSの多くは、遅かれ早かれ、エンプラシフト(いわゆるアップマーケット)します。SlackはSMBでスタートしましたが現在の売上$1Bの50%はエンプラです。AsanaはSMB向けのセルフサーブでスタートしましたが、今は営業による売上が50%、ACV 5,000万円超の顧客が年率+100%超で伸びています。SMBでスタートしたSaaSはターゲット外のエンプラのリードが取れても、機能が不十分なため避けるケースがあります。この記事でSaaStr Jason Lemkinは、その状況だとしても数社のエンプラ顧客を取ることを考えるべきだと提案しています。多くのSaaSは、SMBに永遠にとどまることはほとんど無いからです。
カスタマーサクセス
◆SaaSの代理店チャネルの重要性とPartner Successのポイント
Global Health社(ARR 約150億円)でCS総責任者をしていたGeorge Arnaoutの実体験に基づく記事。代理店(パートナー)チャネルとしてMSP(Managed Service Providers)をアーリーステージでも検討すべき理由や、この成功に重要なパートナーサクセスの5つのポイント(以下)を解説しています。日本でもシリーズA以降で議論されることが多いトピックなので、参考にしてみても良い内容かと思います。
Partner Successの5つのポイント
1.代理店をカスタマーサクセスチームの延長と考える
2.直営業CSと代理店CSを分離する(但し同じCS組織の下で)
3.顧客に間接的にでも関与を心掛ける
4.代理店向けプログラムで代理店にツールを与える
5.役割と責任分担を明確にする
プロダクト開発
◆なぜプロダクトチームは失敗するのか?
『Lean UX』など多数のプロダクトマネジメント系の書籍を書いているJeff Gothelfによるブログ記事。多数のプロダクト開発の現場を見てきた彼によると、プロダクトチームは「アプリをQ3までにローンチする」といった”仕事”をしているが、会社の戦略的な課題に基づく共通の”目的”を理解していないため、会社の戦略ゴールに貢献する"良い仕事"ができていないと指摘しています。PMの役割やその重要性を理解する上では良い記事です。ざっくりした和訳はこちらのtweetstormをご覧ください。
マネジメント
◆サティア・ナデラCEOによるマイクロソフトのカルチャー改革
ご記憶にある方もいると思いますが、2000年にマイクロソフトは創業者ビル・ゲイツから2代目CEOスティーブ・バルマーに引き継ぎました。賛否両論ありますが、彼がCEO就任後、以下の図で風刺されるように、社内政治が横行し、官僚的でイノベーションが産まれない劣悪なカルチャーに変わりました。結果、株価も低迷。2014年に彼が退任。その後を引き継いでCEOに就任したのが、現在のCEO サティア・ナデラです。この記事では、彼が行ったマイクロソフトのカルチャー改革として行った4つの取組み(共感(Empathy)中心主義、グロースマインドセット、失敗の奨励、イノベーション推進)をまとめています。組織カルチャーの良し悪しが、企業の成長にいかに重要かを理解する上で非常に良い事例だと思います。
※その他記事はこちら。
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