今週のSaaSニュース! Vol.49(5/16週)
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注目!資金調達ニュース
■ Marqeta, Monday.com, WalkMe上場申請
今週Marqeta(S-1), Monday.com(F-1), WalkMe(F-1)のSaaSスタートアップ3社が、IPOに向けて上場目論見書を提出した。直近の年間売上(YoY成長率)で言うと、Marqeta $350M(YoY +100%超)、Monday.com $236M(YoY +85%)、WalkMe $157M(YoY +34%)と、米国の一般的なSaaSスタートアップのIPO基準(売上 $100M, YoY +25%)を3社共に超えています。特にMarqeta、Monday.comの売上と成長率の高さは目を見張るものがあります。
日本のSaaS起業家の方々にとって参考になる点としては、この3社はSaaSの異なる成長モデルを取っている点です。WalkMeは伝統的な「Sales-Led-Growth(SLG)×サブスク課金」に対し、Monday.comは「Product-Led-Growth(PLG)×サブスク課金」、Marqetaは「SLG×利用量課金」と海外で注目されている新しいSaaSの成長モデルを取っている。自社の成長モデルと上場に向けた開示KPIを検討する上で、参考にしてみると良いと思います。各社の開示文書の分析記事(Tear Down)も併せてご覧下さい。
・Marqeta F-1分析記事
・Monday.com F-1分析記事
・WalkMe S-1分析記事
■ コンシューマグッズ向け製品保証SaaS Extend $260M調達@$1.6B
Extendは、ECで購入した製品に対して、「Apple Care」のような製品保証サービスをSaaSで提供するスタートアップ。PaletonやiRobotなどが顧客企業。たった創業2年3か月ながら、2019年の売上成長は40倍、2年目の2020年は5倍と急拡大している。今回は、$1.6Bのバリュエーションで、Softbankがリードして$260Mを調達した。インダストリーSaaSスタートアップとしては、最速ペースでユニコーン入りを果たした。
■ 重工業向けデータ管理SaaS Cognite $150M調達@$1.6B
欧州ノルウェー発のCogniteは、製造業や石油/ガスの資源産業などの重工業向けに産業向けIoTなどのデータ統合・管理・分析を一気通貫で行うことのできるDataOps系のSaaSを提供するスタートアップ。創業4年と新しいスタートアップながら、資源系大手BPや日本の出光興産などのエンタープライズ企業を獲得し、急成長を遂げている。今回、$1.6BのバリュエーションでグロースファンドのTCVをリードに向かえ、既存投資家のAccelなどから総額$150Mを調達した。
■ 投資顧問業向けポートフォリオ管理SaaS Vise $65M調達@$1B
Vise.AIは、アナリストを持たない投資顧問企業向けに、投資ポートフォリオの数値管理やデータ分析を自動化するSaaSを提供するスタートアップ。2019年のTechCrunchスタートアップバトル(動画参照)で、ローンチして以来急成長しており、前回のシリーズBから現在までに、Vise.AI上で取り扱うアセット総額は4倍の$250M越えで、顧客数も2倍以上に増加した。今回のシリーズDでは、Ribbit Capitalの他に既存投資家のSequoia Capitalから$65Mを調達し、ユニコーンの仲間入りを果たした。
2019 TechCrunchスタートアップバトルでのピッチ動画
■ 建設業向けProcore IPO 時価総額1兆円を突破: 今週5/19にProcoreがNASDAQで上場。初値ベースで時価総額$11.3Bと1兆円を突破した。SaaSを主体としたインダストリーSaaS上場企業の"1兆円企業"としては、Shopify、Veeva、LightspeedPOSに次いで4社目。
■ 次世代メールマーケSaaS Klaviyo $320M調達@$9.5B: SaaSカテゴリーとしては昔からあるマーケティング系SaaS分野で、急成長しているスタートアップがEC向けに強いKlaviyoです。世界120ヵ国以上で、Fortune500の大企業からSMBまで、7万社以上で導入されている。今回のシリーズDでは、$9.5BのバリュエーションでSand Capitalなどから$320Mを調達した。
■ 地方自治体向けSaaS CivicPlus $290M調達: コロナ禍で行政のDX化は大きく進んだ分野の1つ。CivicPlusは、4千以上の自治体、2.5億人以上の人々に利用されている地方自治体に強いSaaSスタートアップです。今回Insight Partnersから$290Mを調達した。
■ 非同期動画メッセージSaaS Loom $130M調達: リモートワークの生産性向上で一躍活用が進む、非同期動画メッセージツール。Loomは同分野のリーディング企業。今回シリーズCでは、リード投資家であるAndreessen Horowitzに加え、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalなどの錚々たる投資家陣から$130Mを調達した。
■ 金融機関向けDX SaaS Amount $99M調達@$1B+: フィンテックの隆盛が目覚しい中で、既存の金融機関のDX化も加速化している。Amountは、この金融機関のDX化を短期で実現するSaaSを提供するスタートアップ。まだ創業2年ながら、$1B超のバリュエーションでWest Capから$99Mを調達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。
市場トレンド
■ SaaS企業のProduct-Led-Growth(PLG)シフト
近年、SaaSの成長モデルとして注目されるProduct-Led-Growth(PLG)。一般的には、1)スキルセットの違い、2)開発チームの方向転換、3)短期的な効果創出の難しさから、従来のSLGからPLGへのシフトは極めて難しいとされてきた。しかしながら、本記事は、様々なタイプのSaaS企業(以下)でPLGモデルをうまく取り込むことに成功させている事例とそのエッセンスを紹介しています。PLGシフトを成功させる上で、コミュニティ活用とテックリテラシーの高い顧客セグメントを狙うことの重要性を示唆しています。
PLGシフトに成功した企業例
・エンプラ向けSaaS: OutSystems、ServiceNow
・ミッド向けSaaS: Vidyard、OpenSpace
・SMB向けSaaS: HubSpot、Zenefits
・IT/開発向けSaaS: Okta, StackOverflow
・セキュリティSaaS: Splunk、Axonius
■ 2021年現在の米国企業のサイバーセキュリティへの意識調査
2020年はコロナにより、ECやリモートワークなどの「攻め」のデジタル化が進むトレンドに並行して、「守り」のデジタル化であるサイバーセキュリティも隆盛を極めています。本記事は、米VC Scale Venture Partnersによる、米国エンタープライズ企業300社へのサーベイを元に作成したサイバーセキュリティへの取組状況をまとめたレポートです。2021年の企業のサイバーセキュリティ投資として、下図の通り、GDPRなどのデータプライバシー対応と、サイバーセキュリティの自動化への企業の投資意欲が高まっていることがわかります。日本は企業のDX化が米国に比べ遅れており、サイバーセキュリティ対応は後手になりがちですが、DX化が進むにつれ、今後間違いなく成長が期待できる分野だと思います。
ストラテジー
SaaSスタートアップの一般的な成長パターンでは、意思決定が早く、プロダクトへの要求水準が低いSMBからスタートして、成長に伴いエンタープライズシフト(いわゆるupmarket)することが一般的です。この際に、SMB営業をそのままエンタープライズ営業に転換することは、求められるスキルセットが異なるため、苦労するケースが多いです。本記事では、SaaSスタートアップのSMB営業とエンタープライズ営業の定量/定性的な違いを解説しています。ベンチマークの情報として、参考になると思います。
SaaSスタートアップのPMFから、チャーン防止/既存への売上拡大の機会を探る上で、最も優れた先行指標は、顧客のプロダクトの活用状況を数値化した「プロダクト・エンゲージメント」指標です。本記事は、カスタマー・サクセスSaaSのTotangoによる、「プロダクト・エンゲージメント」を測る基本となる5大KPI(以下)について解説した記事です。リンクをたどっていくと、各KPIの計算方法も示されているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
プロダクト・エンゲージメントの5大KPI
1) ライセンス活用率 : 計算方法
2) アドプション率: 計算方法
3) プロダクト粘着度(DAU/MAU)
4) アカウント活用成長率
5) 外部SaaSとの接続数
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