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今週のSaaSニュース! Vol.39(3/7週)

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注目!資金調達ニュース

医療費ペイメントSaaS Cedar $200M調達@$3.2B

Cedarは、医療機関へ消費者のデジタル決済「Cedar Pay」を提供するヘルスケア特化のCX&決済系SaaSスタートアップ。コロナは医療機関のDXを一気加速させました。このシフトの中で、同社の調査によると、40%超の消費者は「デジタル体験の良さ」で医療機関を選ぶと答えている。実際にCedar導入後、医療費の決済額は平均+30%上昇するという実績を得ています。現在Cedarは、1日30万人超が利用するサービスまで成長し、2020年で事業は4倍に急成長しました。本シリーズDは、$3.2Bのバリュエーションで、Tiger Globalがリード投資家。既存投資家のAndreessen Horowitzなども追加投資。

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交通業界向け 運行スケジュール最適化SaaS Optibus $107M調達

電車などの公共交通機関は、移動が制限されているコロナ禍においても、生活のライフラインです。一方、英・ロンドンなどの主要都市では、売上は80%も減少しており、コストコントロールは死活問題になっています。Optibusは、公共交通機関向けに運転手のリソース管理、運航スケジュールとコスト管理を可能にするSaaSを提供している。現在、イギリス国内の公共交通の25%で活用されている。本シリーズCは、2018年の前回ラウンドのバリュエーションの4倍(推定 $400-500M)で、$107M調達。Bessemser Venture PartnersとInsight Partnersが共同リード投資家。

2分でわかるOptibus(動画)

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契約ライフサイクル管理(CLM) SaaS Icertis $80M調達@$2.8B

インド発のIcertisは、企業の契約書データベース利用や、AIを活用して契約書の履行状況や条項の一貫性チェックを可能にする、リーガルテック分野を代表するSaaSスタートアップ。Apple、Microsoft、Airbusなど240社以上の企業で利用されている。今回のシリーズFは、前回ラウンドの約3倍、$2.8Bのバリュエーションで、B Capital Groupなどから$80Mを調達した。インド発SaaSスタートアップとしては、Freshworks($3.5B)に次ぎ、2番目のバリュエーション。今回の調達資金で、ブロックチェーン、AIによる技術開発と、日本、東南アジア、欧州での展開を予定しています。

1分30秒でわかるIcertis(動画)

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360°評価型採用管理SaaS SeekOut $65M調達

SeekOutは、2016年にマイクロソフト社の経営幹部とエンジニアによって創業されたATS(採用管理)系SaaSスタートアップ。自然言語処理と機械学習を用いて、公開プロフィール、GitHub、論文、特許、リファラルなど、採用候補者の多面的なデータをタレントDBから検索、採用管理を行うことができる。特に特異な技術を持った、市場では見つけにくいエンジニアの採用に強みがある。時価総額グローバルトップ10社の内6社で導入されており、顧客社数は500社に上る。過去2年でARRは10倍以上に成長。本シリーズBは、$500Mのバリュエーションで、Tiger Globalがリード投資家。

3分でわかるSeekOut(動画)

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■ SaaSマーケットプレイス Vendr $60M/Tackle.io $35M調達

Bessemerが先日発表した"State of the Cloud 2021"(後述)でも触れられた、ニューノーマルのSaaS GTM戦略の1つとして注目を集めているのが、「SaaSマーケットプレイス」だ。コロナ禍で企業は、迅速なSaaS調達と共に、膨れ上がるSaaSコストをいかに節約するかは命題になっており、これらを実現することができる。Vendr、Tackle.ioは、このSaaSマーケットプレイスを代表するスタートアップ。2020年にVendrは5倍弱、Tackle.ioはARR 3倍超と大きく成長している。Vendrは今回シリーズAで、Tiger Globalから$80Mの大型調達を実施。一方、Tackle.ioは今回シリーズBで、Andreessen HorowitzとBessemerから$35Mを調達。今後、両社の競争も過熱しそうだ。

Tackle.ioシリーズB調達(動画)

アプリ開発者向けセキュリティSaaS Snyk $300M調達@$4.7B: ソフトウェア開発加速化の潮流の中で、従来のDevOpsから、”DevSecOps”による開発運用プロセスへとシフトしています。Snykは、セキュリティ(脆弱性診断)ツールをオープンソース×SaaS型で提供する、DevSecOps分野の代表的なスタートアップ。GitHubのリポジトリと連携させ、CIフローに定期的な脆弱性診断を組み込むことができます。全世界2,700万人超のエンジニアが利用。本シリーズEは、$4.7Bのバリュエーションで、AccelとTiger Globalをリードに$300Mを調達。

エンプラ向けクラウドRPA SaaS WorkFusion $220M調達: WorkFusionは、2010年創業のエンプラ向けRPAのスタートアップ1社。顧客は、金融、保険、ヘルスケア業界など規制産業が中心。グローバルトップ10の銀行の内、5行に導入されている。顧客の1社であるCater Bank&Trust社ではWorkFusion導入により、年間2.5億円以上の業務コスト削減に成功している。本シリーズFは、Georgianがリード投資家。

エンタメ業界向け 給与決済SaaS Wrapbook $27M調達: TVや映画、CM制作のようなエンターテイメント業界は、プロジェクトベースでの雇用が一般的です。この業界の給与決済(Payroll)は、未だに紙ベース主体。Wrapbookは、これらの書類のやり取りを電子化し、給与処理代行により支払い状況の見える化を実現するSaaSを提供している。今後、雇用保険の提供によりバーティカル・フィンテックの提供を目指している。本シリーズAは、「Fintech Scales Vertical SaaS」の提唱者でも知られる、Andreessen HorowitzのKristina Chen氏がリード投資家。

保険業界向けコミュニケーションSaaS Hi Marley $25M調達: 消費者と保険会社とのコミュニケーションは、電話対応が主流のため、電話待ちなどにより顧客体験が損なわれます。Hi Marleyは、このペインを解決するために、SMSを主体とした顧客-保険会社のコミュニケーションを可能にするツールを提供しています。また、保険会社特化SaaS GuidewireやDuck CreekとAPI連携することで、保険会社の業務改善を支援。2020年は、保険会社の導入社数は4倍の成長。保険業界のVeevaを目指している。本シリーズBはEmergence Capitalから調達。

営業向けデモ作成SaaS Demostack $17.5M調達: ソフトウェア企業のセールス活動において、"顧客デモ"は受注率アップに欠かせない。Demostackは、エンジニアの力を借りることなく、営業やマーケ担当者が高品質のプロダクトデモ作成ができるSaaSを提供している。本シリーズAは、Bessemer Venture Partnersがリード投資家。

市場トレンド

Software 2021: クラウド市場トレンド by Battery Ventures

「T2D3」や「Rule of 40」の提唱者であり、SaaS投資家として著名なNeeraj Agrawal氏を中心にまとめられた、年1回のクラウド市場トレンドレポート。スタートアップからSaaS上場企業、エグジット状況(IPO&M&A)などを徹底した定量分析が特徴。最新のSaaSトレンドについても解説しています。今年のSaaSトレンド予測(まとめ)はこちらをご参照ください。

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State of the Cloud 2021: クラウド市場トレンド by BVP

こちらも、SaaS分野に強い米トップティアVCとして知られるBessemer Venture PartnersのByron Deeter氏を中心にまとめた、最新のクラウド市場トレンドのレポート。このレポートの特長は、ストーリー性が強く、わかりやすい点と毎年新しいSaaSメトリックスを発表している点。今年のSaaSメトリクスは、「成長耐性(=現在の売上成長率/1年前の売上成長率)」。優れたSaaS企業は、70-80%が目安とのことです。

加えて、このレポートでも2021年のトレンド予測(以下)を発表しています。

State of the Cloud 2021(動画)

2021年SaaS 7大トレンド予測
1. MS Officeのアンバンドル化
2. SMB向けSaaSの勃興
3. ダイバーシティ促進系SaaSへの注目
4. データ/MLインフラSaaSの加速
5. 誰もがエンジニア/デザイナー化
6. Fintech+暗号通貨系SaaSが金融を進化
7. バーティカルSaaSの"津波"

コロナ収束後の新しい働き方予測

McKinsey Instituteによる、日米中印+欧州のコロナによる働き方の変化と、コロナ収束後の労働力のシフトに関する152ページにわたる予測レポート。コロナはリモートワーク、EC、自動化を加速させ、コロナ後には最大25%の労働者がスキル、職業の変更を迫られる可能性があると指摘している。日本においても、2030年までに31%の仕事がオートメーションにより代替され(以下)、1,890万人が職業の代替や変更が起こると予測されている。

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成長戦略

AI Insideの衝撃: 売上250%成長を実現した逆セオリー

国内のSaaS上場企業の中で、コロナ禍においても突出した売上成長率を続けるAI Inside社。同社は、国内のSaaS企業で運用されている「The Model」に依存することなく、独自の成長モデルによってこの成長を遂げました。上記のMcKinseyのレポートにあるように、オートメーション分野の国内需要の高さもある一方、SaaSスタートアップにおいても成長戦略を考える上で参考になる貴重な分析記事です。

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ボトムアップ型SaaSの価格設定とプラン作成方法 by a16z

Product-led growth、Usage-based pricing(利用量ベース課金)など、現場からの利用を促進し、"ランド&エクスパンド"を狙うボトムアップ型SaaSは、米上場市場においても高い評価を受けている。この記事は、ボトムアップ型SaaSの価格設定方法やパッケージング(料金プラン設計)についての手順(以下)や重要なポイントに関して、丁寧に解説したAndreessen Horowitzによる記事。プラン設計において「ユーザージャーニーから始める」など、SaaS一般のプライシングを考える上でも非常に参考になります。

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マネジメント

"ほめ上手"がカルチャーを強くする

Battery Venturesのレポートにあるように、「カルチャーの強さ=成長率の高さ=企業価値の高さ」につながります。そのため、SaaS企業において強いカルチャー作りは、経営チームの最重要テーマの1つです。このWhartonの教授らによる論文によると、「ほめ言葉」や「感謝」は学術的にも組織を元気づけ、幸福感を高めることが証明されている。しかし、世間ではこの効果がきちんと理解されていない、ないしは、うまく伝えられるかが不安になり、ほめることや感謝を伝えることを控えてしまっていることを示唆しています。ほめ言葉や感謝には「複利の効果」があり、これが文化となることで、組織全体のパフォーマンスが上がることが期待されます。

ちなみにSalesforce.com社では、プレゼン資料の最初に必ず「Thank you(ありがとう)」スライドを入れることが厳格なルールとして定められており、この効果を狙っていると予想されます。

SaaSセールスの採用&マネジメント完全攻略ガイド

B2B SaaSの成長を中心になってドライブする、営業の採用とマネジメントに頭を悩ませない経営者はこの世にいないと言っても過言ではないくらい、重要なトピックです。こちらは、SaaSセールスの採用~マネジメントに至るまでのブログ記事をカテゴリ別にまとめたOpenview Venture Partnersの記事。

トピック別(以下)に調べられるので、ぜひSaaSスタートアップ経営者の方は、プランニングをする際のご参考にしてはいかがでしょうか?

目次
・採用面談のやり方
・採用
・報酬制度
・オンボーディング
・最初のセールスマネージャーの採用tips
・リモートセールスチームの運用
・セールスの評価とモチベーション管理
・営業メトリクスとベンチマーク
・売上予測

ファイナンス

乱高下するSaaS上場企業のマルチプル評価

米国上場SaaS企業の3/7週までのマルチプルをまとめたレポート。2/19週時点との比較では、高成長SaaSでは36x→31x、中成長SaaS 22x→17xと5x以上の大幅な下げ幅となっています。一方、低成長SaaSは8x→7xと微減にとどまっています。直近では回復傾向ですが、SaaSバブルに対して、市場が調整局面に入ってると見ると、健全な動きとも考えられます。

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バリュエーションへの粗利率の影響とは?

SaaSでは一般に「粗利率 70%以上」が望ましいとされていますが、近年のUsage-based pricing(利用量ベース課金)型やTransaction(取引手数料課金)型などSaaSのマネタイズやビジネスモデルも多様化しており、多くは粗利率が従来のSaaSより低い傾向にあります。こちらのSoftware Equity Groupの記事は、粗利率とEV/Revenueの関係をまとめた記事です。下図の通り、粗利率が高い程、EV/Revenueマルチプルは高い傾向が見て取れます。

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