今週のSaaSニュース! Vol.44(4/11週)
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注目!資金調達ニュース
■ 生命科学の研究開発を加速化するSaaS Benchling $200M調達
遺伝子やDNA構造の解明が進み、バイオテクノロジーの発展は、医療のみならず農業や化学などの様々な産業を進化させてきました。MIT卒の元研究者が2012年に創業したBenchilingは、生命科学分野の研究者が、複雑な研究データの処理などに煩わされることなく、R&D業務に没頭することを支援するSaaSを提供している。現在までに世界1,000以上の研究機関、30万人以上の研究者に利用されている。過去4年でARRは毎年2倍以上の成長を実現し、パンデミック以降、欧州の大手企業でも採用が加速している。本シリーズEは、Sequoia Capitalがリードし、既存投資家のBenchmarkや著書『爆速成長マネジメント』でも知られるElad Gil氏なども参加している。
■ 従業員スキル向上SaaS Degreed $153M調達@$1.4B
Degreedは、企業がオンラインコンテンツをベースに、研修プログラムの作成・受講・修了認定を行い、従業員のスキルアップとスキルの見える化を支援するSaaSを提供している。ブログや無料のe-learningなど、オンラインのスキル向上に役立つコンテンツをチームで共有・評価し、習得すべきコンテンツをキュレーションしたり、新たに研修プログラムに追加できるSNSやメディアのようなUI/UXを提供している。直近では年間売上は、+80%の成長を遂げている。今回のシリーズDは$1.4Bのバリュエーションで、Sapphire VenturesとRiverwood Capitalがリードした。今回の調達に合わせて、Box COO Dan Levin氏をCEOに招聘した。
■ 顧客接点強化チャットボットSaaS Gupshup $100M調達@$1.4B
近年WhatsAppやSMSなどのメッセージアプリは、顧客が企業とのコミュニケーションのチャネルとして重要な位置を占めるようになっている。Twilioのレポートによると、一般消費者の90%は「メッセージアプリでの企業とのコミュニケーションを嗜好」と回答している。Gupshupは、WhatsAppやTwitterなど30以上のアプリに対応し、小売や金融など顧客業界別に会話型チャットボットのテンプレートを提供しているローコード型チャットボットSaaSを提供している。2020年のARR $150Mを超え、今後年率+50%以上の成長を目指している。今回は、$1.4Bのバリュエーションで、Tiger Globalなどから$100Mを調達した。
■ UI/UXテストSaaS UserZoom $100M調達
UserZoomは、企業のデザイナーや開発、マーケター向けにウェブやアプリのUI/UXの変更を顧客にテストし、カスタマーインサイトを得るためのSaaSを提供している。UI/UXへの投資は、ROI 100倍の売上効果があり、顧客のコンバージョン(CVR)を4倍以上改善する効果があるとの調査結果もある、テクノロジー企業の成長には欠かすことができない。本シリーズBでは、Owl Rockから$100Mを調達し、この調達資金で、顧客フィードバック調査やUXの状態を見える化するダッシュボードSaaSを提供するEnjoyHQ社を買収した。
■ AIの「目」を鍛えるAI×SaaS Scale AI$325M調達@$7.3B: 自動運転分野など画像認識技術のAIの調教は、誰もやりたがらない膨大なタグ付けの単純作業の連続である。この画像認識AI開発で必要な、タグ付けを自動化/高速化するAIを提供するScale AIが、$7.3BのバリュエーションでGreenoaks Capital等から$325Mを調達した。24歳の創業者兼CEOでも話題の企業だが、今回、Amazon上級幹部であったJeff Wilke氏がCEOのアドバイザーに就任した。
■ EC向け不正検知SaaS Signifyd $205M調達@$1.34B: コロナを起点として急速に成長するEC産業において、不正アクセスによる被害も拡大している。$1の被害に対するEC事業者の負担するコストは、平均$3.36と大きな収益インパクトをもたらす。Signifydは、EC向けに不正アクセス検知やブロックを行うSaaSを提供しており、今回シリーズEでは、Owl Rock Capitalなどから$205Mを調達した。
■ SMB向けB2B決済SaaS Routable $30M調達: Y-Combinator出身のRoutableは、SMB~中規模企業向けに買掛金/売掛金処理などのB2B決済を自動化するSaaSを提供している。QuickBooksなどの主要な財務会計SaaSとも連携し、シームレスな処理を可能にする。今回のシリーズBは、Y-Combinator 前社長のSam Altomanと、兄弟でLattice CEOのJack Altmanの二人から$30Mを調達した。
■ データ品質管理SaaS Bigeye $17M調達: 機械学習やデータサイエンスの活用は、現代の企業が生き残る上で必要不可欠である。Bigeyeは、データの品質の状態をリアルタイムで可視化するSaaSを提供している。本シリーズAは、Sequoia Capitalなどから$17Mを調達した。
市場トレンド
元Salesforce Ventures 日本代表 浅田氏率いるSaaS型VCファンド One Capitalによる「日本のSaaSトレンド」に関する42ページにわたる力作レポート。SaaS初心者でもわかりやすいSaaSの基本から、成長するSaaSスタートアップの特徴(下図)や今後のトレンド予測まで網羅されています。SaaSスタートアップに関わる方、関心のある方は一度目を通してみることをお勧めします。
米トップVC Anreessen HorowizがFortune 500、Global 2000や米国SaaS トップ50社のテクノロジーリーダーへおこなった、「企業内でのテクノロジースタック」に関するアンケート結果をまとめた記事。記事では、以下の5つのメガトレンドを示唆している。
大企業のテクノロジー活用トレンド
1) クラウドコンピューティングが世界で標準化している
2) Kubernetes普及など、全てが分散化している
3) データは新しいソフトウェアになっている
4) AI/MLは民主化されつつある
5) リモートワークはまだ当分続く
成長戦略
言わずと知れた世界トップVCの1つSequoia Capitalによる、「スタートアップの営業チーム作り」に関するtips集。営業チーム作りは、アートではなく、再現性のあるサイエンスであり、そのヒントを記事では解説してます。
Sequoiaの営業チーム作りへのアドバイス
・プロダクトローンチ前に営業担当は雇わない
・ローンチ後に最近昇進した営業マネージャーを雇う
・顧客社数が10-20社にいくまでVP of Salesは採用しない
・営業担当役員は、1,000人の営業リーダーより40人の営業リーダー
・リード創出への投資は早期に行う
・VP of MarketingはVP of Sales採用後に行う
・売上1-2億円を超えたら、営業管理担当を雇う
・経歴に騙されるな。2年未満のジョブホッパーに気をつけろ
・エージェント向けに10枚の採用ピッチ資料を用意しよう
米SaaS上場企業Eventbrite CPOによる、SaaSのPMFを確認する方法に関する、非常に示唆深い記事。氏曰く、PMFは「持続的な成長を可能にする顧客満足度を達成できている状態」と定義しており、お客様の満足度が時間経過と共に向上し続けている状態を指します。Amazonのジェフ・ベゾスも語る通り、お客様が本当に満足していることはほとんどなく、常に不満を抱えるのが現実であるため、お客様の満足度が安定して向上し続けられる状態がPMFにおいて重要としています。そのため、NPSなどで顧客満足度を測るより、下図のような「時系列での定着率(リテンション)のコホート分析」を確認することが最も重要であると示唆しています。シード/アーリーステージの経営陣やPdM/PMMの方々には非常に参考になると思います。
マネジメント
Bain Capital Venturesパートナー Sarah Smith氏への、「現代のユニコーン企業のチーム作り」に関するインタビュー記事。記事では、創業期から一貫したカルチャー作りの重要性や、「カルチャーを深く理解した優秀なマネージャー」がいるかが組織や事業を成長する上で非常に重要であることを強調しています。現在のリモート主体の企業運営において、カルチャー作りの難易度があがっているため、週に1度の全社ミーティングや創業者や経営陣へのQ&Aのセッションは非常に有効であると提案しています。また、D&I(多様性と包括的なカルチャー)を強く意識する、優秀な人材を惹きつけ、心理的安全性を担保する上でも重要であると、しています。
これまで100名以上のスタートアップの幹部採用に関わってきた、Openview Venture ParntersのSteve Melia氏による、「スタートアップCEOに向けた幹部人材採用」に関するアドバイス集。記事では、以下の7つのポイントについて解説しています。
1) CxO経験者のみならず、CxOの右腕経験者も対象にする
2) カルチャーフィット重視やCEOの好みのキャラクター重視は危険
3) プライドを捨て、CEO自ら直接候補者を口説く
4) 候補者と共通の知人からリファレンスを取る
5) カルチャーフィット評価は、カジュアルな場(会食など)やリファレンスチェックを採用プロセス初期に行う
6) 幹部人材の多様性を重視して、多様な人材採用のための投資をする
7) SNSやブログ発信、イベント登壇などを積極的に行い、優秀な人材を惹きつけて、インバンドで来る取組みを行う
ファイナンス
Plaid社Financeチームの皆様による、お馴染みの連載「プレイドIPOの軌跡」の10回目。今回はSaaSスタートアップの投資家コミュニケーションに重要な、SaaS KPIと開示に対する考え方が丁寧に解説された記事。SaaSのKPIの計測と安定/改善するためのPDCAサイクルは、一朝一夕ではできません。従って、PMF後のアーリーステージ以降では、上場に向けたIR観点からも早期にどういうKPIを設定しておくべきかを考えることはとても重要です。
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