今週のSaaSニュース! Vol.73(10/31週)
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今週の資金調達ハイライト
◆クリエーター向けビジネス管理SaaS HoneyBook $250M調達
HoneyBookは、ウェブデザイナー、写真家などクリエーター向けのERPとも言えるビジネス全般を管理できるall-in-one型SaaS。顧客管理、オンライン契約、決済、財務会計まで一気通貫で提供している。課金は月額利用料 $39+決済利用料 3%。売上は昨年から2倍以上に成長。HoneyBook上で決済された取引総額は$1.9Bを突破した。今回のシリーズEは、Tiger Globalがリードした。(HoneyBookユーザー解説動画)
◆アルバイト特化シフト管理/チャットSaaS When I Work $200M調達
When I Workは、パート/アルバイト向けにシフト管理や研修、チャットと言った雇用者とのやり取りをall-in-oneで提供するSaaS。米国で20万社、1,000万人以上が利用している。1週間のログイン率は85%と高いエンゲージメントが特徴。売上成長は+35%超で、すでに黒字化している。今回のラウンドは、Bain Capitalが単独で出資を行った。(When I Work動画)
◆中国発 all-in-oneタレントマネジメントSaaS Moka $100M調達
創業6年の中国発Mokaは、新規採用者から採用後まで一気通貫でATS/タレントマネジメントを支援するSaaSを提供するスタートアップ。TencentやXiaomiなど大手企業を中心に1,500社以上が有料利用している。売上継続率(NDR)は110%超。今回のシリーズCは、Tiger Globalがリード投資家。
◆OLAPデータベース管理SaaS ClickHouse $250M調達:ClickHouseはOnline Analytical Processing(OLAP)というオープンソース型のDB管理システムを提供。本シリーズBは、バリュエーションは$2Bで、CoatueとAltimeterが共同リード。
◆日本発CDP SaaSの雄 Treasure Data $234M調達:Treasure Dataは、Customer Data Platform(CDP)でグローバルで活躍するSaaS。今回はソフトバンク本体がリードして、資金調達を実施。
◆法律事務所向け訴訟案件管理SaaS Everlaw $202M調達:Everlawは、米国の大手法律事務所を中心に、訴訟案件の管理に利用されているLegaltech SaaS。今回のシリーズDは、TPG GrowthやAndreessen Horowitzなどから資金調達。バリュエーションは$2B越え。
◆医療事務特化自動化SaaS Notable $100M調達:Notableは、医療事務の現場で繰り返し行われる業務を自動化するML×SaaS。本シリーズBは、ICONIQ Growthなどから資金調達を実行。
◆バーチャルオフィスSaaS Gather $50M調達:Gatherは、企業向けにバーチャルオフィスによるB2B版メタバーススタートアップ。本シリーズBは、Sequoia CapitalとIndex Venturesの共同リード案件。
今週の主なIPO/M&A
◆クラウドインフラ管理SaaS HashiCorp S-1申請
◆クラウドデータ統合・管理SaaS Informatica NYSE上場
◆クラウドデータバックアップSaaS Backblaze NASDAQ上場
マーケットトレンド
◆2021年クラウド市場トレンドレポート by Battery Ventures
毎年恒例の米Battery Venturesの世界のクラウド市場の現状と将来予測に関するレポート。IaaS、インフラ系やDev系SaaSなどクラウド関連技術やProduct Led Growthのような戦略動向を定量・定性で丁寧に分析しています。今年は特にWithコロナ/ポストコロナのクラウド市場への影響を読み取る上では、参考になります。上図は、世界のIT支出に占めるクラウド支出は、現状まだ10%前後しかなく、「クラウド化はまだほんの始まり」であるを示しています。SaaS/クラウド関連企業はすでにマーケットで注目されていますが、まだこれからが本当の挑戦=成長のポテンシャルが高いことが理解できます。(Full reportはこちら)
◆2021年SaaS企業KPIサーベイレポート by KBCM
こちらも年1回のKBCMによる、SaaSスタートアップのKPIに関するグローバルサーベイ結果のレポート。ARR成長率、売上総利益、売上に占める営業&マーケ比率、FCFマージン、売上継続率(NDR/NRR)、ユニットエコノミクス(LTV/CAC)など。コロナ禍の2020年における、SaaSの主要KPIの状況を理解することができます。(Full reportはこちら)
◆ 2021年 SaaSの利用量課金(Usage-based pricing)レポート
コロナ禍の2020-2021年のSaaS業界のメガトレンドの1つである利用量課金の最新状況に関するレポート。2021年はSaaSスタートアップの利用量課金モデルへのシフトが大きく起こった年(34%→45%)であることが読み取れます(上図)。その他、利用量課金モデルの適用方法やこれによる売上成長率、NDR、R&D費用の割合への影響も数値で理解することができます。一般的なSaaSに比べ、利用量課金モデルは、S&M%<R&D%で開発投資が重要になることも注目すべきポイントです。
ストラテジー
◆クリエーターエコノミーを促進するSaaSの6つの戦略ポイント
最近では「クリエーターエコノミー(個人のクリエーターが起業することで新たに生まれた経済圏)」という言葉を耳にされた方も多いと思います。こちらのBessemer Venture Partnersのレポートは、そこに至る米国のマクロトレンドの変化と、クリエーターエコノミーを支えるSaaSスタートアップの戦略ポイント(以下)を解説しています。上記に示すように、1)領域特化型プラットフォーム(例 Shopify)、2)マネタイズ&エンゲージメント(例 Patreon)、3)バックオフィス業務自動化(例. Gusto)の大きく3カテゴリーがあることなど、日本でも今後B2Cでの拡大と共に広がってくる期待されます。
クリエーターエコノミー向けSaaSの6つの戦略ポイント
1) チャーンを気にせず、エクスパンジョンに集中する
2) 顧客と一緒に成長する
3) 副業からスタートさせ、儲かる本業にシフトさせる
4) 顧客のコンバージョン・ファネルを細かく観察する
5) 大手プラットフォーマーに対抗する武器を用意する
6) Founder-Market Fitを重視する
プロダクト開発
プロダクト戦略は、テクノロジー企業の中長期でのMoat/競合優位性、事業の持続的な成長性を確保する上で非常に重要です。この記事では、プロダクト戦略を作るための3つのステップ(以下)を解説しています。
プロダクト戦略フレームワーク
1) Product Vision(Positioning)と成功の要件の設定
2) 全社の関係者とのHow(実行プラン)の擦り合せ
3) 市場環境に併せた定期的な戦略レビュー
ここで最も重要なステップが、1)にあるProduct Vision(Positioning)を結晶化した文章に落とすことです。この構成要素(A~G)は以下でまとめられます。
Product Visionテンプレート
(A 顧客ニーズ)というニーズを持つ(B 顧客セグメント)のために、(C 製品名)は、(D 主な顧客への価値)を提供する(E 製品カテゴリー)です。(F 競合の代替製品)と異なり、(C 製品名)は、(G ユニークな差別化要因)を持つ。
マネジメント
日本のスタートアップでも大型の資金調達が一般化する中で、テック人材の採用の競争は激しさを増しています。スタートアップの経営会議でも採用トピックの戦略的な重要度は年々増しています。こちらのOpenview Venture Partnersの記事は、過熱するこの人材獲得競争で押さえておくべきポイントを整理しています。
人材獲得競争で勝ち抜くための6つのポイント
1) プロダクト開発部門を優先し、ビジネス部門は後回し
2) 候補者探索の前に詳細な採用プロセスを設計
3) 一般的な採用要件から外し、採用プールを拡大
4) 候補者との最初のコールで、会社を売り込む(逆はダメ)
5) CEOが候補者とパーソナルな関係を構築/フォロー
6) 時は金なり。高給も戦略的に提示
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