龍神NIPPONに捧ぐ四首 #推し短歌
全日本男子バレーボールチームーー愛称「龍神NIPPON」。
16年ぶりとなる、自力でのオリンピック出場を決めました。
おめでとうございます!
以下は、龍神NIPPONに捧ぐ「推し短歌」四首です。
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10月7日。スロベニアをストレートで下し、全日本男子バレーボールチームは見事パリ五輪の切符を獲得した。
国立代々木競技場をどよもす歓声と涙の洪水の中で、代表選手たちが掲げる「背番号3」のユニフォームが印象的だった。
藤井直伸選手――日本代表の司令塔だった。速攻を多用する攻撃スタイルを組み立て、「日本のバレーボールを変えた」とまで評された名セッター。
今年3月。闘病の末、31歳の若さで逝去。
誰よりもパリのコートに立ちたかった男のユニフォーム。その「背番号3」が、歓喜の渦の中で静かに目に沁みた……。
バレーボールの攻撃シーンで、わたしの推しは「バックアタック」。
センターラインの3メートル後ろには、アタックラインがある。後衛の選手は、そのアタックラインの内側に踏み込んでジャンプすることはできない。
そう。バックアタックの時は、アタックラインを踏み越えないのだ。
だから、バックアタックを打つ選手は助走をつけ、アタックラインの後ろから高く前に飛ぶ。
わたしが特に好きなのは、バックのセンターから速いテンポで後衛の選手が打ち込むバックアタックーー通称「パイプ」。
この攻撃が決まった時の美しさと言ったらない。
相手コートからは、おとりで飛んだ前衛の選手が落下する背後から、後衛の選手がまっすぐ飛び込んでくるように見える。「パイプ」とは言い得て妙。
後衛から相手コートまで一本通った「パイプ」。その胸のすくような鮮やかなプレーの後ろに、十六年分の長い助走路が見えた気がした……。
2012年から連載が始まった古舘春一さんのマンガ『ハイキュー‼』、またそれを原作としたアニメも大ヒットし、世界的に人気を博した。
でも――
「日本のバレーボールが強いのは、マンガやアニメの世界だけ」
そんな意地悪な囁きもあった。
日本バレーボールは、低迷期が長かったのだ。
『ハイキュー‼』の連載開始から10年以上の年月が流れた現在――2023年。
今や世界トップクラスの選手である石川祐希選手を筆頭に、龍神NIPPON、とにかく強い。
しかも強さだけではなく、まるでマンガやアニメのお株を奪うような「見せる」プレーを披露してくれる。今回の五輪予選でも、高橋藍選手のフェイクセット、背面打ちなど、数々の名プレーが飛び出し、SNSで大いにバズった。
とりわけ背面打ちは、『ハイキュー‼』の木兎光太郎がみせるスーパープレーとして有名。高橋藍選手のあのプレーは、まるで『ハイキュー‼』の実写版を見るかのようだった。
全日本男子バレーボールチーム、今や堂々の世界ランキング4位。
NIPPONはマンガやアニメだけとは、もう言わせない。
「代表チーム屈指の人見知り」とも言われる宮浦健人選手。
寡黙でシャイな選手だが、そのポテンシャルは海外でも高く評価されている。
五輪予選では、同じくオポジットのポジションの西田有志選手が絶好調だったため控えに回ったが、途中交代の短い出場機会の中で値千金のプレーを見せた。
そして、10月8日の最終アメリカ戦。ようやく先発出場を果たした宮浦選手が、両チーム最多得点数となる27点を叩き込み、その実力を遺憾なく発揮。
結果はフルセットの激闘の末の惜敗だったが、世界ランキング2位のアメリカをあと一歩のところまで追いつめ、日本のオポジットは西田・宮浦の二枚看板であることを、はっきりと世界に向けて示した。
今の日本代表選手たちは皆好きだけど、わたしは宮浦選手がイチ推し!
宮浦健人選手――背番号4。
※見出し画像は、「はるよ」さんの素敵な作品を使用させていただきました。