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欲しいものを教えてくれるのは小さな自分
欲しいものが欲しいと言えなかった。
そんな幼少期だった。なにかすれば母親に怒鳴られる生活をしていたから、わたしが望むものは何も手に入らないのだと子供ながらに諦めていたのだと思う。諦めて、見ないふりをすれば、もともと欲しいものがなかったことになる。そんなことをずっとずっと繰り返してきて、わたしは自分が何を欲しいのかわからなくなっていた。
もちろん、今日食べたいもの、着たい洋服、誰と会い、何をするか、全部自分の意思で決めていたはずだけど。本当に欲しいものはずっとわかっていなかった気がする。というか、「本当に欲しいもの」が自分の中にあることさえ自覚もしていなかった。
メンタルを崩した時に、自分自身と向き合う時間ができた。変わりたいと思っていた私には好都合で、カウンセリングを受けたり本で勉強したり、できることはたくさんやった気がする。
その中でインナーチャイルドと対話する場面が何度かあった。その子は、いつも寂しそうな顔をして何も話してくれなかった。インナーチャイルドのニーズが満たされていない時、わたしたちは本当の意味で幸せにはなれないのだという。
わたしは必死にその子に問いかける。
「何が必要?なにがしたい?欲しいものはある?」
「…」
その子はずっと泣きそうな顔をしていて、口をへの字にしていた。ああ、わたしはこの子を今まで蔑ろにしていたんだ。可哀想に思えてならなかった。悲しかった。涙が溢れた。
「ごめんね…ごめんね。見ている余裕がなかったの、いっぱいいっぱいだったの。ごめんね。」
最初のうちのインナーチャイルドとの対話は終始こんな感じだった。悲しい、謝る、ごめんね。そればかりだった。でもあるタイミングから少しずつその子が話してくれるようになってきた。やっとわたしに心を許してくれたのだと思った。言っても大丈夫な人だと、認識してくれたのだ。
「寂しかったの…抱きしめて欲しかった」
「信頼して欲しかった」
「あたたかな場所にいたかった」
そんなことを、ポツポツと話してくれるようになった。わたしの中のその子はずっと私に訴えていたようにも思った。私が聞いていなかっただけで。私が見ないふりをしていただけで。
心を開いてくれたその子は少しだけ笑顔も見せる。ゆっくりとだけど、わたしはその子のことを理解しようとしている。その子が欲しいものをできるだけ与えたいと思う。
精神世界の話と思うかもしれないけれど、私にとってこれは大事な対話だったように思う。私が自分の「欲」に気がついていなかったのは、その子がずっと口をつぐんでいたからだと思う。
だからこそ、いま少しずつ自分の「欲」が見え始めている。やりたいこと、やりたくないこと、一緒にいたい人、離れたい人。こういう感覚を大事にするべきだとやっとわかった。そしてそれが本当の意味で「自分を大切にする」ということも。
インナーチャイルドときくと、驚く人がいるかもしれないけれど、あのサッカーの本田選手でさえリトルホンダがいるんだから、みんな心にいるんだと思う。
その子はあなたで、あなたしか大事にできない。あなたが目を逸らしたら、その子はずっと口をつぐんだままだから。
ぜひ聞いてあげて欲しい。
「今何が欲しい?」「今何がしたい?」
答えてくれないのなら、もう少し時間をかけて待ってあげて。少しずつ少しずつ心を開いてくれるはずだから。そして、答えてくれたら精一杯その期待に応えてあげて。
その子が笑顔になることは、あなたを幸せにすることだから。
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