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【stories untold】二重構造のホラーゲームにおびえた話をします。【ネタバレ有】

レトロゲームオマージュなんて珍しくもない。

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このような画面構成で、左のテレビをのぞきこんで、ゲーム内で架空のテキストアドベンチャーをプレイする。
二重構造のホラーゲームstories untoldにおびえた話をします。短編4話構成になっていて、そのうちのひとつめ。

架空のアドベンチャーゲームは、ファミコン以前のカセットテープにゲームが記録されているものだ。リアルタイムでは知らないけど、年上のゲームライターの思い出話で、
「昔のテープ版信長の野望はロード時間が20分あった」と聞いたことがある。
令和の子供に、
「スマホに入ってる無料パズルと似たようなものが定価9800円で、お年玉で死ぬほど悩んで買って、それでも楽しんでいた」
と説明しても理解してもらえないぐらいピンとこない。

さすがに、本当にテープのゲームを再現して、コマンドをひとつひとつ
「SEE」「GO」「PLAY」とか、全部キーボードで打ち込んでいく方式になるので、そこは簡略化されて、今風?に
「見る」→「周囲」「行く」→「ドア」と選ぶだけで進んでいく。
文章も漢字が使われていて、そこは割り切っている。

ゲームの内容はというと、久しぶりに返ってきた家が無人になっていて、真っ暗な家を探索する話のようだ。
「行く」「ドア」
「使う」「カギ」

家に入って、手探りで電気のスイッチがあるのがわかる。
「使う」「スイッチ」

昔生活していた思い出の品を見つけたり、妹の部屋にはカギがかかっていて入れないとか、子供時代に遊んでいたものが見つかったりするうちに、重要な内容のメモの内容がいつのまにか変わっていたり、壁や机に不気味な物体が置いてあったり、そんな家を探索する。
音楽もない、たまにピー、キュルキュル、電子音が鳴る。簡素なテキストで表現されるゲーム内の世界であそぶ。

「行く」「階段」

二階があって、部屋は閉まっているようだ。

「見る」「周囲」

家族の写真が飾ってあるようだ。

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ここやん。

左にある画面をのぞき込んで、荒廃した家を探索しているのに、どうやらその家って、ここやん。

何が気持ち悪いって、自分はパソコン内のゲームの主人公として、家の玄関から入ってきて、奥の部屋に向かおうとしているのに、それと同時に、その家の奥にいるのも自分だ。
「自分」がコマンドを選択するたびに「自分」に迫ってくる。自分はどっちなのか。こういう意味のわからないものがいちばん怖い。

古いゲーム内の家は明らかにここだ。探索している「自分」は、だんだん奥の部屋に近づいている。
ドアを開けたら、自分と自分が出会っちゃうの? そもそもなんでレトロゲームに現実っぽい世界が同期してるの?もしかして現実もゲームの中なの?
ゲームでしかできない、不安定にさせるホラー演出を鮮やかに実現した。


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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。